「近親者のみで葬儀を行うことができました。皆さんご協力ありがとうございました」
「寒い中、申し訳ございませんでした。
こう話したのは、ミュージカル女優・神田沙也加さん(享年35)の両親である神田正輝(71)と松田聖子(59)だ。12月18日、札幌市内のホテルから転落死した沙也加さん。正輝と聖子は21日、葬儀を終えたあと取材に応じ冒頭のようにコメント。そして、2人は亡き娘の骨壺と位牌を抱えていたーー。
‘86年10月1日、この世に生を受けた沙也加さん。しかし父の正輝は俳優、そして母の聖子はアイドルとして名を馳せていたため、生まれる前から沙也加さんの存在は日本中に知れ渡っていた。そして、誕生してからもその成長ぶりがメディアを通して伝えられていた。
そのため正輝は’16年8月、沙也加さんの「初めて話した言葉が『マチュコミ』だった」と本誌で明かしている。
「生まれたときから騒々しい環境で育った上に、小学校では“有名人夫婦の娘”というレッテルに悩んだといいます。ですが、沙也加さんは『常に冷静に』と決めていたそうです。
その後、ロサンゼルスの学校に通うことになると、クラスメイトは両親のことを気にしなかった。『神田沙也加という一人の人間として認めてもらえたことが嬉しかった』と回想していました」(スポーツ紙記者)
■17歳で訪れたミュージカル女優としての原点
’01年5月、14歳でSAYAKAとして正式にデビュー。
そして同作は沙也加さんにとって一つの転機であり、ミュージカル女優としての原点にもなったようだ。
「役柄はオーディションで決めることになっていたため、沙也加さんは『“使い物にならない”と考えたら亞門さんが落とすだろう』と思っていたそうです。そのころから“親の七光り”でなく、自分の実力で活躍していきたいと決意していたんです。ですから、役柄を勝ち取ったときは『私は私でいいんだ』と自信に繋がったといいます。
そしてこのことがキッカケとなり、ミュージカル女優を志すことに。『INTO THE WOODSがなければアナ雪もなかった』と語っていました」(前出・スポーツ紙記者)
■「舞台女優って呼ばれるようになってきたのが、すごく幸せ」
その後、’05年5月から一旦活動を休止することに。その理由について、沙也加さんはこう話している。
「(休止前に様々な分野で仕事をした)それを否定するつもりはない。でも、復帰する際に『周囲から見てベースがある人になりたい』と思ったんです」(「スポーツ報知」’10年1月4日)
そして’06年9月、19歳で本名の“神田沙也加”として再デビューを果たした。
「本名で活動するということは、“自分自身と向き合う作業”だと沙也加さんは語っていました。両親の名前や自分の環境と向き合いたかったといいます。
SAYAKAとして活動するうちに“七光り”とバッシングを受けることもありました。しかし、『自分やその環境を愛していきたい』との思いで名前を背負っていくことにしたそうです」(芸能関係者)
復帰作となった舞台『紫式部ものがたり』の会見で沙也加さんは、「両親の想いが詰まった名前で表に出るのは嬉しい」と笑顔を見せていた。さらに’07年5月に上演されたシェークスピアの作品『夏の夜の夢』には脇役で出演。当時、役柄を決めるオーディションに沙也加さんは「どんな役でもいい」との気持ちで臨んだと報じられていた。
さらに’08年7月には、「沙也加さんが一人暮らしを始めた」と本誌が報じている。このころから着々と、自身の道を歩み始めた沙也加さん。以降、舞台での場数をひたすらに踏み続けた。
そして’10年、SAYAKA時代から数えてデビュー10周年を迎えた。その記念インタビューで『最近、少しずつですけど“舞台女優”って呼ばれるようになってきたのが、すごく幸せ』(「スポーツ報知」’10年1月4日)とコメントしている。
■父とも母とも異なる、自分の道を沙也加さんは切り拓いた
さらに、’11年からは女優業と並行して声優学校へ。講師を務めた声優の速水奨(63)は’14年9月、『FLASH』で「アドバイスを絶対に聞き漏らさないようにしていた」「自分の思うようにセリフがいえないと悔しがる」と沙也加さんの勤勉ぶりを語っていた。
その甲斐あり、’12年7月にテレビアニメ『貧乏神が!』(テレビ東京系)で声優デビュー。そして、’14年3月にディズニー映画『アナと雪の女王』が公開された。
同作の日本版で沙也加さんは主人公のアナを好演し、作品は大ヒット。沙也加さんは『第65回紅白歌合戦』(NHK総合)にも出場し、英語版で姉のエルサを演じたイディナ・メンゼル(50)とのデュエットで劇中歌『生まれてはじめて』を披露した。
「’15年3月には『アナ雪』が高く評価され、『第9回声優アワード』主演女優賞を受賞。そして同月、映画のイベントでオスカー女優・メリル・ストリープ(72)の前で劇中歌を披露。すると『私の歌よりもずっといい』との賛辞を贈られました」(前出・芸能関係者)
父とも母とも異なる、自分の道を切り拓いてきた沙也加さん。その後も順調そのもので、’18年には『第43回菊田一夫演劇賞』を受賞。’19年には『アナ雪』の続編も公開され、そして今年ついにデビュー20周年を迎えた。
沙也加さんは先月、《今朝奇跡みたいに嬉しいことがあって、忘備録です。
そんなか訪れた突然の訃報。“七光り”の重圧を乗り越えてきた沙也加さんの歴史は、35年で幕を下ろすこととなった。