〈イスラエルとイランが完全かつ全面的な停戦で合意した〉〈12日戦争の正式な終結は世界から称賛されるだろう〉──。トランプ米大統領が日本時間24日午前、自身のSNSに投稿した“電撃停戦”発表に世界中が固唾をのんだ。


 トランプ大統領はイランの戦闘停止から12時間後にイスラエルが戦闘をやめる段階的な停戦措置を提示。イラン国営テレビは「停戦が始まった」と伝え、イスラエルのネタニヤフ首相も「イランの核とミサイルの脅威を取り除く目的は達成した」と停戦合意を明らかにした。


 ところが、トランプ大統領が改めて自身のSNSで〈停戦が発効した。違反しないでくれ!〉と呼びかけた数時間後、イスラエル軍はイランからミサイル発射が確認されたとしてイランの「停戦違反」を主張。一方、イラン軍は発射を否定しており、停戦継続の見通しのつかない複雑怪奇な様相を呈している。


 ただ先週末、イスラエルの要請に応じて米軍がイラン核施設をバンカーバスターで空爆した当時に比べ、緊張が和らいだ感はある。米軍の攻撃前、トランプ大統領はイランの最高指導者ハメネイ師を念頭に自身のSNSで〈どこに隠れているか正確に把握している。簡単な標的だ〉〈我慢の限界に達している〉と脅し文句を並べ、無条件降伏を迫っていた。


 イランへの最後通牒から電撃停戦の発表まで1週間足らず。イランの体制転換までほのめかしていた割に、急展開すぎやしないか。上智大教授の前嶋和弘氏(現代米国政治)が言う。


■ルール無用の姿勢が米外交の悪しき前例に


「トランプ氏の熱心な支持層は、イスラエルを徹底支援するキリスト教福音派です。

米国史上最もイスラエル寄りの大統領であるトランプ氏にとって、イスラエルは無視できません。イスラエルがイランの制空権を握ったタイミングで、バンカーバスターでの攻撃に踏み切りました。実際のところ核施設を十分に破壊できたかは不明ですが、トランプ氏は『これ以上、イランも戦いたくないだろう』とみた。いわば、“勝ち馬”に乗ったわけです。一方、アメリカファーストを訴える『MAGA』派の支持者にとって、中東の戦争に巻き込まれるのは受け入れがたい。トランプ氏としては、イスラエルを支援して福音派を喜ばせつつ、アメリカファーストの支持者の反発をくらわない『勝ち逃げ』のタイミングが今だと踏んだのでしょう」


 米ロイター/イプソスの世論調査(20~23日実施)によると、米国のイラン空爆継続を支持したのは32%。反対が49%に上った。「世界の警察」の役割に辟易する支持者からも突き上げをくらっている。


「本来なら議会に委ねられる開戦決議も説明も一切すっ飛ばして、トランプ氏は国際法違反の攻撃に打って出ました。いわば、どこを攻撃するか、大統領の腹ひとつです。国内的にも国際的にもルール無用のトランプ氏の姿勢が、今後のアメリカ外交の中心になってしまわないか懸念されます」(前嶋和弘氏)


 片や米国のイラン攻撃について「核兵器保有を阻止するという決意を示した」と称賛しているのが石破政権である。ルール無視の狂人に追従とは情けない限りだ。


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 米軍によるイラン核施設への攻撃を受け、原油先物価格が急上昇。日本にどんな影響が出るのか。●関連記事『米国のイラン攻撃で物価高が急加速!エネルギー価格高騰、「有事のドル買い」で円相場は一時1ドル148円台に』で詳報している。


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