2020年は人と人とのつながりを考えさせられる年でもあった。今年結婚を発表した芸能人の報告コメントからも、コロナ禍の影響により絆が深まった様子がうかがえる。

結婚コメントから見えてくるそのカップルの関係性などを、『不機嫌な妻 無関心な夫』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で夫婦関係に詳しい心理カウンセラー・五百田達成氏に聞いてみた。

まず、芸能界の結婚にはいくつか特徴があるという。

「一般社会と違って芸能界って特殊なんです。まず、職場内結婚が多い。あとは共稼ぎ。ひと昔前だったら芸能界にいるキラキラした2人が共稼ぎで、専業主婦がキラキラした2人に憧れる、というのが日本芸能界と庶民の関係だったんですけど、いまは庶民も共稼ぎ。そしてSNSを通じて芸能人と距離が近くなり、キラキラした特別な人という夢を抱かなくなりました」

芸能人も普通であることに好感が持たれる現在。その流れもあってか、以前のような金屏風をバックに芸能リポーターを揃えての派手な結婚会見というものを見なくなった。

「芸能人の結婚会見といえば『お互いなんと呼び合っているのですか?』とか芸能リポーターが聞いていましたけど、最近はFAXでお知らせして終わりというあっさりしたものが多い。そのFAXでのコメントも最近は生々しさがないですよね。炎上しないように練りに練って、最後には直筆署名というのが定型です」

ではさっそく今年結婚した芸能人の報告コメントを五百田氏に解説してもらおう。

松坂桃李(32)&戸田恵梨香(32)はプロ同士をアピール

12月10日に発表。

熱愛報道が全くなかった大物同士の結婚は多くの人を驚かせた。

“報道関係者の皆様

師走の候、皆様におかれましてはご清栄のこととお慶び申し上げます。

私たち、松坂桃李と戸田恵梨香は、このたび結婚いたしました事を、ご報告させていただきます。

これまで同世代の俳優仲間として、お互いに刺激し合いながら歩んでまいりました。

これからも、お互いに支え合い豊かな時間を共に積み重ねていきたいと思っております。

未だ未熟な二人ではございますが、今後ともご指導、ご鞭撻宜しくお願い致します。”

「マスコミ各社への公式コメントは連名で、SNSでは個人名義でそれぞれのファンへ報告していて丁寧。でも相手の印象や結婚に至った理由、具体的な“○○な家庭を築きたい”などの言及がないのは芸能記者たちになにも餌を与えていない感じです(笑)。“お互い”という言葉が2回使われていて、対等さがアピールされている気がします。SNSでも、松坂さんは『現場に立たせていただきました』、戸田さんは『役者として、より一層』と2人とも仕事に関する言葉が出ています。役者同士、プロの俳優同士の高め合う関係なんだというメッセージですよね」

■困難を乗り越える気満々の石原さとみ(33)

10月1日に同年代の一般男性との結婚を発表。お相手の、東大卒で年収5000万円というハイスペックぶりにも注目が集まった。

“御報告

平素より格別のお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。

私事で大変恐縮ではありますが、この度、かねてよりお付き合いさせて頂いています一般の方と結婚する運びとなりました。

お互いの理解を深めていく中で、彼となら様々な事を共有しながら、どんな困難も乗り越えていけると確信いたしました。

まだまだ未熟ですが、これからは二人で、大切なものを大切だと思える人生をともに歩んでいけたらと思います。

これまで私を応援し支えて頂きました皆様に心からの感謝をお伝えするとともに、1人の人間として女優としてより一層成長していきたいと思っています。

今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

最後に、皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。”

「石原さんのコメントからは、ビジョンを持っている感じがしますね。全体的に漢字が多いのも特徴です。特に、『お互いの理解を深めていく中で、彼となら様々な事を共有しながら、どんな困難も乗り越えていけると確信いたしました』という部分は硬くていいですね。相手の男性とは、戦友のような関係を築いているように思います。困難前提で、困難を乗り越えていく気満々ですから。

『大切なものを大切だと思える人生をともに歩んでいけたらと思います』や『一人の人間として女優としてより一層成長していきたいと思っています』なども、しっかり意思表示をしている。最後の結びも、硬くて企業の発表のようです(笑)」

■似た者同士でイマドキカップルな瀬戸康史(32)&山本美月(29)

8月7日に結婚を発表。書面と同時に、ツーショット写真も公開した。

“応援してくださっている皆様

関係者の皆様

私事で大変恐縮ですが、私共、瀬戸康史と山本美月はこの度結婚致しました事をご報告させて頂きます。

現在、このような状況で自分と向き合う時間が増え、その中でお互いに失いたくない、大切な存在なのだと確信しました。

共通の趣味や似た感覚を持つ私達なりの、優しさであふれた、穏やかな家庭を築いていきたいと思います。

これまで以上に仕事も邁進して参りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

最後に、新型コロナウイルスの感染拡大の終息、そして私達の故郷でもある、九州地方を含めた「令和2年7月豪雨」による被害の1日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。”

「写真が2人とも白のパンツスーツだったんですよね。そういう部分も今どきな印象を受けます。コメントにも、生の言葉が多いと感じます。『このような状況で自分と向き合う時間が増え、その中でお互いに失いたくない、大切な存在なのだと確信しました』とか。

自分たちが結婚に踏み切った理由がしっかり出ている。また、『共通の趣味や似た感覚を持つ私たちなりの、優しさであふれた、穏やかな家庭を築いていきたいと思います』という所信表明にも、具体的な情報が入っていて応援したい気持ちになります。最後にはコロナウイルス感染拡大や7月豪雨の被害への気遣いと、時事的なことにもふれています。全体的に好感がもてます」

■意思表示の少ない生田斗真(36)&清野菜名(26)

6月5日に結婚を発表。ドラマでの共演をきっかけに、約5年にわたり愛を育んできた。

“報道関係者の皆様

謹啓 初夏の候、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。

私共、生田斗真と清野菜名はこのたび結婚致しました事をご報告させて頂きます。

世界中が大変な状況になり、このような時に結婚をすべきか迷いもございましたが、お互いを支え合いながら共にこの危機を乗り越え、より一層俳優業に邁進して参りたいと決意致しました。

未だ未熟な二人ではございますが、今後ともご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

新型コロナウイルスの感染拡大が1日でも早く終息する事を、心よりお祈り申し上げます。

謹白”

「あまり本人たちの意思が出ていないコメントでしたね。

重箱の隅をつつくようですけど、特に『世界中が大変な状況になり、(中略)より一層俳優業に邁進して参りたいと決意致しました』という部分は、何を言っているのかがわかりづらいです。意思が出てないからマネージャーさんが書いたんじゃないの? と思ってしまう。古き良き伝達の形式美という印象も受けますが、結婚に至った中身のことなどを教えてくれず、お仕事感が強いですね」

形式などにも違いが出る芸能人の結婚報告コメント。当たり障りのないコメントをするか、カップルとしてしっかりと意思表示をするか、芸能人の個性が表われる場として今後も注目が集まる。

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