レビュー

「課長の椅子」と聞いたとき、その椅子は輝いているだろうか。
1980年代までとそれ以降で「課長」の役割は大きく変化したと本書は述べる。

80年代までは「課長の椅子」は光り輝くものだった。必死に勉強して昇進試験に臨み、受かれば社内でも家庭でも尊敬を受ける。「課長」はそういうポジションだった。ところが、90年代頃からその様相は一変する。成果主義が導入され始め、昇進は単純なものではなくなった。先を見通すことが難しく、どんな企業であっても「安泰」とは言えない現在、「課長の椅子」は輝きを失っている。
もはや「課長」のような中間管理職、マネジャーは敬遠されがちなポジションですらあるという。本書はそんな悩めるマネジャーたちに向けた一冊だ。
本書ではマネジャーの教育者としての役割に注目し、大人が職場で学び続けるためにはどうすればいいかを論じる。人材育成は必ずしも一方向的な情報伝達ではない。実は教える側の立場であるマネジャーも成長のチャンスに満ちているのだと著者らは主張する。
本書は50代と30代という世代と、経営学と教育学という専門の異なる2人の著者の共著である。
そのため、読み手の世代によって共感できるポイントが異なるかもしれない。本書の主張する「対話」による学び合いとは、まさに、異なる世代や専門の人との交流によって生じる。本書を読むと、2人の著者が互いの論によって新たな気づきを得て学んでいる様子がわかり、「教える側が学び続ける」ことを体現している。刺激的な読書体験となるだろう。

本書の要点

・現在の組織におけるマネジャーは、業績を上げつつ人が育つ環境を整備することも期待されており、その仕事は限りなく広がっている。
・マネジャーには部下への教育者という役割が織り込まれているが、それは先生のように何かを教えることではない。

プレイヤーとしてよいモデルになることで部下の育成に貢献できる。また、部下に教えることを通じてマネジャー自身も学びが得られる。
・職場での学び合いに必要なのは対話である。他者との対話を通じて新たな視点を得る協調学習が成立する。マネジャーの役割は、部下たちが互いに学び合う対話ができる環境をデザインし、自らも学び続けることだ。



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