1978年に公開された映画「皮ジャン反抗族」は、舘ひろしが主演した、彼の初主演映画である。70年代当時の狂躁的な若者たちの生活ぶり、オートバイを通じての少年との友情やちょっと不器用な恋模様などを描いた青春映画だ。
■昼は修理工、夜はディスコに集う主人公たちの青春物語
自動車修理工場で働く主人公の新治(舘ひろし)は、ディスコ「アポロン」の常連。ある土曜の夜、新治はアポロンで常連客・メグ(夏樹陽子)の親衛隊とペギイ(山科ゆり)率いるスケバングループの喧嘩を仲裁する。その後ペギイの援軍で現れたチンピラたちをも一蹴するが、チンピラの親玉である内田(片桐竜次)が現れてボコボコに痛めつけられる。メグには金持ちの情夫・正一(加藤大樹)がいたが、魅力的な新治に関心を抱く。新治の存在が面白くない正一は、オートバイのチキンレースで新治と対決するが敗れてしまう。度胸を見せつけた新治に惚れ込んだメグは新治をベッドに誘う。
一方、勤め先の修理工場の経営者・文代(白川和子)の息子・修(秋山敏和)は、新治を慕ってオートバイの運転を教わるなど、交流を深める。そんな毎日を送る新治だったが、スーパーの店員・マヨ(森下愛子)に恋心を寄せていた。だが、マヨは新治を痛めつけたチンピラ・内田の妹で、内田に金をせびられていた...。ある日、道で蹲っているマヨを助けた新治は、彼女が悪い男に捨てられて妊娠していた事実を知る...。
タイトルから、若さを持て余して暴走する若者たちの物語のような印象を持ってしまうが、舘ひろし演じる新治は、むしろ純朴で真面目な青年だ。ケンカの場面での激しい格闘こそあるが、仲裁した立場だし、危険なチキンレースにしても相手の挑戦に応じただけだ。
■誤解が元で悲劇的な結末に。ラストシーンの余韻が印象深い
終盤にかけて、ストーリーは大きく動いていき、ある主要人物が悲劇的な死を遂げる。ちょっとした誤解が原因ではあるが、その責任を感じた新治は心に傷を負う。そして、新治の運命もまた、ある「誤解」によって悲劇に向かっていく...。やるせない結末を迎え、悲しい青春物語ではあるが、余韻を残すラストシーンは印象深い。
当時の青春映画では、定番的なストーリーであったと思う。監督を長谷部安春は、「野良猫ロック」シリーズなど日活アクション作品で名を馳せ、舘ひろしとは後に「あぶない刑事」でもタッグを組むなど盟友でもあった。初期の「相棒」シリーズでも活躍したが、本作で強烈な存在感を放っている片桐竜次は、「相棒」の内村刑事部長役でおなじみだ。
舘ひろしを中心に多彩な俳優陣が顔を揃えて、ディスコを中心に70年代の若者風俗も楽しめる映画「皮ジャン反抗族」は、良くも悪くもあの時代の空気を存分に感じさせる青春映画だ。熱血する若者や夢見る乙女は出てこないが、だからこそリアリティがある。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
皮ジャン反抗族
放送日時:2025年8月8日(金)20:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります