12月6日、YouTubeが日本国内の年間ランキングを発表。「国内トップトレンド動画」や「国内トップ音楽動画」、「国内トップ登録者増加クリエイター」など6部門に分けて上位トップ10が選出された。
「『トップトレンド動画』では、HIKAKINが SEKAI NO OWARI のボーカル・Fukaseとコラボした『Habit』の再現MVが1位でした。また『トップ登録者増加クリエイター』『急成長クリエイター』部門では、料理や整体師、ゲーム制作など専門分野に特化したコンテンツも。YouTubeの調査によると、ユーザーの93%が『情報や知識を得るためにYouTubeを使用している』と回答したそうです。昨年もこうした傾向があり、“学び”のジャンルは成長を続けています」(WEBメディア記者)
多種多様なコンテンツが賑わういっぽう、最近ではトップYouTuberたちに“異変”が起きているという。解散や活動休止を発表する古参YouTuberも出てきている。
11月30日に「令和の虎CHANNEL」で公開された動画では、ゲスト出演したラファエル(登録者数181万人)が厳しい懐事情を明かす一幕があった。
広告収入と企業案件を主軸に収益を上げていくYouTuberのビジネスモデルは、「そのうち終わると思う」と予想したラファエル。実際に、「広告収入は10分の1になっています。多分ほとんどのYouTuberがそうだと思います」と告白。さらに最近の傾向として「専門YouTuberが多すぎて。(中略)“ホンモノ”が出てきてるんで。逆にいうと、専門に興味がある人しか見ないんで」と語った。
ヒカル(登録者数485万人)も12月7日に公開した動画で、総額1億円をかけた企画「下剋上」シリーズが6本とも100万回再生に届かず「思ったほどの成果は得られなかった」とコメント。“釣りタイトル”の動画を出すなどしたことから、登録者数も「5000人ほど減った」と漏らしていた。
■コムドット、昨年の新規登録者数は250万人も今年は85万人に激減
そんな彼らと同じように、苦戦を強いられているトップYouTuberが。18年に結成された、幼馴染5人組のYouTuberグループ・コムドット(登録者数385万人)。
「地元ノリを全国ノリに」をスローガンに掲げ、破竹の勢いでスターダムを駆け上がってきた。20年12月には、Twitterで《全YouTuberに告ぐ コムドットが通るから道をあけろ 俺らが日本を獲る》と宣戦布告をしたことも。
コムドットは毎年のように登録者数の目標を掲げて、着実にその数をクリアしてきた。19年に10万人、翌20年に50万人を達成。徐々に認知度を上げ、21年には年内目標の300万人を達成し、1年間で約250万人もの新規登録者を獲得したのだった。
同年4月にはアパレルブランド『Birdog』を立ち上げ、ファッション雑誌の表紙を飾った。さらにバラエティ番組やCMなど地上波にも進出し、同年12月に発売した初の写真集『TRACE』は男性歴代1位を記録するなどの快進撃を見せた。
ところが、そんなコムドットでさえも今年に入ってから登録者数の伸びが鈍化しているのだ。
危機に直面しているトップYouTuberたち。いったいYouTube界では、どのようなことが起きているのだろうか?
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「いま、『登録しているけど見ていない』という“幽霊登録者”が、結構な数に達しているのではないでしょうか」と推測し、その要因を次のように分析する(以下、カッコ内は井上氏)。
「ひとつは視聴者側の世代交代です。いまの若い世代に話を聞くと、TikTokやInstagramのショート動画などが主流になってきて、YouTubeによくある20~30分の動画は長くて見ていられないそうです。ですので、イベント的なことを行って『登録してね』と呼びかけても、届いてない層の方が増えているのかもしれません。
また、これまで“YouTube一択”だったのが、TikTokや漫画アプリ、Netflixなど選択肢が増えました。タイムパフォーマンスを重視する傾向にもありますし、逆に、ゆっくりドラマや映画を見たい人はNetflixで見るとか。暇つぶしでYouTubeを見ていた人たちが、他のコンテンツに移っていったのでしょう」
■「多くの人が納得するような一芸を持たないと難しい」
次に井上氏は、ファンとそれ以外の視聴者との“温度差”を指摘する。
「コムドットのような“地元ノリ”のグループのファンの人たちには、『自分たちが育てたYouTuber』といった意識が強くあるでしょう。そういったファンは親しみを持っていると思いますが、コムドットに思い入れがない人からすればさほど興味が湧きませんよね。
加えて、プロの進出が増えたことも影響しているようだ。
「いまはプロの芸人たちも、高いクオリティで動画配信を始めています。そうするとYouTuberの企画では、敵わない部分も出てくるでしょう。彼らは面白いだけでなく、ちゃんとオチをつけて、基本的には誰も傷つけないようにしています。でもYouTuberは時々、誰かを傷つけてしまうような発言で炎上していますよね。そういうところで差がついてしまい、『安心して見てられない』と感じる視聴者が増えているように思います。『素人だから面白い』という風潮はもう終わって、『やっぱりプロだよね』という風に潮目が変わってきたのではないでしょうか」
では、盛り返すためにはどのようなことが求められるだろうか?
「多くの人が『これは敵わないな』と、納得するような一芸を持たないと難しいと思います。見た目や雰囲気、企画だけではいずれ行き詰ってしまい、飽きられてしまうでしょう。私がテレビに出演してきた経験から申しますと、芸人やタレントさんたちは基本的に能力が高い人が多い。かなり反応が速かったり、驚くぐらい高く飛べたり、何かしらの芸を持っているんですね。私自身、感心させられることがよくありました」
07年6月に日本語版サービスが開始されたYouTube。
「YouTuberへのボーナスタイムが切れてしまったように思います。『いまはYouTuberの時代だね』と特別視され、多少のツメの甘さも見逃してもらっていた期間は終わりました。いまや、芸能人や様々なジャンルの専門家もチャンネルを持つようになり、プロとも比べられてしまう世界になっています」
最後に、井上氏はこう指摘する。
「新陳代謝が激しい世界ですので、どんな制作者も時代や視聴者の好みの変化を嗅ぎとって、やり方を変えていかないといけなかったと思います。当初の成功モデルで大きな収益もあったと思いますし、スタイルを変えなかった、あるいは先取りをしてこなかったツケがきているように感じます。キャッチアップして追いかけていくのか、それとも諦めるのかといった大きな岐路に立っているYouTuberは多いでしょう」
“冬の時代”を乗り越え、返り咲くYouTuberは果たしてーー。