「政権選択の選挙に匹敵すると言っても過言ではない」──。1日山口市で開かれた自民党山口県連大会で、林官房長官は夏の参院選に向け危機感をにじませた。
■重要機密の扱い方を分かっていない議員から流出か
参院選の日程は今のところ「7月3日公示、20日投開票」が有力。公示まで残り1カ月に迫る中、永田町では自民党が実施したとされる情勢調査が出回っている。
タイトルは〈参議院選挙の情勢調査の概要〉。45ある全選挙区を対象に先月16~18日に実施したとみられる。自民は改選52議席のうち49議席を維持し、前回調査(4月11~13日)に比べ2議席増。非改選含め現有114議席から111議席へと微減するものの、公明党とあわせて136議席となり、過半数(125議席)を維持するとの結果が記されている。自民党関係者がタメ息交じりに言う。
「恐らく党幹部向けの説明資料でしょう。本来、こうした調査は重要機密事項。情報の扱い方を分かっていない議員その他から流れているのかもしれません。
「野党共闘が進むと自民議席数は7~8議席減」の予想
情勢調査とおぼしきものが選挙前に出回るのは珍しくないとはいえ、こうも憤るのにはワケがある。今回は特に“選挙戦略”がちりばめられているからだ。
例えば、〈調査結果のポイント〉では次のように分析している。
〈今回の調査では、前回と比較して自民党が2議席増え、49議席となっていますが、野党共闘が不十分な状況での議席数でありますので、野党共闘が進むと、自民党の議席数は7~8議席減ることが予想されます。従って、野党共闘をさせないことが最大の戦略であると考えます〉
ご丁寧にも〈野党共闘が実施されると厳しくなる選挙区〉として岐阜、滋賀、奈良、和歌山を列挙。さらに〈共産党が候補者を下ろすと厳しくなる選挙区〉に福島、山梨、長崎、鹿児島を挙げている。
「野党に共闘されたらマズイ」という危機感が伝わってくるが、今のところ野党共闘が一向に盛り上がっていないのも事実。ただ、政権与党の「弱点」だと野党が再認識すれば機運が高まる可能性はある。
参院選で打ち出すべき政策に関してもあけすけだ。自民候補に対する無党派層の平均支持率が前回調査より3.6%下がったことを念頭に、〈無党派層に響く目玉政策が必要〉と指摘。〈所得税の基礎控除、給与所得控除の引き上げ〉〈食料品を所得税の控除対象とする〉〈ガソリン税の暫定税率廃止〉〈社会保険料の据え置き〉などの具体策を並べている。
「あくまで調査した会社の提案なのかもしれませんが、あまりに手の内を明かし過ぎ。ここまで具体的な戦略・方針が表に出てくるのは異例です」(前出の関係者)
「政権選択の選挙に匹敵する」割に、情報管理もままならない。緩み切った石破自民に、野党は一矢報いることができるか。
◇ ◇ ◇
自民党迷走ぶりは永田町以外でも…●関連記事【もっと読む】『自民党が参院大阪候補「緊急公募」の大迷走…現職が選挙買収疑惑で不出馬→内輪モメでドロドロ』でも詳報している。