ロシアとウクライナの間で「直接交渉」を巡る駆け引きが激しさを増している。ロシアが2022年2月にウクライナへ侵攻した直後、両国は複数回にわたって直接交渉に臨むも決裂。

今回こそ停戦に向けた足がかりとなるか。


 ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナに「前提条件なし」の「直接交渉の再開」を呼びかけ、15日にトルコのイスタンブールで会談する用意があると一方的に提案。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領も「15日にトルコでプーチンを待つ」と自身のXに投稿した。


 当初、ゼレンスキー大統領は英独仏ポーランドの欧州4カ国と共にロシアへ要求した「12日から30日間の停戦」を直接交渉の条件にしていたが、トランプ米大統領が自身のSNSで〈ウクライナは即刻同意すべし〉などと投稿すると事態は一転。「30日間停戦」を求める姿勢は崩さずに、プーチン大統領の呼びかけに応じた。


■石油、天然ガスに翳り


 プーチン大統領はウクライナの停戦案に反応していないが、なぜ自ら協議再開を切り出したのか。ウクライナと欧州各国が足並みを揃えて「30日間停戦」の開始を条件に対ロ制裁の強化をチラつかせたことへの“時間稼ぎ”なのか。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)が言う。


「プーチン氏の念頭にあるのは、ロシア経済の行く末でしょう。トランプ氏が狙ったかどうか分かりませんが、『トランプ関税』はロシア経済に大打撃を与えています。トランプ氏が世界中に『相互関税』を課すと発表した後、原油価格は急落。一時1バレル=60ドルを割り込みました。

ロシアは中国を中心に原油や石油製品を2~4割も値引きして売っており、買い手はいるが、政府歳入は大きく落ち込んでいる状態です。しかもロシアが急ぐ中国での天然ガスパイプラインの増設も成果がない。経済的な疲弊に加えて更なる追加制裁の可能性に、さすがのプーチン氏も焦っているのではないか」


 ロイター通信(8日付)によると、米国がロシア産天然ガスの欧州向け販売の“正常化”に向けて支援することを水面下で協議したという。


「経済危機にあるとはいえ、プーチン氏に妥協する様子はありません。『前提条件なし』と言っていますが、かねて『非合法』とコキ下ろしてきたゼレンスキー政権の打倒がプーチン氏の絶対条件。政権打倒のために何をしでかすか分かりません」(中村逸郎氏)


 23年1月の「クリスマス停戦」も今年4月の「復活祭停戦」も今月の「対独戦勝80年停戦」も軒並み不発に終わったが、今回は果たして。


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 プーチン大統領は2024年12月19日に行われた年末恒例の大規模会見では「戦勝」に自信をみなぎらせていたが…。●関連記事【もっと読む】『すでに「第3次世界大戦」に突入か? 年末恒例ロング会見で露見したプーチン大統領の“世界観”』もあわせてどうぞ。


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