「ひとりが長かったせいか、長時間みんなでいると、逆にひとりになりたいと思ってまう(笑)」

そう話すのは、今年で芸能生活40周年のベテラン女性芸人で、最新著書『みんな、本当はおひとりさま』(幻冬舎)が発売中の久本雅美さん(63)。

「最近は、ひとりでゆっくり家のお風呂で朝ドラの『カムカムエヴリバディ』(NHK)を見ることにハマっています。

湯船につかる時間が15分ぐらいなんで、ちょうどよくて」(久本さん・以下同)

20~30代のころは、舞台が終われば舞台仲間の古田新太(56)や池田成志(59)らと毎晩、朝まで浴びるように酒を飲んでいたという。

「若いころ飲んでいた人たちとはめっきり飲む機会が減ってしまいましたが、今でも近所の友達や劇団の後輩とは飲んだりしています。昨日は舞台をやっていた富山県から帰ってきたあと、昼間に3時間ぐらい整体に行って、その後、家の近くの創作フレンチレストランで、近所の友達とご飯を食べました。自分が売れていないころから応援してくれている大切な人たちです」

気の置けない仲間とワイワイ飲んで笑って楽しんでいるのがいちばんストレスがたまらないし、寂しくないのだそう。

「でもそれがダメなんです。昔、(島田)紳助兄さんに言われたことがあって。『お前が結婚できないのは劇団の後輩がいることと、友達が多いせいや』って。要は周りを固めることで、ひとりでも満足できてしまってるんです。いわば“おひとりさま”の要塞ができあがってて……おかしな建物を建ててもうたな(笑)」

毎週『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)にも出演し、キレのあるコメントで盛り上げている久本さん。還暦を過ぎてもイキイキしている秘訣とは?

「人と会うことが私を元気にさせてくれます。誰かと会うのはエネルギーがいるけど、それ以上に自分もエネルギーをもらって帰る気がするんです。家で好きなことをしている人も、それはそれでいいと思います。

ただ、それだけじゃなく、誰かと会って何かをするということも大事じゃないかと」

■劇団仲間とのシェアハウスは夢かも

久本さん自身も、自分から友人を誘うようにしているという。

「私は『夏やな、ビール飲もか』『寒いな、鍋やろか』って声掛けますもん。あとはLINEで暑中見舞いを送ったり、年賀状書いたりと、何かとこっちから発信するように心がけています」

仲間のなかでも特に親交が深いのが「WAHAHA本舗」の柴田理恵さん(62)だ。

じつは以前、柴田さんにインタビューした際、「『WAHAHA本舗の老人ホーム』を作って劇団のみんなでそこに入りたい!」という話を伺った。

さらにその「老人ホーム」を「独身でお金持ちの久本さんに建ててほしい」と。そのことをぶつけてみるとーー。

「マジですか? 断ります(笑)。ただ、『シェアハウス』は夢見ます。気楽な人たちと一緒にいたいから。WAHAHAのメンバーは気が楽だけど後輩はどう思うかな。数十年後、70代の後輩たちが80代の私に『久本先輩のおむつを替えんと。誰が行くの?』なんてもめたりして(笑)」

■久本雅美「孤独死も腹をくくっています」

そうはいっても御年63歳。

老後への不安はないのだろうか。

「一人でいるときに突然倒れても、そうなったら、しゃあないでしょ。孤独死も腹をくくっているんです。ずっと独身だから、今では『ひとりで背中に湿布を貼る方法』まで身につけてしまいましたからね。『寂しいから』とか、『そばにいてもらったら安心』という理由だけでは結婚はできない。もし相手のことを本当に好きじゃなかったら『クチャクチャ食べて』とか『トイレの便座上げっぱなしや』とかストレスがたまるでしょ(笑)。尊敬と愛情があってこそ、その辺は乗り越えられると思うんです」

テレビ番組での“結婚したい”発言も多い久本さんだが、本心は同世代の女性や女性芸人の結婚の知らせを聞いても嫉妬することはないという。

「正直、今すぐ結婚したいという気持ちはありません。人と比べる必要もないと思っていますし……。だから先日、すみれさんの結婚を聞いたときも、素直に『うれしい! おめでとう!』という気持ちでいっぱいになりました。ただ、このまま結婚しないと自分がわがままになるのではという心配もあるんです。結婚すると、何でも思いどおりというわけにはいかないから、人としての器が大きくなりそう。

そこへの興味はあります(笑)」

久本さんの理想の結婚相手に変化はあったのだろうか?

「以前は年下の若いコが好きだったけど、今は落ち着きがあって、私の好きなようにさせてくれる人がいい。芸能界でいうと竹野内豊。あ、結局若いコや(笑)。ほかには、生活リズムが合う人がいいですね。私が『眠たいな』って言ったら向こうも『眠たいな』って返してくれるような。それを『え? 22時で寝るの? 嘘でしょ? まだまだ夜中まで遊ぼうよ!』って言われたら私は1カ月で死んじゃうからね(笑)」

■後輩にいじられる先輩でありたい

“おひとりさま”をめいっぱい満喫している久本さんに70代、80代の目標を聞いた。

「お仕事でいえば黒柳徹子さん。80歳を超えても自分の番組を持ち続けているのがすごい! この前も、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)でジャニーズの『なにわ男子』としゃべってましたよ。『誰か意見のある人は手を挙げて』って、挙手を促したりして(笑)」

プライベートでは、“後輩にいじられてみんなから愛されるかわいい女性”が理想だと話す。

「“おひとりさま”といっても人間ひとりで生きているわけではないので。どれだけ周りに支えてくれる人がいるかが大切。そんな宝のような人が来てくれる自分でありたい。

そう思っていれば、いつか竹野内豊が寄って来ると思います(笑)」

(取材・文:インタビューマン山下)

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