1月5日、国内最大級の野外音楽フェス「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」(以下、ロッキン)が今年から千葉県・千葉市蘇我スポーツ公園で開催されると発表された。

’20年、’21年は新型コロナの影響により開催中止とされたが、開催当初の’00年から’19年まで茨城県ひたちなか市・国営ひたち海浜公園で実施されてきたロッキン。

総合プロデューサーの渋谷陽一氏は公式サイトを通じて、会場変更の理由を次のように伝えている。

《国営ひたち海浜公園での開催は、公園の構造上、7万人収容のひとつの巨大ステージと、収容人数がその数分の一の複数のステージという形になります。7万人収容のステージから小さなステージへと人が流れていく形になります。必然的に入場規制や密が起き、万全の感染対策を行う事は困難です》

一方で千葉市蘇我スポーツ公園なら、“密を回避して野外フェスを開催できる構造や導線”だと判断し、会場に選んだという。ただ、《ひたちなかでのロック・イン・ジャパンへの思い入れは、僕は誰にも負けません》とも綴っており、《25周年、30周年といった年でのひたちなか開催を模索したいです》と意欲を示している。

「毎年ゴールデンウィークに行われる『JAPAN JAM』、年末に行われる『COUNTDOWN JAPAN』とともにロッキング・オン・ジャパンが主催するすべてのフェスが千葉県で開催されることとなりました。また、『サマーソニック』も今年8月の開催が発表されたばかり。国内の主なフェスが千葉県に集約されたことで、同県の観光事業もいっそう盛り上がるでしょう」(プロモーター関係者)

■信頼関係を揺るがした茨城県医師会の要請

2年連続して中止されたロッキンだが、昨年は国営ひたち海浜公園や地元自治体の茨城県、ひたちなか市と協議を重ねて開催の承認を得ていたという。しかし開催1カ月前になって、茨城県医師会の代表者より「要請書」を手渡されたことで中止を決断するに至ったと発表されたのだった。

「医師会の要請書には、『今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期を検討すること』『仮に開催する場合でも更なる入場制限措置等を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと』の2点が記されていました。

ですが要請書が出されたのは、フェスの開催まで残りわずか1カ月というタイミング。運営側は入念な感染対策で準備を進めてきましたが、求められていることが包括的だったこともあり、医師会が納得するような対策を講ずることは不可能と判断しました。

これは運営側との信頼関係を揺るがす大きな出来事でした」(前出・プロモーター関係者)

一方、同年5月に開催された『JAPAN JAM』は感染防止対策を徹底した上で開催。公演終了から20日後には、『JAPAN JAM』の観客からクラスター感染の発生はなかったと報告されていた。

■茨城県医師会が語った要請の意図

本誌はロッキンの開催中止が発表された昨年7月7日、茨城県医師会の事務局に要請書を出した意図について取材。すると事務局は、「『何がなんでも中止してください』ということではなく、開催する場合でも感染対策をしっかりとお願いしますといった要請です」と回答。

また茨城県医師会がロッキンの開催を知ったのは、「6月18日ごろ」だったという。「同じ主催者の『JAPAN JAM』では感染者を出しておらず、茨城県内では他のイベントも行われている。なぜこのタイミングで、ロッキンにだけ要請書を出したのか」との問いについては、次のように説明があった。

「ひたちなか市医師会の役員の先生から『フェスが開催されることになって、医療提供体制とかそういった点から不安が大きいんだよ』という話がありました。県内だけでなく県外からも人が来るので、その話を機に『これは一医師会の話だけではなく、県内の医師会全体に関わる問題だろう』となり、何回か会議も行い要請書を取りまとめました。あえてこのタイミングで要請した、というわけではないんです」

医師会からの要請があった経緯もあり、ネット上では《移転は当然ですね》や《やっぱりという感じ》といった声が上がっている。

ただNHKによれば、ロッキンの運営側は昨年12月に会場変更の方針を茨城県に伝えていたとのこと。県側は資金面や感染対策を含めた運営面での支援を申し出たが、運営側の判断は変わらなかったという。

また今回の移転と茨城県医師会との関連については、運営側は「今回の決定とは関係ない」と否定したと伝えられている。

ロッキンが千葉県に移転したことを受け、同県の熊谷俊人知事(43)はTwitter上で歓迎する姿勢を示している。

《千葉は春夏冬と多くのフェスが結集する音楽の街、県となりました。感染対策との両立はもとより、ひたちなか市、茨城県で長年紡がれてきた歴史・物語・文化へのリスペクトを忘れず、多くの方に愛してもらえるイベントとなるよう、千葉市とともにサポートしていきたいと思います》

茨城県の観光事業を支えていた一大フェスの移転。果たしてどのような影響が出てくるだろうか。

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