レビュー

「鶴の恩返し」という昔話がある。鶴が人間に姿を変え、自分を救ってくれた男のために身を犠牲にして反物を織り、恩に報いる有名な説話だ。

鶴は男に「機織りの様子を決して覗かないこと」と約束させるが、男はついには覗いてしまう。鶴は自分の姿を見られたことを恥じて飛び去っていく。
ここでもし、鶴が去らない結末があったとしたら、話はどう続いていっただろうか。果たして幸せに添い遂げられただろうか――。
「ハブられる」とは、集団から排除される、仲間外れにされるという意味の言葉である。ハブられる現象は日本に限ったものではない。
しかし、同質性の高い「日本人」の集団においては、自分たちと異なる「異類」を無意識に排除する集団心理が働きやすいと、本書は指摘する。
先の「鶴の恩返し」は、人間ではない=異類である鶴と人間が結ばれる「異類婚姻説話」である。この他にも異類婚姻説話は世界に多く存在するが、日本ではそのほとんどが、最後は異類が排除される(去っていく)結末を迎えるそうだ。この悲劇のパターンは日本人の「心の台本」として刷り込まれ、無意識的に踏襲されていると著者は指摘する。
集団からのいじめや無視をきっかけに、学校や会社に行けなくなる人は多い。最悪の場合、自ら命を絶ってしまう事態も起こり得る。
悲劇的な結末を回避するためには、無意識のメカニズムを理解して、「排除された者は去るべき」という心の台本を書き換えることが大切だ。
ハブられる可能性は誰もが持っている。たとえハブられたとしても、生き残るための術を本書から学び取ってほしい。

本書の要点

・集団から排除される「ハブられる」という現象は、自分の知らないうち、裏で隠れて進行することが多い。
・集団は自分たちと似た者を取り入れ、異なる者を吐き出すという基本傾向を持つ。これは無自覚に繰り返されやすい。


・人生は劇に似ている。劇場には舞台のほか、役を降りてほっと一息つける「楽屋」もある。「人生の台本」の存在を知り、よりよいものに紡ぎ直していくことが大切だ。



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