レビュー

今の日本で漫画を知らない人はいないだろう。戦後から脈々と蓄積されてきた漫画は、今や押しも押されぬ日本の文化となった。

この漫画の優れた点を分析し、それにビジネスにも応用されているインテグラル理論などを融合させたのが本書である。
本書はキャラアート株式会社という企業の代表取締役会長が筆をとる。この人物は、教科書や参考書にほとんど頼らず、漫画を駆使して東京大学理科Ⅰ類に合格したという筋金入りの漫画好きだ。こうした漫画への情熱を組織論に昇華させ、今なお躍進を続けている。
漫画は地位の高いメディアとしては認められてこなかったが、先人たちが研鑽に研鑽を重ねたおかげで、日本の出版業界を席巻する一大メディアへと成長した。その技術と情報量の多さは目をみはるレベルだ。
漫画は情報媒体としてどのように優れているのか……著者はここに着目する。いわばミクロ的な分析と言えよう。だが、著者は同時にマクロ的な視野も持ち合わせている。たとえばインテグラル理論を漫画に応用したことは、社会の大きなうねりを漫画の流行から捉えることを可能とした。なぜこの時代にこの漫画が支持されたのか。なぜ今、鬼滅の刃が世に親しまれているのか。
著者はそうした問いに明確な回答を用意する。
我々は不透明感のある社会のうねりを模索しながら人生を渡る。そんな中、漫画という優れたメディアを取り入れた本書の思考法は、眼差しに透明感をもたらす光になるだろう。

本書の要点

・今でこそ輝かしい経歴を持つ著者ではあるが、そこまでは苦難の連続だった。そこで出会ったのが『寄生獣』だ。この出会いは後の人生を大きく左右する。


・漫画はその優れた表現技法で、さまざまなことを可能とする。情報密度の高さは他のメディアと比較しても非常に高い。漫画は学びに最適である。
・インテグラル理論によって、ある時代になぜその漫画が流行ったかが説明できる。そしてその主人公たちを分析することで、多様な個人の意識についてより深く知ることが可能となる。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。

既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。