ディズニープラス「スター」オリジナルシリーズとして、2025年7月16日より独占配信しているアニメ『BULLET/BULLET』。朴性厚(『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』『呪術廻戦』『劇場版 呪術廻戦 0』)が手がける完全新作オリジナル作品だ。
メインスタッフには、シリーズ構成・脚本に『ウマ娘 シンデレラグレイ』の金田一士、キャラクターデザイン・総作画監督に『HUNTER×HUNTER』『オーバーロード』の吉松孝博、そしてコンセプト・メカニックデザインを『ガンダム』シリーズや『スター・ウォーズ』シリーズなど多くの話題作で知られる天神英貴が担当。さらに、カーアクションディレクターには『頭文字D First Stage』『capeta』の三沢伸が参加し、映像美とスピード感あふれるアクションが大きな見どころとなっている。
個性的なキャラクターが命を燃やし、極限のバトルとドラマが交錯する本作。主演のギア役・井上麻里奈、ノア役・瀬戸麻沙美の二人が、アフレコ現場の舞台裏から、作品への想い、そして役柄へのアプローチまで、たっぷり語ってくれた。
――今作はキャラクターの個性が際立っていて、ストーリーそのものもとても面白いですが、なかでも圧巻だったのがカーアクションの迫力でした。『頭文字D First Stage』の三沢伸さんがカーアクションディレクターを担当していることもあり、映像のスピード感や臨場感は一段と際立っていたと思います。お二人は、実際に完成した映像をご覧になって、どんな印象を受けましたか?
井上「完成した映像を観た時、まず圧倒されました......。アフレコの段階では、私たち自身も台本や設定資料を手がかりに、どんな映像になるのか想像しながら演じていました。実際に出来上がった映像を見てみると、想像をはるかに超えるスピード感や緻密さがあって、特にカーアクションの動きや画面のダイナミズムには感動しましたね。『こんなにすごいアクションがついていたのか』と驚きもありましたし、同時にこの映像に合わせて、もう一段階上の表現ができたかもしれないという、少し悔しい気持ちもあって。それぐらい今回の映像は素晴らしいものでしたし、スタッフの皆さんの熱量も伝わってきました」
瀬戸「私もアフレコの時は、まだ全体像が見えていなかったので、常に『ここはどんな動きがあるのかな』と想像しながらマイクに向かっていたんです。でも現場の空気感や、疾走感を大事にしてほしいというディレクションが随所にあったので、演じる側としても臨場感を意識していました。
――アフレコ自体は、いつごろ行われたのでしょうか?
井上「収録は1年以上前、昨年の冬ごろだったと思います。最近は映像作品の制作が早いものも多いですが、今作はじっくり時間をかけて作られていた印象です。記憶を手繰り寄せながら現場のことを思い出すと、改めてものすごく熱量の高い現場だったなと感じます」
――アフレコ録現場の雰囲気はいかがでしたか?
瀬戸「ほとんどのキャストと一緒に収録できました。やっぱり掛け合いのシーンでは、みんなで芝居を作っていけるので、役としての空気感もリアルに感じられるのが大きかったですね」
井上「殺し屋役のキャストさんがたくさんいて、殺し屋が全員揃う場面では、ブースもとても賑やかでしたね(笑)。マイクの本数も普段より多くて、こんなに人数が多いアフレコ現場は久しぶりでした。マイクワークも独特で、それぞれのキャラクターがしっかり個性を発揮できるように、みんなで自然に気を配り合いながら演じていたのが印象的でしたね」

――ギアとノア、それぞれのキャラクターを演じるうえで、特に意識されたことや大切にされたポイントはありますか?
井上「私が演じたギアは、物語が進むごとに王道の主人公という枠に収まりきらない、複雑で多面的な人物。最初はみんなを引っ張るリーダーとして意識していましたが、話が進むにつれて、家族や仲間に支えられたり、時には弱さや甘えを見せたりもするんです。理想的な主人公像というより、等身大の少年として、いろいろな感情や葛藤を抱えながら生きている。そのリアリティを大事にしようと考えました。芝居もこう演じようと決めすぎず、シーンごとにギア自身の感情や揺れを受け入れていくようなアプローチでしたね」
――物語を追いながら、ご自身の役の印象やアプローチにも変化がありましたか?
井上「そうですね。最初は"主人公らしさ"や"リーダーっぽさ"を前面に出していましたが、現場でのディレクションや、他のキャストの皆さんとの掛け合いの中で、『自分の感情をもっと素直に出していいんだ』と感じるようになって。
――ノアとのシーンで、特に印象に残っている場面はありますか?
井上「ノアがまだ本音を隠している時期のやり取りは印象に残っています。たとえば、ギアが『外の世界に行きたい』と語る場面は、ノアが仮面をかぶっているけれど、ギアはその奥にある思いを自然に感じ取っている。二人の関係性が少しずつ変わっていくのも、この作品ならではの面白さだと感じました」
――食事のシーンでノアがギアの口を拭いてあげるシーンも印象的でした
井上「さりげないけれどいいシーンですよね。人間らしい可愛さや温かさが出ているなと思いました」

――瀬戸さんはいかがですか?
瀬戸「ノアは一言でいうと、とても柔軟で、強さと繊細さを併せ持つ人物です。年齢の割に大人びた雰囲気もありますが、決して無理に背伸びしているわけではなく、自分の魅力や強みを理解したうえで、それを活かして動けるタイプ。場面によっては、可愛さや美しさを武器に人をコントロールすることもできるし、複雑な人生経験を持っている印象です。物語の中では、知らなかった世界の真実や現実に直面して、驚きや動揺を見せることもあるけれど、最終的には冷静に状況を受け止めて、前に進もうとする強さがあると思っています。そして、ギアと出会ってからは、それまで抑えていた感情や素直な部分を出せるようになっていく。その変化を、全12話を通して丁寧に表現できればと思いながら演じました」

――ギアとノア、それぞれのキャラクターの掛け合いが作品の魅力のひとつですが、お互いの印象はいかがでしたか?
井上「瀬戸さんのノアは本当に自然体で、ギアをうまく振り回してくれる存在でした。ノアの持つ処世術や大人びた部分にも悪意はなくて、ギアとしても『素直に助けたい』と思わせてくれるキャラクターで。演じていても、本当に人間らしくて、芝居がしやすかったです」
瀬戸「私から見ても、井上さんのギアは毎回新鮮で、いい意味で型にはまらない主人公だなと感じていました。
――これまでにも共演はありましたが、現場でしっかり掛け合いをしたのは今回が初めてだったそうですね
井上「そうなんですよ。これまでアフレコ現場でご一緒する機会はほとんどなかったよね」
瀬戸「現場でがっつり共演することは意外と少なくて。むしろ、麻里奈さんが出演されている作品を一視聴者として観ることの方が多かったくらいで(笑)」
井上「『呪術廻戦』の時も、基本的に分散収録だったので、同じタイミングで録ることは一、二回程度だったんです」
瀬戸「たとえばゲームの現場でご一緒したときも、井上さんは役によって毎回まったく違う表情をされるので、今回改めて間近でその演技に触れることができて新鮮でした」
――瀬戸さんから見て、井上さんの現場での姿はいかがでしたか?
瀬戸「ノアという役は私にとっても難しいキャラクターで、常に悩みながら演じていたんですけど、麻里奈さんの現場でのやり取りには無駄がなく、受け答えもとても的確なんです。ディレクションへの反応なども含めて、私は横で学ばせていただく場面が多かったです。今回はキャストが非常に多く、全体で会話する時間は少なかったのですが、麻里奈さんが話し始めると現場の空気が自然と和やかになるのを感じて、『自然と居心地の良い雰囲気を作れる方だな』と思い、見習いたいと思いました」
――井上さんはいかがでしたか?
井上「いつも後ろで見守ってくれているという安心感がありました(笑)。特にアクションシーンでは、ノアは待機していることが多かったのですが、今回の現場は朴監督や音響監督の藤田さんなど、いわゆる"呪術チーム"が揃っていたこともあって、全体的に落ち着いた安心感がありました。そのなかで瀬戸さんがそばにいてくださることで、私もよりリラックスして臨むことができました。序盤はギアがマイク前に立つ場面が多くて、ノアの出番は限られていたのですが、瀬戸さんが随所で寄り添うようにマイクに入ってくださったり、私に向けてしっかりと演技で応じてくださるのが心強かったです。お互いに刺激を与え合いながら演じることができた現場でした」
――最後に、作品を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします
井上「本作は朴監督のオリジナル作品で、"男の子が夢中になる要素"がぎゅっと詰まっています。個性的なキャラクターたちや、家族や仲間とのつながり、圧倒的なアクション、そして"世界への違和感"や"夢に向かう姿勢"など、幅広いテーマが描かれています。きっと見る人それぞれに響くポイントがあると思いますので、ぜひ全身でこの世界観を体感してください」
瀬戸「作品の舞台となる閉鎖的な世界で、主人公たちが自分の想いと向き合いながら成長していく物語です。キャラクターひとりひとりに背景やドラマがあって、どのキャラもきっと心に残るはずです。

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
配信情報
『BULLET/BULLET』
ディズニープラス「スター」にて独占配信中
劇場版『BULLET/BULLET』
【前章「弾丸疾走編」】公開中
【後章「弾丸決戦編」】2025年8月15日(金)新宿ピカデリー他、全国公開