東京都議選(22日投開票)は参院選の前哨戦とあって各党とも支援に熱が入る。それは反ワクチンや陰謀論者も同じだ。


 “陰謀論者の総力戦”の様相を呈しているのが、日野市(定数2)に立つ池田利恵候補だ。


 自民党公認で2001年に日野市議に初当選。新型コロナワクチン接種に反対して除名され、無所属となった6期目途中で自動失職した。連日、日替わりで陰謀論者が応援演説。選挙戦2日目は、昨年の反ワクチン大規模集会などで池田と登壇してきた深田萌絵氏が現れた。


 深田ファンは高齢男性が目立ち、ネット上では「深田おちんぽ騎士団」などと揶揄されている。高幡不動駅前には騎士団を含め100人近くが集まったのだが、一気に不穏に。深田氏が「LGBT理解増進法」が女性トイレでの犯罪を助長するかのような演説をしたため、聴衆の男性が「差別やめろ!」と反発。騎士団らしき高齢者がつかみかかり、群衆の中を押し回した。結局、警察に突き出されていた。


 選挙戦3日目の応援弁士は、いわゆる「買ってはいけない」シリーズで知られる船瀬俊介氏。


「私は原口(一博衆院議員)に総理大臣になれと言った。

副総理は池田利恵。厚労大臣は(参院議員の)川田龍平さん。他はみんなディープステートだよ! ムサシ知ってるよな? 岸信介の時から選挙をひっくり返してきた悪魔の勢力だよ。日銀は悪魔勢力イルミナティに乗っ取られてる!」


 陰謀論ワードを恥ずかしげもなく連発するさまは、むしろすがすがしい。



選挙を利用して差別や陰謀論を吹聴

 ところかわって杉並区(定数6)の高円寺駅前では、ユダヤ陰謀論や人種差別を唱える宗教団体「日本平和神軍」(現・正理会)幹部の佐々木ちなつ候補が演説。差別主義者や抗議するカウンターが群がり、騒然となった。


 佐々木は百田尚樹氏が率いる国政政党とは別物の「日本保守党」の公認。この集団は埼玉県内でのクルド人排斥運動などを展開していて、石濱哲信代表や河合悠祐戸田市議などの主力が駆けつけた。スタッフの中には、統一教会分派でトランプ米大統領を支持するQアノン教団「サンクチュアリ教会」信者の姿も。


 ヘイトスピーチ集団の決まり文句「外国人が特権を有している」「日本を侵略しようとしている」といった主張は、根拠のない陰謀論だ。いずれも当選の可能性は低いが、民主主義の根幹である選挙を利用して差別や陰謀論を吹聴している。日本は大丈夫か?(一部敬称略)


(藤倉善郎/ジャーナリスト)


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 藤倉善郎氏の陰謀論者に関するルポルタージュは、【関連記事】で読める。


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