レビュー
本書のタイトルにもある「無形資産」とは、アイデアや知識、社会関係などを指し、現在のビジネスの立役者ともいえる存在である。しかし企業の財務諸表のどこを見ても、これらは見つからない。
本書は無形資産について、これまで深く考えてこなかった私たちの虚を突いてくる。著者らの試算によると、米国では1990年代半ばに、無形資産に対する投資(無形投資)が有形資産に対する投資(有形投資)を上回ったらしい。しかも本書によると、興味深いことに、無形投資は有形投資にはない振る舞いをすることで、経済にさまざまな影響を与えているという。GAFAのような独占企業の出現もその一例だ。
さらにこうした無形資産の持つ特徴から、長期停滞や経済格差といった社会課題の説明も試みている。
本書はそのほか、無形投資にシフトした社会における競争や経営から、投資のあり方や公共政策まで幅広く、そして中立的に考察している。経営者や政策立案者にとっては必読の書といえる。
本書の要点
・先進国の経済は、有形投資から無形投資へシフトしている。無形投資には4つの経済的性質があり、それが経済に不確実性、オプション性、紛争性をもたらしている。
・企業間の格差が広がるなか、無形資産を扱う経営者には強いリーダーシップが求められる。
・投資家は、現行の財務諸表をはるかに越えた情報を見つけなければならない。
・政策立案者は知的財産規制を明確化し、教育、公的科学支援、都市計画といった知識インフラに対する支援を強めなければならない。
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