フィリピン・ルソン島パンパンガ州アンヘレス市バリバゴ地区テオドロ通りで建設中の9階建てビルが倒壊した事故は、5月28日夜を迎え、救助活動と責任追及の両面で緊迫度を増している。内務地方政府省(DILG)のレムリャ長官は「一筋の希望がある限り救助を続けよ」と命じ、合同救難チームは二次崩壊の危険を抱えながら重機を使わず、手作業でコンクリートを削る過酷な捜索を24時間体制で続けている。
最新の発表では死亡者は5名、行方不明者は15名とされる。

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 現地主要メディアによると、国民の怒りは、事故直後から姿を消した施主のアーネスト・ジャクソン・リム氏(Ernest Jackson Lim)と施工責任者のジョエル・ヤング氏(Joel Young)に向けられている。国家警察の犯罪捜査分析グループ(CIDG)がリム氏の自宅や施工会社の事務所を捜索したところ、両者の携帯は不通で、現場は空っぽだった。フィリピンの司法制度では現行犯でない限り逮捕状が必要であり、両名は弁護士を立てて「捜査に協力する」との書面を提出したまま姿を見せていない。検察の予備調査の間に証拠隠滅や口封じを図る恐れがあるため、司法省(DOJ)は両者が国外へ逃亡するのを防ぐため、移民局警戒命令(ILSO)を発令した。CIDGは潜伏先の捜索を続け、外堀を埋める形で包囲網を強化している。

 現場で明らかになった建物の状態は、想像を超える杜撰さだった。リム氏は2023年6月に建築許可を取得し、2024年から商業コンドミニアム兼ホテルの建設を進めていたが、当初の設計にない「10階部分の違法増築」と「最上階への巨大スイミングプール設置」を独断で進めたとされる。現地の構造エンジニアは、基礎や柱の太さは「せいぜい4階建て程度の強度しかない」と指摘している。最上階に大量の水を載せることで柱に過大なデッドロードがかかり、座屈を起こして全階がパンケーキ状に崩壊した可能性が高い。

 施工側の労務管理にも深刻な問題があった。元請けのヤング氏の会社は、労働雇用省(DOLE)の許可を得ずに無許可の下請けへ丸投げする「カボボ契約」と呼ばれる違法な孫請け構造を作り、公式名簿にはわずか9人と記載されていた一方で、実際には地方から集められた数十人の労働者とその家族が現場の仮設宿舎で暮らしていた。
これらの労働者の多くが公式記録に残らず、被害の深刻化を招いたと見られる。

 行政側の対応にも疑問が残る。2025年9月、DOLEの検査官が安全違反を察知して立ち入ろうとした際、現場は入場を拒否したという記録がある。その後、一時的に作業停止命令が出されたものの、翌月には解除されており、不自然な経緯を受けてトレンティーノ労働長官代行は関係者の予防的停職処分を発動した。これは調査の妨害や証拠隠滅を防ぐための措置だ。

 5月28日夜、崩壊現場周辺は隣接ホテルの二次崩壊や地盤沈下の恐れから無期限の避難・営業停止となり、観光地は事実上のゴーストタウンと化している。がれきの下では幼児を含む行方不明者の捜索が続き、救助隊は冷たいコンクリートを手作業で削りながら命を探している。富と権力、そして制度の隙間に隠れて逃亡を続ける施主と施工責任者。今回の事故は単なる建築事故を超え、金権政治や腐敗、人命軽視の象徴として社会に深い爪痕を残している。裁判所による逮捕状の発付は秒読み段階にあり、国家警察が両名の身柄確保に全力を挙げている。
【編集:Eula】
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