明豊エンタープライズ<8927>は具体的な中長期の経営計画を策定していないが、重点施策として物件供給の強化、販売チャネルの拡大、人財採用と育成を掲げ、業容拡大と将来のさらなる成長のための投資を推進している。
1. 物件供給の強化
今後の業容拡大に向けて、基本的には、現在の主力地域・地区である都内城南及び城西地区を中心とした物件供給に集中する考えだ。
同社が都内城南・城西地区等の好立地条件の用地にこだわる理由は、元々住宅地として人気のエリアであることもあり、分譲後の高い稼働率が見込めるためである。同社のビジネスモデルは、本社で物件開発と分譲を行い、グループ会社である明豊エンジニアリング及び協栄組が建築を受注し、分譲後はグループ会社である明豊プロパティーズ及びハウスセゾンエンタープライズが物件管理を行うという垂直統合型のモデルである。分譲後も物件賃貸のビジネスで安定した収益を確保するため、開発段階から収益物件としての品質確保を行うという考えに基づいている。実際、同社の管理する賃貸物件の稼働率は97.0%(2023年7月期)と非常に高いレベルを維持しているほか、物件の賃貸にあたっては常に最適な賃料設定を行うことで他の物件に対する優位性を保ちながら安定した収益を確保できている。
2. 販売チャネルの拡大
販売チャネルの拡大に関しては、2点の施策を実施している。1点目はアジア圏の不動産投資家との取引拡大である。
2016年に台湾の亜州大志国際顧問有限公司との間で業務提携契約を締結し、台湾の富裕層へのインバウンド販売を開始した。以降台湾における日系の仲介業者ともタイアップしながら現地での販売強化に注力してきた。2023年11月には同じく台湾で海外不動産投資セミナーを開催し好評を博している。
2点目は富裕層と接点のある業者の開拓である。具体的には資産アドバイザー(IFA)、税理士、弁護士、司法書士、アート事業者等が挙げられ、これらの業者の開拓を積極的に行うことで富裕層との接点を拡大し、物件販売機会の増加を図る考えである。
2024年7月期の目標として、海外投資家への物件販売目標9棟を掲げている。
3. 人財採用と育成
2023年度における採用実績は、グループ全体で44名(新卒・中途合算)となった。2024年度も44名(うち新卒10名)の目標を掲げている。
人財育成方針は「早期育成」であり、新卒社員は入社後4ヶ月の間に不動産に関する基礎研修を受講して不動産業の基礎を学ぶ。その後先輩社員とともに営業活動を行いながら、事業用地の仕入れからプロジェクト化の検討を経て実際の開発や分譲のノウハウを身に付けていく。「詰め込み」的な研修とはなるが、デベロッパーとしてのイロハを早期に学ぶことができ、プロジェクトが成立して販売に成功したときのインセンティブが大きくなるため、結果的には育成の回転がうまく回っていると言えそうだ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)