「忖度や公文書問題は集団的自衛権とすごく密接に関わってきた。それはたった今起きた問題ではない。
集団的自衛権について滔々とこう語るのは、政治評論家ではない。お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦(36)だ。中田が開設したYouTubeチャンネルが今、大きな話題を呼んでいる。
今年4月に開設した「中田敦彦のYouTube大学」。そこでは三島由紀夫や太宰治らが書いた名著の解説や、世界史・日本史の講義など、勉強に役立つ動画を毎日アップ。最近では、選挙や原子力発電問題といった経済や政治についても踏み込んでいる。10月に控えた消費税増税については「法人税が下がった分の収益と消費税を上げて上がった分の収益がほぼ一緒。つまり貧しい人達から取って、『大企業のみなさ~ん!』という大きな姿勢なんです」と切り込む姿勢を見せていた。
冒頭の発言は8月3日に公開された憲法改正について解説した「【政治】憲法改正問題(第9条)の本質に中田が切り込む!~核心編~(3)」のなかで語られたもの。これは池上彰氏(68)の著作『君たちの日本国憲法』をベースにしつつ、自由民主党が党是に掲げている憲法改正について、憲法の成り立ちから現在どのような議論がなされているかまで解説。そして12年の第二次安倍内閣以降、自民党が集団的自衛権の解釈を変えてきた事実などに触れつつ、昨年3月に同党が提出した案“緊急事態条項”の話題に。同党のホームページで公開されている、緊急事態条項の内容については以下の通り。
《第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる》
中田はこれを「災害が起きた、緊急的なことが起きた場合、内閣に全ての権利と権限が集中する。そういう条項」と解説。「一瞬聞くと“まぁそういうこともあるなぁ”みたいな感じでしょ。一瞬ね」と言いつつ、中田は歴史上でかつて緊急事態条項を悪用した人物をあげる。第二次世界大戦中にドイツでナチス党を率いたアドルフ・ヒトラーだ。
中田は「ヒトラーのナチス党はこの緊急事態条項というものを巧みに使って一気に独裁体制を作ったんです」と、歴史的な事実を説明。「ナチスとは言いませんよ。それは池上さんも言ってません」としつつも、「だけどそれを理解してちゃんとオッケー出すか出さないか。そこを国民わかってないと。気をつけてね、2018年3月だよ。最近の話だよ」と警鐘を鳴らしていた。
さらに、徴兵令にまで話はおよぶ。
《最近のYouTube大学【政治編】見てて思い知らされる、自分の無知っぷり。少しずつ勉強し始めてはいるけれど、もはやどこから始めるのが正解なのか迷走中。 政治も文学も全て歴史と深く関わってた。まずは歴史からが正解なのかな》
《正直かなり驚いた。あのオリラジの中田敦彦さんが、自民党憲法改悪草案、緊急事態条項のヤバさについて、独特のわかりやすさで語ってる。報ステ古舘さんの再来だ。徴兵令にまで触れてる》
しかし、その一方で批判する声も。ヒトラーが緊急事態条項を悪用したと説明した中田だが、正確には全権委任法と呼ばれる法律。
最後に「私はこの動画が公開できることを心から感謝している。“表現の自由”が今はあるから。あくまでも今は」と語り、動画を締めくくった中田。彼の心配は杞憂となるのか、果たして――。