レビュー
成功している企業とそうでない企業の差は、一体何なのだろうか。めまぐるしく変化を続ける時代を生き残る企業に必要なことは何だろうか。
本書の特徴は、精神論的な心得ではなく、しっかりとした基盤を持つ理論に裏打ちされている点にある。それはアリストテレスにまで遡る。哲学、心理学、神経科学、社会科学などの各分野の知見を活用しながら、「ワイズカンパニー」や「ワイズリーダー」とはどのような存在かを具体的に考えている。
理論だけでは机上の空論になってしまいがちだが、本書はホンダやファーストリテイリング、エーザイ、JALなど、誰もが知っている様々な企業の実例も交えながら論を進めるため、わかりやすく、説得力がある。本書で掲げられる「『知識創造』と『知識実践』の隔たりを埋める」という目的に即した構成になっている。
この本は同じ著者陣による世界的名著、『知識創造企業』の発展的な続編という形になっているが、本書から読み始めても十分に理解できる内容だ。
2020年、新型コロナウイルスの流行により世界は激変した。我々はこれからも激動の時代を生き、変化に対応していかなければならない。だからこそ、「持続的なイノベーション」をし続けられる企業、人間になる必要があるだろう。本書はそのための極めてクリアなヒントを提示している。一度腰を据えてじっくりと読んでいただきたい一冊だ。
本書の要点
・ワイズカンパニーは、知識を創造・実践するワイズリーダーに率いられる。知識は「場」を通じた人と人との相互作用の中で生まれる。社員の知恵を育むことで、持続的なイノベーションが可能となる。
・知識の創造は「共同化」、「表出化」、「連結化」、「内面化」の4つのプロセスを繰り返すSECIスパイラルによって行われる。スパイラルが上昇していくにつれ、知識のコミュニティが個人レベルから組織レベル、社会レベルへと広がり、それに伴って知識実践の規模と質が高まっていく。
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