レビュー

長引く新型コロナウイルスの影響や不安定な世界情勢。いまや、一切、何の不安も抱えていない人などどこにもいないだろう。

しかし、そんな現代でも、不安に押しつぶされそうになっている人と、そうでない人がいる。両者の違いはなんなのだろうか。
精神科医である著者の和田秀樹氏は、それは、不安を受け入れている人と、そうでない人の違いだとしている。たとえば、家から一歩外に出るだけで、交通事故に遭うリスクが発生する。このリスクをゼロにすることは不可能だ。あらゆるリスクを一切なくすことが不可能である以上、私たちはある程度リスクを受け入れて生きなければならない。
和田氏はすべてをむやみに不安がるのではなく、「本当に不安に思うべきことは何か」を見極めることが重要だと主張している。
また、和田氏は、森田療法という精神療法の考え方を引用し、不安を感じるのは「生の欲望」があるからだと説いている。たしかに、不安を感じるのは「失敗したくない」、あるいは、「よりよい結果を残したい」という欲望があるからだろう。「不安」を悪いものだと決めつけて押さえつけようとするのではなく、成長へのモチベーションやエネルギーに変えていこうとする点が斬新だ。
不安に押しつぶされそうになる自分を抑え込み、否定するのではなく、不安を受け入れて、それをエネルギーに変えていくというアプローチは、理屈よりも感情的な問題である「不安」への対処として現実的だ。今まさに不安と戦っている人には、すぐに手に取っていただきたい。
不安を感じることそのものは、悪いことではないのだ。

本書の要点

・他の感情に比べ、「不安」が人生にもたらすダメージは大きい。本当に不安に思うべきことは何かを冷静に見極め、適切な行動を見つけることが重要だ。
・不安は、なくしたいと考えるほど増幅する。不安感情をコントロールするよりも、まずは本来の目標が何かを考える。そして、その目標を達成するための方法を探し、行動するべきだ。


・人が不安を感じるのは、よりよい結果を求める「生の欲望」があるからだ。不安は成長や努力のエネルギーにも変えられる。



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