レビュー

暗号資産といえば、価格が急騰して大きな利益を得たり、逆に大幅な価格下落で大損をしたりといった話題が思い浮かぶ。投機の対象として、ハイリスク・ハイリターンなものというイメージを持っている人も多いだろう。

ネットワーク上で使えるお金という点では、電子マネーと同じ機能であるように思われるかもしれない。しかし、ビットコインをはじめとした暗号資産に用いられているブロックチェーンの技術やその理念は、単に通貨を代替する機能や投機対象としての価値だけではない、社会の構造や制度を刷新するほどの、革新的な可能性を秘めている。
著者が開発したイーサリアムは、暗号資産にとどまらない一つのプラットフォームのようなものだ。政府や企業による中央集権的な管理ではなく各参加者による自律的な管理に基づいている。一方、仕組みとしてインセンティブが組み込まれることで、純粋な善意だけではない形で信頼関係が構築されていく。完全に規範的な仕組みでは、全ての人がその規範を受け入れるのは難しいが、完全に利己的な仕組みでは、どこかで破綻が生じてしまう。人間が、利己的に行動しつつも、他者と協調し、よい関係を築いていくという性質を、仕組みとして上手く反映し、形にしたものが、現在、そしてこれからの暗号資産のあり方なのだ。
本書が提示する新しい世界観を受け入れていくことで、これまでの自分が持っていた、さまざまな制度や社会のあり方に関する既成概念が書き換えられていく。そんな感覚を得られることだろう。

本書の要点

・非中央集権的で分散型自律組織の仕組みのブロックチェーンに基づくビットコインやイーサリアムは、公益を生み出すインセンティブを実現している。
・イーサリアムは、どんなアプリケーションでも開発できる内部言語でプログラミングされており、通貨以外の機能でも実現できる。
・分散型自律組織は超合理的な協力を推進させ、プルーフ・オブ・ステークは、正当性を生み出す。

ブロックチェーンは実際のガバナンスにおいて、新しい可能性をもたらすだろう。



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