レビュー

「無意識」や「メンタル」と冠されたタイトルから、「スピリチュアルなテーマなのではないか」と本書を手に取ることを躊躇する方もいるかもしれない。しかし、この本はしっかりとした実績に裏付けられている。


本書において対談の聞き手を担う前野氏は、ロボット・人工知能研究から転じて「心の哲学」「心の倫理学」についての研究活動を長年行なってきた研究者だ。心の哲学とは、「心とは何か、何のためにあり、どのようなやり方であるものなのか」について考えることである、と前野氏は述べる。「心はどうあるべきか」を考える事は、すなわち人間がいかに生きるべきか、ということに通ずる。その延長線上で、近年は組織論(ティール型組織)も注目されるようになってきた。
対談相手である由佐氏は、2019年に刊行した『ザ・メンタルモデル』にて、痛みに翻弄される自分をいかに超えることができるかを重点的に論じている。痛みを心の無意識の奥底に押し込めようとするのではなく、痛みを感じている自分と社会に適応しようとする自分とをいかに「統合」するかがテーマであった。
今回の対談本ではそこから一歩進んで、統合後の境地に至り、ありのままの自分で生きるためにはどうすればよいのかが探られている。
組織や他者との関係の中で自分の立ち振る舞いにちょっとした「違和感」を抱きはじめた人すべてに、ぜひ本書を手に取ってみていただきたい。

本書の要点

・無意識のうちに、人間の行動は、自動化されたシステムによってコントロールされている。これを「生存適合OS(オペレーションシステム)」と呼ぶ。
・生存適合OSの構造たるメンタルモデルを認識できると、本質的な意味での自分を取り戻すことができる。
・メンタルモデルとは、人々の心の奥底にある「痛み」から作り出された、自覚されない信念のことである。

これらは「価値なしモデル」「愛なしモデル」「ひとりぼっちモデル」「欠陥欠損モデル」の4つの類型に分類することができる。



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