ヒロイン・まひろ(紫式部/吉高由里子)には藤原惟規(のぶのり/高杉真宙)という弟が存在しています。
しかし彼女のきょうだいは彼だけでなく、実の姉(藤原為時長女)や異母弟たちがいました。
今回は紫式部の異母弟・藤原惟通(のぶみち)を紹介。果たして本編には登場するでしょうか。
■常陸国司として、現地に赴任
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藤原惟通は生年不詳、母親もよく分かっていません。少なくとも為時正室・藤原為信女(ためのぶのむすめ。役名ちやは)の子ではないようです。
一条天皇・三条天皇・後一条天皇の三代にわたって仕え、寛弘6年(1009年)に蔵人所の雑色(ぞうしき)となりました。
その後、長和2年(1013年)には右兵衛尉(うひょうゑのじょう)として見え、寛仁3年(1019年)には常陸介(ひたちのすけ)としてその名が見えます。
- 雑色:下働き。ここでは天皇陛下の側近である蔵人たちを支えた。
- 右兵衛尉:朝廷を警固する兵衛府の三等官。治安維持の現場で活躍。
- 常陸介:常陸国(現茨城県)国司の二等官。現代で言えば都道府県の副知事的な存在。
(偉いというより、人を派遣する余裕がなかったのでしょうね)
同年7月13日、現地で四位に叙せられますが、四位には正四位上から従四位下まで4段階あるので、どれかはハッキリしません。
【四位の4段階】
正四位上(しょう・しい・の・じょう)
正四位下(しょう・しい・の・げ)
従四位上(じゅ・しい・の・じょう)
従四位下(じゅ・しい・の・げ)
※大きく正と従に分かれ、更にそれぞれ上下に分かれています。
それ以前に五位とも六位とも言われていないため、いきなり四位とは不自然ですね。
しかし翌寛仁4年(1020年)7月3日、現地の常陸国で卒去してしまったのでした。
卒去(そっきょ)とは貴人が亡くなることを意味しています。
生年不詳なので厳密な享年は不明ながら、紫式部らの生年より若いため、アラフォーくらいではなかったのでしょうか。
■エピローグ・未亡人の悲劇
言い寄られる未亡人(イメージ)
普通、国司が亡くなると遺された妻子は帰京します。地方よりも上方に戻った方が何かとチャンスに恵まれるからです。
しかし惟通とその未亡人らは常陸国に留まりました。亡き夫の墓があるからという情緒的な理由より、荘園などの経済基盤がすでにあったからと考えられます。
しかし寛仁4年(1020年)閏12月、惟通の未亡人が常陸国の住人・平為幹(たいらの ためもと)に強姦されてしまう事件が発生しました。
惟通の母親(紫式部の継母)はこれを国司に訴え出たため、為幹は逮捕されます。
しかし翌年、どうした訳か為幹は無罪放免とされてしまったのでした。恐らく役人が賄賂をもらいでもしたのでしょう。
経済基盤はあっても、強力な後ろ楯を持たない惟通の遺族は、泣き寝入りを強いられたものと思われます。
■終わりに
以上、紫式部の異母弟・藤原惟通について、その生涯をたどりました。
紫式部との関係性が薄いため、おそらく大河ドラマ本編には登場しないでしょう。
でも、もしかしたらワンチャン出るかも……出てきたら面白いですね!
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