8月18日、CBF(ブラジルサッカー連盟)本部で、2つのブラジル代表招集メンバー発表会見が行われた。1つは9月に開幕する2026年ワールドカップ南米予選2試合、ボリビア戦とペルー戦に向けたA代表のメンバー。
その2つの代表のどちらに入るかで注目されたのが、アトレチコ・パラナエンセのFWで、この7月にバルセロナ移籍が決まった18歳のビットー・ホッキだった。最終的に、今回はU-23代表でプレーすることになった。
発表当日朝、U-23代表のリスト入り
フル代表は、先月就任したばかりのフェルナンド・ジニスによる初招集だ。今回のメンバーの平均年齢は、2022年W杯より3歳若くなっているとしながらも、過激な世代交代を進めたり、大幅にメンバーを変更したりするのではなく、これまでの代表の常連をベースにしつつ、現状とジニスの興味に即した形で数人を入れ替えたというのが分かる顔ぶれだ。
一方、U-23代表は、U-20代表からの持ち上がりでラモン・メネーゼス監督が率いる。ラモンとジニスは現役時代、フルミネンセで一緒にプレーした時期もある親友で、今も密に話し合っている。ジニスが今回はビットー・ホッキを招集しないと決めたのは発表当日の朝だったらしいが、それなら是非にとU-23代表のリストに正式に加えた。
ただ、ラモンは「ビットー・ホッキは素晴らしい選手だから、今後フル代表にも招集されるだろう。僕がフル代表の監督代行を務めた時に招集したようにね」とし、U-23代表としての成績の重要性はもちろんだが、年代別代表で経験を積んだ選手をフル代表に送り込むことは、自分たちの目的でもあると語った。
「ネイマールとロナウドを参考にしている」
2021年にクルゼイロでトップチームに昇格した後、昨年アトレチコ・パラナエンセに移籍してブレイクしたビットー・ホッキ。一躍ブラジルの期待の新星として注目されるようになった彼に思い出のゴールを聞くと、こう答えていた。
「昨年のコパ・リベルタドーレスの、リベルター(パラグアイ)戦でのゴール。
プロでの経験が多いことから、年代別代表でのリーダーシップなどの役割について聞くと「そう言ってもらえることには感謝するばかりだけど、個人的にはそういうことは考えていない。チームメイトと一緒にプレーに集中して頑張りたい」と、謙虚に答えていた。

インタビューでは謙虚な受け答えをするホッキ(Photo: Kiyomi Fujiwara)
その自分のプレーについては「僕はパワーとスピードを兼ね備えたFW。フィニッシュも得意。この特徴を生かして、ブラジル代表に貢献できることを願っているよ。ネイマールをお手本にしているんだ。それから、外国人ではクリスティアーノ・ロナウドのプレーをいつも見て、この2人の特徴をミックスさせようとしている」と、笑顔で語っていた。ピッチの外では少し控えめで、いざ試合になると非常に強気。シュートでもアシストでもチャンスを逃さない。そういう印象だ。
U-20代表では、今年1~2月の南米選手権で6ゴールを決め、チームメイトのアンドレイ・サントスと得点王を分け合うなど、優勝の原動力の1人となった。

1月のU-20南米選手権では6ゴールを挙げて得点王に輝いた(Photo: Rafael Ribeiro/CBF)
それだけに、今年5~6月のU-20W杯でも期待されていたが、クラブが派遣を拒否した。そのW杯でブラジルがまさかの準々決勝敗退に終わった時には、チームの勝敗が1人の選手次第ではないことは分かっていながら、国民は「ビットー・ホッキがいれば」と嘆いたものだ。
招集先にはスペインメディアも注目
そうした活躍と注目度の急上昇の中で発表されたのが、バルセロナとの契約だった。当初、契約期間は2024-25シーズンから2030-31シーズンまでとされ、実際に合流するのは2024年7月と報道されていたが、アトレチコ・パラナエンセのコパ・リベルタドーレス敗退により、バルセロナは今季からの合流を希望したとも言われている。最終的にはアトレチコ・パラナエンセが「今年いっぱいはここにいる」と改めて発表し、来年1月のスペイン行きの可能性が大きくなったと思われる。
今回の招集には、そのバルセロナも、スペインメディアも注目していた。スペイン紙『アス』は、バルセロナの幹部が「彼がフル代表に招集されなかったことは理解できない」と語っていると報じた。
さらに『アス』紙は、今回招集されたFWのうちの2人、リシャルリソン(トッテナム)とマテウス・クーニャ(ウォルバーハンプトン)のここ数カ月間のゴール数と比べ、ビットー・ホッキが今季それまでの48試合で24ゴールと8アシストを決めていることも引き合いに出し、ジニスの招集を疑問視した。
ただ、ブラジルメディアは今回の決定にも概ね納得しているような雰囲気がある。U-23代表なら主力として出場し、モロッコという違った土壌を持つ相手との対戦を経験し、試合の中でさらにスキルを磨くこともできるためだ。
スペインメディアでは、バルセロナに行くビットー・ホッキと、やはりスペインのレアル・マドリーと契約を結び、来年7月に合流予定の17歳のエンドリッキ(パルメイラス)を比較するような記事も出ていた。どちらが良いと推すにしても、ブラジルが才能ある若手を輩出し続け、ヨーロッパサッカーから合流を楽しみに待たれているのは、頼もしい限りだ。
Photos: Kiyomi Fujiwara, Rafael Ribeiro/CBF