ウエストランドが第18代王者を戴冠した『M-1グランプリ2022』(ABCテレビテレビ朝日系)。河本太(38)が出す「あるなしクイズ」のお題に対して、井口浩之(39)が矢継ぎ早に罵る“毒舌漫才”で挑み、史上最多となる7261組の頂点に立った。

最終決戦で披露したネタでは、「M-1にはあるけどR-1にはないもの」といった際どいお題が飛び出した。だが井口は、「夢」「希望」「大会の価値」「大会の規模」と叫び、ピン芸人の頂点を決める『R-1グランプリ』を全否定。さらに「M-1は決勝いくだけで人生変わるけど、R-1は何にも変わらないから、夢!」と言い切った。

“R-1には夢がない”と毒づいた井口に、歴代の『R-1』王者たちが相次いで反応。今年の優勝者・お見送り芸人しんいち(37)は、《R-1グランプリの悪口言われたー 悲しいーーー 言われるのってこんなに傷付くのか、、、ぼくが間違ってました すみませんでした!!!》とツイート。いっぽう18年の優勝者・濱田祐太郎(33)は、《俺の最終決戦の感想は、R-1チャンピオンにもM-1チャンピオンと同じぐらいの夢を見せてくれー。やばっ、最後に湿っぽいツイートしちゃった》と意味深な呟きをしていた。

さかのぼること01年に始まった『M-1』と、翌02年に始まった『R-1』。双方20年もの歴史を誇る賞レースだが、エントリー資格は『M-1』が結成15年以内で2人以上の漫才師で、『R-1』は芸歴10年以内のピン芸人。今年のエントリー数は『M-1』が7261組に対して、『R-1』は3199名と、「大会の規模」では倍ほどの差が見受けられる。

さらに『M-1』優勝者には、“特需オファー”も特徴的だろう。

「M-1王者は、優勝翌日からテレビやCMなどオファーが殺到するのが慣例になっています。

昨年優勝した錦鯉と同じように、ウエストランドも一夜明けた19日に『めざましテレビ』(フジテレビ系)や『ラヴィット!』(TBS系)など朝の情報番組をはしご出演。さらに同日朝の時点で100件以上もの出演依頼があったことを、彼らの所属事務所『タイタン』は明かしていました」(スポーツ紙記者)

■優勝後のレギュラー番組は意外にも少ない『R-1』王者たち

果たして井口が言うように、“R-1には夢がない”のか? 夢の定義は十人十色だが、ここではひとつの指標として、冠番組とレギュラー番組に絞って、両王者の“その後”を比較する。

なお、『M-1』は10年で一度終了しているので、復活後の15年以降を比較する。

まず、15年の『R-1』王者は、本田圭佑(36)のモノマネで知られるじゅんいちダビッドソン(47)。同年5月に、『じゅんいちダビッドソンのミラノで伸びシロ見つけました』(関西テレビ)が優勝特番として放送。その後、『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』(熊本朝日放送)や『アベマde週末ボートレース』(ABEMA)に不定期レギュラーとして出演。近年では趣味のキャンプを生かした『じゅんいちダビッドソンの下手なキャンプでごめんなさい』(GAORA SPORTS)が、20年8月に初の冠レギュラー番組として配信された。

同年の『M-1』王者はトレンディエンジェル。優勝後のレギュラー番組は、ラジオ『トレンディエンジェルのPePePeラジオ』(16年1月~21年9月、文化放送)や『NHK高校講座 コミュニケーション英語I』(17年度~21年度、NHK)、『中居くん決めて!』(18年10月~20年3月、TBS系)に留まった。

次に16年の『R-1』王者は、21年から大会審査員を務めるハリウッドザコシショウ(48)。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)や『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)など様々な人気バラエティ番組で活躍しているザコシが、意外にも初の地上波レギュラーは『凪咲とザコシ』(22年4月~同年9月、テレビ朝日系)だった。

そして、同年『M-1』王者に輝いたのは銀シャリ

翌17年に『PON!』(17年4月~18年9月、日本テレビ系)や『銀シャリの木曜The NIGHT』(17年7月、ABEMA)、『液体グルメバラエティー たれ』(17年7月~17年9月、テレビ東京系)など4本のレギュラー番組が。19年には関東初レギュラーとなる『銀シャリのシャリのおとも』(19年1月~同年3月、とちぎテレビ)や、ラジオ『銀シャリのほくほくマネーラジオ』(19年10月~20年12月、ニッポン放送)も。

■史上最年長王者のアキラ100%は俳優として躍進中

17年の『R-1』王者に輝いたのは、当時史上最年長とされたアキラ100%(48)。同年5月に放送された優勝記念特番『裸一貫!ニューヨークに行って参りました!』(フジテレビ系)の記者会見で、「仕事量は100倍になった」とうれしい悲鳴を上げていた。

優勝後の主なレギュラー番組は、『それって!?実際どうなの課』(19年9月~、中京テレビ)や『あっぱれ!KANAGAWA大行進』(21年4月~、テレビ神奈川)、『声技の英雄』(21年10月~、TOKYO MX)で、現在も出演中だ。

また、かねて俳優志望だったこともあり、現在は映画やドラマの分野で大躍進。『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(20年1月期、日本テレビ系)を皮切りに、『バベル九朔』(20年10月期、日本テレビ系)や『恋なんて、本気でやってどうするの?』(22年4月期、フジテレビ系)、『Sister』(22年10月期、日本テレビ系)の連続ドラマにレギュラー出演。17年以降、単発での出演も含むとドラマは15本以上に上り、映画出演は7本と俳優としても躍進していた。

そして同年の『M-1』王者は、ラストイヤーで栄冠を手にしたとろサーモン。優勝後の主なレギュラー番組は、MCを務めた『SMASH HIT』(18年2月~6月、ABEMA)と『競輪LIVE!チャリロトよしもと』(22年3月~6月、BSよしもと)。ピンでの出演が目立ち、現在もコンビが揃う機会は少ない印象だ。

次に18年の『R-1』王者は、視覚障害のある濱田祐太郎。

優勝後は主にラジオでのレギュラー番組が増加したようだ。現在も『金曜日のオンスト』(18年8月~、YES-fm)や『濱田祐太郎のぽこいちラジオ』(20年5月~、ラジオ関西)が放送中。すでに終了したものでは、『濱田祐太郎のひょうごユニバーサル通信』(20年4月~22年3月、ラジオ関西)があった。

また、杉咲花(25)主演のドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(21年10月期、日本テレビ系)では、解説コーナーの“案内人”として登場。当事者の視点から、視覚障害に関する豆知識を紹介し話題を呼んだ。

同年の『M-1』では霜降り明星が王者に。当時、史上最年少コンビとしてエントリー数4640組の頂点に立ち、“お笑い第7世代”のブームを巻き起こした。優勝後は初のキー局冠レギュラー番組『霜降りバラエティ』(19年4月~21年9月、テレビ朝日系)をはじめ、『シェアハウス Bダッシュ』(19年4月~10月、東海テレビ)や『乃木坂46のザ・ドリームバイト!』(19年4月~22年3月、フジテレビ系)など10本以上の番組を抱えた。そして、ラジオ『霜降り明星のオールナイトニッポン』(19年4月~、ニッポン放送)もスタート。現在は『霜降り明星のあてみなげ』(19年4月~、静岡朝日テレビ)など、レギュラー番組5本とラジオ2本に出演中だ。

■両大会で栄冠を手にした粗品と野田クリスタル

そんな霜降り明星の快進撃は止まらず、19年の『R-1』で当時史上最年少の粗品(29)が王者に輝いた。優勝後は『親のおカネ、子知らず』(20年2月、TBS系)や『ローランド先生』(20年4月、フジテレビ系)など、単発番組でのMCが目立った。

レギュラーでは『歌カツ!~歌うま中高生応援プロジェクト~』(20年10月~21年3月、テレビ朝日系)と、現在も放送中の『有吉の世界同時中継 ~今、そっちってどうなってますか?~』(21年10月~、テレ東系)に留まった。

いっぽう、同年の『M-1』ではミルクボーイが優勝。17年11月に「天王寺区住みます芸人」に選出されているため、優勝後も活動は関西中心のようだ。すでに終了した番組では、ゴールデン帯初レギュラーとなった『これって私だけ?』(20年7月~21年1月、朝日放送)と『チャリンジャーMAX』(22年8月~9月、テレビ大阪)の2本。

現在は『ミルクボーイの伝説少年』(21年1月5日~、eo光チャンネル)の他、『よんチャンTV』(21年3月~、毎日放送)や『2時45分からはスローでイージーなルーティーンで』(21年4月~、関西テレビ)など関西圏で4本のレギュラー番組を抱えている。ラジオでは、『ミルクボーイの煩悩の塊』(20年3月~)と『ミルクボーイの火曜日やないか!』(21年9月~、ともにABCラジオ)に出演中。

次に20年の『R-1』王者は、マヂカルラブリーの野田クリスタル(36)。史上初となる『M-1』『キングオブコント』『R-1』のファイナリストが、2532人の頂点に立った。さらに同年の『M-1』では、マヂカルラブリーが優勝するといった快挙も。

野田はピンとして、『野田レーザーの逆算』(21年10月~22年9月、テレビ朝日系)でカズレーザー(38)とMCを担当。ゲームへの造詣も深く、独学でプログラミングを習得して手がけた「野田ゲー」は、翌21年4月にNintendo Switchから「スーパー野田ゲーPARTY」として発売された。

コンビ初の冠レギュラー番組は、『マヂカルクリエイターズ』(21年3月~6月、22年1月~2月、テレビ東京系)だった。

現在は『お尋ねギルドロップス』(21年4月~、BSフジ)や『それゆけ!大宮セブン』(22年3月~、テレビ埼玉・BSよしもと)などレギュラー5本が放送中。ラジオも『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0(ZERO)』(21年4月~、ニッポン放送)に出演中だ。

■昨年の王者・錦鯉のレギュラー番組は現在2本だけ

21年の『R-1』王者は、ゆりやんレトリィバァ(32)。初代王者のだいたひかる(47)以来となる女芸人として頂点に立った。優勝前から数々のバラエティ番組で活躍する人気者のゆりやんだが、優勝後のレギュラー番組は『2時45分からはスローでイージーなルーティーンで』(21年4月~、関西テレビ)と、現在も出演中の『Doki Doki! NHKワールド JAPAN』(21年3月~、NHK)。女優としての活躍も目覚ましく、ドラマ『ドラゴン桜』(21年4月期)や『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(22年4月期、ともにTBS系)の話題作に出演。23年には、ゆりやんが主演するNetflixドラマ『極悪女王』も配信を控えている。

そして同年の『M-1』優勝者は、2年連続で決勝進出を果たした錦鯉。当時50歳で最年長王者となった長谷川雅紀(51)は号泣し、渡辺隆(46)と抱き合いながら歓喜した。優勝後初となった冠レギュラー番組は、『錦鯉の泳いでいくゼ!』(22年1~3月、朝日放送)。現在は、特番がレギュラー化した『錦鯉が行く!のりのり散歩』(22年4月~、北海道テレビ)とラジオ『錦鯉の人生五十年』(20年5月~、お笑いラジオアプリGERA)の2本だった。

そして最後は、22年の『R-1』王者であるお見送り芸人しんいち。

優勝後に始まったレギュラー番組はまだないようだが、『紅白歌ネタグランプリ』(NHK)や『笑って年越し!世代対決 昭和芸人VS平成・令和芸人』(日本テレビ系)など数々の年末年始特番に引っぱりだこのようだ。

結果として『R-1』と『M-1』の両大会を制覇した粗品と野田クリスタルが、現時点でのレギュラー番組数が最多となった。『M-1』に優勝したことで“夢を掴んだ”かたちとなったウエストランドは、歴代王者以上の活躍ぶりを見せてくれるだろうか。

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