日本テレビがうれしい悲鳴をあげている。長年にわたり“感動ポルノ”などと揶揄され、番組の存在意義すら問われ始めていた同局の夏の風物詩「24時間テレビ」(8月30~31日に放送)が、今年は予想を覆す成功を収めたからだ。
その立役者は、チャリティーランナーを務めたSUPER EIGHTの横山裕(44)。彼の壮絶な半生に裏打ちされた走りは、番組史上最高額となる7億円超の募金を集める原動力となった。局内では「救世主」とまで称賛されているというが、そのあまりに完璧な成功が、皮肉にも来年以降の番組制作陣を深刻な窮地に追い込んでしまったという。
「局内は、正直言って安堵と困惑が入り混じった複雑な空気です。平均世帯視聴率は11.0%で、チャリティーマラソンが始まった1992年以降、ワースト記録となったものの、終盤の横山さんのゴールシーン(午後7時~8時54分)では、世帯平均視聴率が19.5%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。何より系列局の募金横領事件で失墜した信頼を回復し、昨年の5億円をはるかに上回る7億40万8600円という募金額を達成できた。これはひとえに、横山さんの真摯な姿が視聴者の心を動かしたからに他なりません」
そう語るのは、日テレの中堅社員だ。
しかし、この大成功こそが、制作サイドの首を絞めることになったのだという。成功の最大の要因は、横山がマラソンを走ることに伴う「大義名分」が、あまりにも強固で純粋過ぎた点にある。今回、番組で詳細に語られた彼の過去は、複雑な家庭で、父親違いのふたりの弟の面倒を見てきたという、トップアイドルという華やかなイメージとはおよそかけ離れた壮絶なものだった。
横山は、出演にあたり日テレ側に「集まった募金の全額を、子どもたちの支援に使うこと」を絶対条件として提示していたという。「学歴もないアホな自分でも、走ることで何かを伝えられるはずだ」。
番組の成功を受け、日テレは早々に来年(2026年)の「24時間テレビ」の放送と、チャリティーマラソンの継続を決定したという。となると、制作陣が直面するのは、「ポスト横山」を誰にするのかの問題だ。
「横山さんの成功は、チャリティーランナーに求められるハードルを極限まで引き上げてしまった。もはや単なる人気者や話題性のある人物というだけでは視聴者は納得しないでしょう。横山さんのように、『なぜ自分が酷暑の中を走るのか』という問いに対し、誰もが共感できるだけの正義と、それを裏付ける壮絶な実体験がなければ、『また感動ポルノか』という批判が再燃するのは必至です。しかし、芸能界広しといえど、横山さんほどの熾烈な過去を背負い、かつそれを真摯なメッセージに昇華できるタレントが、そう何人もいるわけではありません」(番組制作関係者)
制作現場では、すでに来年の人選を巡って頭を抱えているという。アスリートや文化人なども含めリストアップは始まっているが、横山を超える「正義の物語」を持つ人物は見つかっていないのが現状のようだ。
横山の魂の走りは、「24時間テレビ」を救うと同時に、番組制作陣に「本物でなければ生き残れない」という、あまりにも重い十字架を背負わせることになってしまったようだ。
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