【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】
いやー、驚きましたよね。遠く離れたカムチャツカの地震の影響で、7月30日は日本列島のあちこちに津波警報が出ましたね。
天災はいつ発生するか分かりませんので、いつでも素早く対応できるように、各局ともに初動の対応には基準が定められていて、ほぼ機械的に対応することになります。「震度いくつ以上なら速報テロップを出す」とか「ニューススタジオを開いてアナウンサーが緊急情報を読み上げる」とか。
ちなみに真夜中とかで、もし誰もアナウンサーがいなかったり、すぐにニューススタジオに来られない状況でも必ず対応できるように、訓練もかなり高頻度に行われていて、報道局員は誰でもアナウンサーに代わって画面に出て緊急情報をアナウンスできるんです。一応ね。私も何回も「ここで地震の情報をお伝えします。各地の震度です」みたいなことを読み上げましたよ。訓練で。
気象庁から送られてくる緊急情報はすべて自動的に情報画面として生成されて、いつでも放送できるようになっていますし、地震や津波の時の定型原稿はいつもニューススタジオに必ず置いてありますので、情報画面を流して、それを読み上げつつ定型原稿も読めば、とりあえず第一報は数名いれば放送できるようになってます。まあ、緊急対応のため東京キー局ではアナウンサーは基本的に24時間誰かは必ずいるようになってるんですけど。
■緊急時の災害報道は「編成の報道担当」が対応
ということで第一報を乗り切ったら、ここで活躍するのが「編成の報道担当」です。
津波警報のように、「誰かの命に関わる事態」では緊急対応はマストなので、最初がマスターカットで、そのあとを特番と枠内対応、それにニュース番組の枠拡大で乗り切るのが通常でしょうか。現場にとってはマスターカットが長く続くと、CMなしで延々と続く感じになるので、次に何を放送するか考えたり準備する余裕がなくなってきてかなり大変です。東日本大震災の時にはマスターカットの状態がかなりどこまでも続きました。
でも不思議なもので、こういう時って誰にも何も言われなくても、人が次々と応援に駆けつけてくるんですよね。報道局中の番組ディレクターや記者たちが。やっぱり、みんな「血が騒ぐ」というと不謹慎な言い方かもしれませんけど、こういう時に役に立たなきゃ、と思ってるんです。報道関係者の端くれとして、ね。
ちなみに、報道デスクとして自分なりに見つけた「緊急災害放送をうまくやるコツ」は、3つ。「落ち着く」「細かく仕事を分担して責任者を置く」そして「やれることだけを繰り返す」ことですね。
こうしないと、みんなバラバラにいろんな原稿やテロップを出してきてカオスになったり、怪しい情報を焦って放送して誤報を出したりします。絶対こういう時には興奮して大声でわめき散らす人が出てくるので、そういう人には「うるせえ!」と一喝するのも大事です。たとえ先輩であってもね。邪魔なので。
(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)
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