今季のプレミアリーグでは、新戦力がいきなりインパクトを残している。
ニューカッスルに加入したFWカラム・ウィルソンがゴール量産体制に入れば、アストンビラのFWオリー・ワトキンズはリバプール相手にハットトリックを達成。
そんな中で、昇格組のウェストブロミッチにも印象的な選手がいる。ウェストブロムッチの残留のカギを握るであろう、チャンスメーカーのMFマテウス・ペレイラ(24歳)だ。彼の場合は昨季にローン加入したので厳密には新戦力ではないが、プレミアリーグ初挑戦という意味では新人だ。
ブラジル生まれ、スポルティング育ち
ここまでプレミアリーグでは全4試合に出場し、エバートン戦で直接FKを叩き込むなど、既に1ゴール2アシストと存在感を示している。3-3で引き分けた第3節のチェルシー戦でもアシストを記録し、『BBC』の番組内で元イングランド代表のマイカ・リチャーズに絶賛された。
「何という才能だ。昨季から数えて、彼よりアシスト数が多いのはケビン・デ・ブライネだけだ。ウェストブロムの良さが発揮されたのはすべて彼のおかげだ。」
ちなみにそのチェルシー戦では、77分に味方の最終ラインからのクリアボールを、利き足ではない右足のヒールで繊細に触って敵の頭上を抜くパスをFWハル・ロブソン・カヌに繋いだ。「今季のベストパス」との呼び声も高いので是非チェックして欲しい。
そんなマテウス・ペレイラとは一体どんな選手なのか。「5年前は6000万ユーロ(約78億円)の価値があった」と彼のキャリアを振り返るスポーツ情報サイト『The Athletic』の記事を紹介しよう。
ブラジル生まれのペレイラは、若くして家族とともにポルトガルに移住し、クリスティアーノ・ロナウドやフィーゴを輩出したスポルティングの下部組織に加わった。
また、他のインタビューでは「自分のプレースタイルはネイマールに似ている」とも話しており、いずれにせよ常に主役でありたいようだ。そんな志の高い選手に対し、スポルティングは2015年に契約を更新した際に「6000万ユーロ」の違約金を設定したのだ。
だが、まだ10代だったペレイラはその契約更新の際にクラブと揉めていた。一時はモナコへの移籍寸前だったという。そして2018年にも再びクラブと揉めた。ポルトガルのシャベスへのローン移籍で経験を積んでスポルティングに戻ってきたペレイラは、2018-19シーズンの開幕戦でメンバー外となり、腹を立ててSNSで不満を吐露したのだ。その結果、ローン契約でドイツのニュルンベルクへと放出されることになった。
「彼は本番でも凄い」
だが、そこでのプレーがウェストブロミッチの目に留まることに。
ペレイラはすぐに同僚を驚かせたという。昨季までウェストブロミッチに在籍していたクリス・ブラントは「初練習で私の頭上にボールを浮かせて抜いてきたんだ。『二度とやるなよ!』と注意したよ」と冗談を口にする。
「練習中は凄くても、観客が入った実際の試合になるとダメな奴をたくさん見てきた。でも彼は本番の試合でも、練習中のミニゲームと同じように凄いんだ」
ビリッチ監督はこう語る。「ドイツには友人がたくさんいるので、彼のことはニュルンベルク時代から知っていた。ブラジルとポルトガルの足技を持つだけでなく、フィジカル面や負けん気の強さといった個性も兼ね備えている。だから彼が欲しかったのさ」
その期待に応えるようにペレイラは2部リーグで42試合に出場し、8ゴール16アシストの活躍でチームのプレミア昇格に貢献した。ビリッチ監督の見立て通り、2部リーグで最多となる114回のファウルを受けながらも結果を出したのだ。
苛立って相手選手に肘打ちをして出場停止処分を受けたこともあるが、それもご愛嬌。
こうやってたどりついた世界最高峰のプレミアリーグでもいきなりインパクトを残しているマテウス・ペレイラ。ロナウドの足跡をたどるというのなら、彼の物語はまだ序章に過ぎないのだろう。
Photo: Getty Images