小売り関連業界の業績が明暗分かれている。低迷久しい百貨店が高額品の売り上げ好調もあって黒字転換が目立つ一方、スーパーは生活関連商品の値上がりで節約志向の逆風を受け業績が低迷している。

9月の全国百貨店売上高、前年同月比20.2%増...7か月連続プラス

各業態、各社の今期(2023年2月期)の中間連結決算(22年3~8月)をみてみよう。

百貨店は久々に明るい空気に包まれている。

日本百貨店協会(東京・中央)によると、2022年9月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比20.2%増と7か月連続のプラスになった。高額品の販売が引き続き堅調だったほか、外出や旅行機会の増加を受けて衣料品の販売も伸びているという。

こうした流れは22年8月中間決算に反映している。

高島屋は、売上高に当たる営業収益が2090億円(会計基準変更のため、単純比較で前期比39.8%減)、営業利益128億円(前年同期は20億円の赤字)、純利益は135億円(同43億円の赤字)、J・フロントリテイリングも売上収益が1691億円(前年同期比7.5%増)、営業利益が132億円(前期は13億円の赤字)、純利益が101億円(同19億円の赤字)となり、2社は営業・最終損益とも黒字転換を果たした。

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のそごう・西武も、営業赤字が前年同期の49億円から4億円に改善した。

3月期決算の三越伊勢丹HDの第1四半期(2022年4~6月期)をみると、売上高が1016億円(同14.7%増)、営業利益39億円(前年同期は60億円の赤字)、純利益は56億円(同86億円の赤字)と、はやり営業・最終損益が黒字転換している。

各百貨店とも、高所得者の消費に支えられており、高島屋では3~8月の高級ブランドの売り上げがコロナ前の2019年比で5割も増えたという。

さらに、10月11日から新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことで、インバウンド(訪日外国人)消費の回復も期待されるところ。

J・フロントリテイリングは22年9月~23年2月の免税売上高がコロナ前の約4割にあたる120億円に回復すると見込み、松屋も同じく19年の同期の25%前後まで戻るとみていて、「円安の局面で、インバウンドの購買意欲は高まる」(大手百貨店)と期待している。

仕入価格引き上げなど響いた「スーパー」、復調見られる「コンビニ」

一方で、百貨店以外の小売り業はどうか。

流通最大手のセブン&アイHDは、全体では営業収益が5兆6515億円(前年同期比55.0%増)、営業利益が2347億円(同26.1%増)、最終(当期)利益が1360億円(同27.8%増)と、過去最高を記録した。

これは、直接には米コンビニ大手を買収した効果が大きく、営業収益・営業利益をセグメント別にみると、国外コンビニがそれぞれ前年同期の約2倍と好調で、全体を押し上げた。セブン―イレブンの国内コンビニは0.2%増・2.7%増と復調の一方、イトーヨーカ堂などのスーパーは20.7%減・61.0%減と厳しかった。

同じく巨大グループのイオンも、営業収益が4兆4871億円、営業利益が958億円、最終(当期)利益が180億円。今期から会計基準を変更したが、単純比較すると、それぞれ前年同期比3.3%増、23.3%増、約4倍と全体に好調だ。

ただ、セグメント別では、総合スーパー(GMS)が営業収益1兆5988億円(同2.0%減)、営業損益は37億円の赤字(前年同期より123億円改善)と苦戦。

また、傘下の食品スーパーのユナイテッド・スーパーマーケット(US)HD(マルエツ、カスミなど)は営業収益が3531億円(会計基準変更のため、単純比較で前年同期比2.1%減)、営業利益が22億円(同57.8%減)、純利益が8億円(同71.3%減)と、減収減益だった。

イオングループでは、こうしたスーパーの不振を、ショッピングモール(営業利益16%増の230億円)、ドラッグストア(同6%増の235億円)などでカバーしたかたちだ。

食品スーパーのライフコーポレーションも、営業収益が3775億円(会計基準変更のため、単純比較で前年同期比2.5%減)、営業利益が89億円(同41.6%減)、純利益が64億円(同40.5%減)と、前記のUSHDと同様に厳しい数字だった。

スーパーは、仕入価格が引き上げられるなか、販売価格抑制に努めたが、来店客数増には結びつかず、電気料などのコスト上昇も吸収できなかったという点で、ほぼ共通する。

コンビニは、前記のセブン-イレブンのほか、ファミリーマートのコンビニ事業は営業収益が2134億円(前年同期比3%増)、本業のもうけを示す事業収益が384億円(微増)と、まずまず。

ローソンも営業収益が4835億円(前年同期比38.6%増)、営業利益が289億円(8.6%増)と好調(会計基準変更のため前期比はいずれも単純比較)で、国内店舗1店舗当たりの売上高(日販)が51.8万円(前年同期は49.7万円)と伸びた。

コンビニ各社は、原料価格の上昇などを受けプラーベートブランド(PB)商品を含め値上げをしたが、それほど大きな影響はなかったとしている。

原材料、エネルギー価格上昇への対応...問われる経営判断

このほか、アパレルは夏物の好調で収益が改善しているが、ホームセンターや外食などの他の業態を含め、小売り関係業界はいずれも、原材料やエネルギー価格の上昇を受け、商品価格の引き上げを考えざるを得ないのは共通している。

「値上げによる消費マインドの冷え込みがどの程度になるかを見極める必要がある」(アナリスト)のはもちろんだが、「消費者に受け入れられる商品価値を訴え、一定の値上げをして収益を確保していく視点も必要」(業界関係者)との指摘も出ている。

各社の経営判断が問われる局面が続く。(ジャーナリスト 済田経夫)