女優の東ちづる(65)プロデュースのパフォーマンス集団「まぜこぜ一座」の公演が7月27日、東京・渋谷区のさくらホールで行われた。座長の東は小人症のマジシャンで俳優のマメ山田や、義足のダンサー、アルコール依存症の詩人、自閉症やトランスジェンダー、全盲の歌手らを率い、自ら提唱する“まぜこぜ社会”の世界観とメッセージで会場を彩った。


 東は社会活動やマイノリティー支援に30年以上、従事してきたが、東日本大震災で自閉症の子どもが避難所で居場所を得られなかったり、車椅子の障がい者が排除される現実を知って、2012年に一般社団法人「Get in touch」を設立。


「『まぜこぜ一座』は、キッチンでまぜごはんをつくっているときに思いついたんです。色んな具材が入っていて、おいしいのは、いろんな具材の良さが混ざっているからだって。社会にいろんな人がいて、社会の役に立たなければ生きる価値がないなんて流れがあるけど、逆ですよね。私たち、人の役に立つ社会をつくっていかなくちゃ」


 そう言ってきらびやかな衣装でほほ笑み、軽妙なトークで会場を沸かせたが、分断化が進む社会や政治に対する思いも隠さない。


「年に一度の『月夜のからくりハウス』、今年は『楽しい日本でSHOW!?』と銘打ったのですが、皆さん、楽しい日本になっていますか?」


 これは、石破首相が今年1月の施政方針演説で、「これからは一人一人が主導する楽しい日本を目指していきたいと考えます」と述べたことを皮肉ったものだろう。石破首相の言った「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、今日より明日はよくなると実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家」にはなっていない、むしろ逆の方向に進んでいる、と。



芸能人に対する政治的発言への批判にも物申し、石破政権にも「違和感しかない」とピシャリ

 関係者が補足する。


「いわゆるマイノリティーのパフォーマンス集団を結成したのは、震災での出来事を掘り下げて、この社会に色とりどりの多様な人たちがいるということを日本では実感しにくいというところに行き着いた。だから、どう接したらいいのか、分からなくなっていると考えたのです。

普段から一緒に過ごすような機会をつくれば、分かり合えるようになるし、避難所でのようなことも少なくなるのではないかというのです」


 公演のホールの客席には車椅子スペースが設けられていた。階段だけの会場には特設のスロープがつくられていて、東は「エンタメ会場はバリアフリーにすべき」という主張を実行してみせたのだという。


 芸能人による政治的言動は批判されたり、仕事にも影響を及ぼしかねないとして、一家言ある芸能人もおとなしくする風潮があるが、そうした批判に東は「芸能人はおバカであってほしい?」などとコメントしつつ、発言を続けてきた。今年3月には、SNSに「『受けることばかりやると国は滅ぶ』石破首相が持論」との見出し記事を添付し、こうつづった。


《『国家のためには』とおっしゃいますが、国民が耐え忍んで成立する国家というものがわかりません》《この現状に不安だらけの私たち国民が負担? 施政方針演説で打ち出した『楽しい日本』からどんどん遠くなっています。税金を納めることに、もはや違和感しかないです》


 電気・ガス料金の値上がについては《もう本当にキツ過ぎる》と訴えた。


 今回の公演の観客はそうした東の主張にもうなずいてきたのか、パフォーマンスに大いに笑い、そして盛大な拍手を送っていた。


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「物申す芸能人」の最たる例と言って良い東ちづる。関連記事【もっと読む】“元祖お嫁さんにしたい女優”東ちづるも高校授業料無償化に苦言…石破首相は「教育理念を欠く」過去発言と矛盾…では、その発言について伝えている。


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