「クランクアップではほとんどのスタッフが泣いていましたが、小栗さんはグッと涙をこらえた様子で“おつかれさまでした、ありがとうございました”と声をかけていたそうです」(芸能関係者)
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が10月25日にクランクアップを迎えた。主演の小栗旬(39)は昨年6月から約1年5カ月にわたる北条義時としての日々を完走。
「小池栄子さん(41)も、『もう政子になれないのが悲しい』と泣いていたそう。コロナ禍で大々的な打ち上げができませんが、小池さんは仲のいい仕事仲間数人に“政子お疲れ会”を開いてもらったようです」(前出・芸能関係者)
そんななか、『鎌倉殿』制作統括の清水拓哉氏は撮り終えたばかりの最終回のラストシーンについて、次のようなコメントを出した。
「もはや小栗旬ではない北条義時の、手負いの獣のような姿に、見ていて窒息しそうになりました」
義時のただならぬ様子を感じさせるが―。最終回については、10月9日に放送された『鎌倉殿』のトーク特番で、脚本家の三谷幸喜(61)も次のように語っている。
「いろんな人の死に関わってきた彼(義時)が、最後に幸せに亡くなっていいんだろうかという思いがすごくある。彼なりの最期をきちんと描くべきではないかという気がしての、最終回です。大河ドラマではあんまりない主人公のラストシーンになった気がします」
これについては小栗も小池も、
「2人も“ヤバい”“すごい”と話していました。現場が震えるような、想像を超えた脚本だったようです」(NHK関係者)
■『吾妻鏡』では病死だが、毒殺説もある
時代劇研究家のペリー荻野さんは、過去2作の三谷の大河ドラマを例に、次のように分析する。
「『新選組!』(’04年)は香取慎吾さん演じる近藤勇が斬首されたところでスパッと終わりました。『真田丸』(’16年)も、基本的には、堺雅人さん演じる真田幸村が、願いかなわずに負けて亡くなる、というところが終わりです。
主人公が亡くなる瞬間が物語の完結だというのが、これまでの三谷さんの大河ドラマ。今回も義時の死で締めくくるのでしょう。
史上最悪ともいえそうな凄惨な最期も予感させる小栗義時だが、そもそも史実としての“義時の最期”はどうなっているのか。
東京大学史料編纂所の本郷和人教授が解説してくれた。
「歴史書である『吾妻鏡』には“義時は病気で亡くなった”とあるのです。畳の上で念仏を唱えながら亡くなったことになっています。
ただ、“毒殺説”はあります。藤原定家の『明月記』という日記に、ある僧侶が逮捕されたことが書かれていますが、彼が“義時の女房が義時を毒殺するときに使った毒で、俺を殺せばいいじゃないか”と言ったというんです」
“義時の女房”とは劇中で菊地凛子(41)が演じている、3番目の妻・のえ。本郷教授は続ける。
「歴史研究者であれば史料があって2つの説があったら、どちらの説が“正しい”かを考えます。けれどエンタメであれば、史料のどちらが“面白い”かという考え方をすることがありますよね。または、史料と全然違っていても面白ければいい、という考え方を三谷さんがする可能性もあるのではないかとも思います」
■三谷が出した“ヒント”に過熱する予想合戦
実は三谷は最終回について、もうひとつヒントを出している。9月8日付の朝日新聞夕刊の連載エッセイで、最終回の《参考になったのは、アガサ・クリスティーのある作品》と明かしているのだ。
これを受け、ネット上ではファンらが複数の説を繰り広げている。
「クリスティに語り手が犯人の作品があるため、語りを担当した長澤まさみさんが義時を殺すのでは、という説も。10月16日放送回で長澤さんが女中役でサプライズ出演したのが伏線だったのではないか、というのです。また、大勢を殺した人間が最期に自ら死を選ぶ作品があることから、義時の自害説なども出ています」(前出・スポーツ紙記者)
前出の本郷教授は、義時の親友なのか敵なのか、謎めいて描かれてきた三浦義村(山本耕史)の裏切りを予想する。
「義時を毒殺するなら、のえか、三浦義村のどちらかではないかというのが私の予想です。『新選組!』で山本耕史さんは土方歳三役でしたが、最後まで近藤勇との友情を貫くという描写がされていました。だから今回は反対に、友達のはずの義時を最後に裏切るんじゃないかと読んでいるんです」
また、あるテレビ局関係者は、こんな大胆な予想を……。
「アガサ・クリスティの有名作品をモチーフにした“全員犯人説”。生き残っている登場人物みんなから毒を盛られて殺されるのではないかという説です。なにしろ怪しい人物が多いんです。のえ、三浦義村のほか、りくを演じた宮沢りえさんが、最終回のパブリックビューイングのトークショーに出席することも発表され、“それでは最終回にも出演しているのでは”と言われています。彼らに義時が追い詰められるなんて最期だったら豪華です」
ペリーさんはこんな説も。
「ここまで後白河法皇(西田敏行)の生き霊が出たこともあったぐらいですから、最終回も何が出てきてもおかしくありません。呪詛のようなものによる可能性もありますし、過去に手をかけられた人の怨霊の可能性もある。必ずしも生きている人間が直接的に手を下すのではないのかもしれません」
予想は奇説珍説ありの百花繚乱だが、ペリーさんはこれぞ『鎌倉殿の13人』の醍醐味だと言う。
「三谷さんはミステリーの名人ですが、『鎌倉殿』もある意味、ミステリーですよね。“誰が主人公を殺すと思うか”と大河ドラマの最終回を予想して、こんなに大騒ぎしたことはかつてありません」
最終回の放送は12月18日。残り7回の放送回は、義時の最期を推理しながら楽しみたい。