レビュー

読めば読むほど、目から鱗が落ちる本だ。
本書が刊行されたのは、新型コロナウイルスが流行する前の2018年である。

だが新型コロナウイルスのようなウイルスの出現をこの時点で警告しており、ある種の預言書のようにも読める。
本書を読んでいると、新型コロナウイルスが流行したのは、なかば必然であったように思えてくる。ある感染症が登場し、収束したと思いきや、また新たな感染症が出現して人類を襲う。そうやって人類と感染症は戦い続けてきたのだ。新型コロナウイルスが収束した後も、別の感染症が出現する可能性はきわめて高い。
感染症の爆発的な流行は、感染症それ自体の性質に加え、人間社会のあり方も密接に関わっている。たとえば本書だと、感染症の発生地のひとつとして中国が挙げられている。過密な都市、慢性的な大気や水の汚染による呼吸器の損傷や免疫力の低下、膨大な未知のウイルスを有している野生生物を食べる文化。感染症が発生しやすい下地があり、感染症がいつ発生してもおかしくない状態だという。そしてまさしく、著者の懸念は的中するのであった。
今後も人類と感染症との戦いは続くはずだ。感染症への理解を深めるためにも、かならず読んでおきたい一冊である。

本書の要点

・宿主(しゅくしゅ)と微生物のせめぎ合いは、まるで軍拡競争のようだ。病原体から身を守るために宿主の生物は防御手段を進化させる。すると病原体もまた、その防御手段を破って感染する方法を進化させる。
・かつては人口密度が低かったため、病気は広がりにくかった。だが農業が始まって定住化し、集落が発達するにつれて、感染症が流行するようになった。
・感染症は人類に害だけではなく、ときとして利益をもたらす。
・もともと害のないウイルスも、家畜化された動物に感染を繰り返すことで遺伝子変異し、ついには人にも被害をもたらすようになる。



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