【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
先日、昔、住んでいた街に行ったら駅前にあった書店がドーナツ屋に変わっていた。今や街の書店は風前のともしび。
スマホでポチッとすれば家に届くわけだし、本は置き場所に困るからと電子版に切り替える人も多い。なんとも嘆かわしい時代になった。
失われつつある本の文化の救世主ともいうべきは本好き女優たちだ。美村里江、本上まなみ、中江有里、杏、門脇麦……。そこはかとなく漂うインテリジェンスで、つかみどころのないミステリアスな雰囲気、そして決して揺るぐことのない芯の強さなどなど彼女たちに共通するところは多い。
芦田愛菜も幼い頃から本好きで有名。いつも図書館で借りられる限度いっぱいの冊数まで絵本や本を借り、読み終えたらまた別の本を借りて読むと言っていた記憶がある。小学校低学年で年間300冊以上読んでいたというからすごい。
娘にしたい、孫にしたい、部下にしたい女優など今やあらゆるランキングに名前が挙がるほど好感度の高い芦田。まさに「本の申し子」。聡明さは本でつくられたか。
上白石萌音の本の紹介はウイットに富む
NHK「あさイチ」は「久しぶりに読書してみませんか? 大の読書好き上白石萌音と一緒に」を放送。
番組では萌音が、3年前にオープンした、作家たちが運営する書店で本を物色、オススメ本を紹介するなど実に楽しそうだった。いつも「買うのは2冊までだよ~」と自分に言い聞かせるが、結局「5、6冊買ってしまう」。「洋服はお店で着て『あっ、いいじゃん』と思っても、おうちで着て鏡の前で『あれ?』ってことあるじゃないですか。本ってそのギャップが少ない気がする」とも。
最近読んだ本の写真を見せたが、阿刀田高「ブラック・ジョーク大全」や「アンネの日記」があるかと思えば、元白夜書房の編集者、末井昭「自殺」があったり。「NHKに映ったらかっこいいなあと思って並べています」とモーパッサンの短編集やジョージ・オーウェル「1984年」なども紹介するなどウイットに富んでいた。
それにしても人の本棚を見るのは興味深い。以前BSでそんな番組をやっていた気もする。
もう1人、この日のゲストだったヒコロヒーも本好きということで仕事の合間にちょこちょこ読むとのこと。読むだけでなく、書く方もイケる口で、今年自身が書いた短編小説「黙って喋って」が「島清恋愛文学賞」を受賞したとか。
酒、たばこ、ギャンブルをたしなみ、やさぐれのイメージが強いヒコロヒーだが、本好きな乙女の一面も。これまでの本好き女優に共通するイメージと若干異なるが、「本好き界」に新たな救世主が現れた?
やっぱり読書の秋。
(桧山珠美/コラムニスト)