レビュー

暴走したAIが人類に牙を剥き、金属骨格のアンドロイドが人間を駆逐する。少し前まで、一般に理解されているAIのリスクとはそうしたサイエンスフィクション風味なものが多かった。

だがAIが日常社会に浸透した現在、少なくとも今のところは筋骨隆々のアンドロイドが人に脅威を与える未来にはなっていない。AIリスクはもっと複雑で多様なものとして我々の前に現れた。本物そっくりの画像や生成文章の真偽、デマの拡散や著作権の問題。そうしたフィクションとは程遠く生々しいものが、我々の知るAIリスクだ。
それまでの技術革新がそうだったように、AIは激しい賛否を巻き起こした。時にそれは感情論にエスカレートし、まったく実態とかけ離れた持論を見かけることもある。

AIリスクとは何か。AIに対し、国や専門家はどのような取り組みをしてきたのか。こうした問いかけに、ハッキリと答えられる人は意外と少ないのではないのだろうか。AIリスクは議論の途上にあるし、政府も様々な団体と利害関係を調整してAIの発展を促進しようと試みている。ここで一個人が感情的に利害を嘆いても、その声が制度に反映される望みは薄いだろう。
本書の素晴らしい部分は、AIのルール作りをするにあたって、必要な情報をわかりやすくかつ詳細に整理しているところだ。
一体AIの何が問題で、各国ではどのように議論をされてきたのかを理解できるようになっている。AIは技術的にはかつてないほどのインパクトを孕んでいる。だからこそ本書を読んで、一度情報を整理しておきたい。

本書の要点

・AIはかつてないほどのスピードで社会に実装される。しかし、AIはその複雑性ゆえに、責任の所在がわかりづらい上に、そう判断した理由を説明することも難しい。
・AIガバナンスの目的は、AIのリスクを社会が許容できるギリギリまで抑制しつつ、その恩恵を可能な限り受容することにある。


・AIシステムのバリューチェーン上にいる多数の主体それぞれがアカウンタビリティを尽くさなくてはならない。



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