参院選は投開票(20日)まで10日を切り、中盤戦に突入。選挙の争点に浮上しているのが、外国人政策だ。

「日本人ファースト」を掲げ支持を伸ばしている参政党は「行き過ぎた外国人受け入れに反対」と強く訴え、SNSで注目を集める。この動きにつられてか、自民党も「『違法外国人ゼロ』に向けた取り組みを加速する」を公約に掲げ、外国人への対応強化を打ち出す。


 国民民主党は外国人による不動産投資の規制強化を、日本維新の会は外国人受け入れの総量規制をそれぞれ唱え、外国人「規制」の厳格化を競い合っているのだ。


 しかし、こうした外国人を「脅威」と捉える主張は、外国人の「排斥」につながる危うさがつきまとう。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の日本支部は4日に会見し、複数の政党が排外主義的な主張を掲げていることへの懸念を表明。事務局長の田嶋俊博氏は「世界的な権威主義と右傾化の流れが、日本でもどんどん明確になっている」と危機感をあらわにした。


 8日には、人権問題に取り組むNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」など8団体が、選挙戦での排外主義に反対する緊急共同声明を発表。「外国人が生活苦のスケープゴートにされている」と呼びかけ、266団体が賛同している。10日も一般社団法人「反貧困ネットワーク」が「日本が抱える社会問題は外国人の責任ではない。分断ではなく、普遍的人権の観点から政治を考えてほしい」と訴えた。



「感情論に基づく批判は極右の台頭を招く」

 実際に参院選の街頭演説は、さながらヘイトスピーチの見本市だ。参政党の神谷宗幣代表は「仕事に就けなかった外国人が、万引とかして大きな犯罪が生まれている」などの蔑視発言を連発。


 日本保守党の百田尚樹代表は外国人労働者を「日本の文化は守らない。ルールは無視する。日本人を暴行する。日本人の物を盗む」と決めつけ、「日本の治安が脅かされるし、日本の文化、社会が壊される」と嫌悪感を隠さない。


 NHK党の立花孝志党首は、もっとロコツだ。5日の兵庫県川西市の街頭演説で「これからも人種差別します。怖いから」と堂々宣言。前日には「黒人とか、イスラム系の人たちが駅前に集団でいると怖い」と打ち明け、「母国でまっとうに生きていけない人たちが難民とかで来るわけです」と言い切る始末だ。


 こうした言いたい放題がまかり通る状況に、どう対応していけばいいのか。ジャーナリストの斎藤貴男氏はこう言う。


「確かに、行き過ぎたヘイトスピーチが散見されるのは問題です。ただ、反論する側もハッキリと論拠を示すなど、批判の仕方を考えなければ相手の反発は強くなる。

お互いに感情論で言い合ってしまえば、感情の強さの分だけ極右勢力の声が勝ってしまい、彼らの台頭につながってしまう。結局は分断を加速させることになります」


 今回の選挙では、大手メディアもファクトチェックに力を入れているが、連日のヘイト演説に追いつかない状態である。有権者は冷静になるべきだ。


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 蔑視発言を連発する参政党には、とてつもない“黒歴史”が…関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。


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