【あの人は今こうしている】
寺泉憲さん(俳優/77歳)
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80~81年放送の学園ドラマ「ただいま放課後」(フジテレビ系)のチョロ先生役で注目され、NHK朝ドラ「澪つくし」や「ひまわり」でも活躍。料理番組「料理バンザイ!」(テレビ朝日系)の人気コーナー“たまに行くならこんな店”の食リポも長くつとめた。
寺泉さんに会ったのは、銀座にある喫茶店内の会議室。相変わらずカッコ良くて若々しい。77歳の喜寿だというからビックリだ。
「還暦でジャズを歌い始めましてね。この5月に喜寿記念のライブをやるんです。本当は喜寿を迎えた去年10月にやる予定だったけど、直前にコロナになっちゃって、半年遅れのバースデーライブになりました。ゲストでは、あちこちで歌っているのですが、メインでやるライブは7年ぶり。おかげさまで満員御礼。待っていてくれた方がたくさんいたんだなあとうれしいです(笑)」
なぜ俳優の寺泉さんが歌を?
「僕はミュージカルの舞台で歌ったことはある。ただ、歌手活動はしていなかった。ところが、たまたま還暦の1年前、歌手のロミ・山田さんに『私のディナーショーで一緒に歌ってよ』と声をかけられて歌ってみたら、こりゃいいなと。
2年前には、歌手で音楽プロデューサーの美樹克彦が手がけたデュエットソング「ふたりのヨコハマものがたり」をリリースし、レコーディングも初体験。一方、俳優としては、あまり活動していない。もうやりきった?
「いや、芝居もやりたいですよ。『渋みが増して、若い頃よりいいんじゃない?』と言ってくれる友人もいるし。ただ、ドラマや映画は地方ロケ、舞台は地方公演があるでしょ。自宅でオフクロの介護をしているので、地方へ行って長期間、家を空けにくいんですよ」
母親はこの6月に、100歳になるのだという。
「オヤジが26年前に82歳で亡くなり、その10年後からオフクロと2人暮らしに。オフクロは風邪をひいて寝込んだことさえないほど元気。食欲もある。でも、さすがに日中は寝ていることが多くなり、この2月ごろからあまりしゃべらなくもなりました。だから、心配でね。朝、まず起きたらオフクロの部屋へ行って顔をのぞき、『よし、息してるな』と。
週4日デイサービスを利用するが、老人ホームにあずけて芸能活動をする考えはないという。
「6、7年前、沖縄・九州で舞台公演があったとき、1度だけショートステイにあずけたことがありますが、オフクロは自宅にいるほうが好きみたいで。僕には兄と弟がいますが、兄はハワイに住み頼れない。弟には、僕のライブのときなどには母をみてもらっています」
フライデーに狙われた桜田淳子チャンとの仲
独身。結婚は一度もせず、子どももいない。
「結果的に、独身を通すことになりましたね。僕はこういう運命だったんだな、と受け止めています。僕は若い頃から、人生設計なんて全然していなくて。いわば、大谷翔平選手とは逆。楽観的で、行き当たりばったりで生きてきたもんですから(笑)」
モテモテだったろうに、モッタイナイ。
さて、野球少年だった寺泉さんは慶大法学部進学後、米国文化に憧れ英語サークル・ESSに所属。英語劇に出演し英国の俳優らと交流したのを機に俳優を志した。72年、「劇団雲」研究生になり舞台で活躍後、ドラマに活動の幅を広げ、80~81年放送の「ただいま放課後」で人気獲得。NHK連続テレビ小説「澪つくし」「ひまわり」や「オレゴンから愛」(フジテレビ系)など多くのドラマで活躍した。
「『澪つくし』では桜田淳子チャンの相手役でした。淳子チャンとは舞台や2時間ドラマでも何度も共演したせいで仲を疑われ、写真週刊誌『フライデー』につけられました。でも、何もなかったので、『フライデー』にはきちんと説明し、お引き取りいただきました(笑)」
(取材・文=中野裕子)
▽寺泉憲(てらいずみ・けん) 1947年、横須賀生まれ。「劇団雲」「演劇集団 円」で活躍し、80年、学園ドラマ「ただいま放課後」で人気に。当初は本名の“寺泉哲章”で活動し、86年、現在の芸名に。2008年からジャズ歌手としても活動。5月25日、東京・銀座のライブハウス「BASE GRANBELL」で「TERAIZUMI KEN “77”Birthday Live!」を行う。