「R-1には夢があるんですよ!」
3月9日、ピン芸日本一決定戦『R-1グランプリ2024』(フジテレビ系)が生放送され、史上最多となる5457人のエントリーから、街裏ぴんく(39)が優勝。22代目の王座と賞金500万円を手に入れた。
「今回の『R-1』はエントリー資格が変更され、芸歴制限が撤廃されました。そのため、 “ホラ漫談”という話芸で芸人仲間からかねて評判の高かった街裏さんが選ばれたのでしょう」(演芸ライター)
本誌は昨年6月、街裏に、彼のリアルな半生について話を聞いている。R-1優勝を機に、再編集して緊急公開する――。
■デビュー当初は“ぼやき芸”だったが、東京ではウケず…
「素直に自信がつきましたね。色んな人がいる大会で、今までの人生の中でも優勝できるってなかなかない経験だったので」
こう語るのは、お笑い芸人・街裏ぴんく。ファンタジックな“ホラ漫談”でファンを増やし、22年に芸歴11年以上のピン芸日本一決定戦「Be-1グランプリ」で頂点に輝いた(以下、カッコ内は街裏)。
大阪で活動していたコンビ解散後、街裏がファンタジックな“ホラ漫談”を始めたのは’08年。当初は実際の出来事をベースに捲し立てるという“ぼやき芸”だったが、現在のスタイルを確立するまでは試行錯誤の日々があったという。
「ぼやき芸は大阪ではウケていたんですが、’12年に上京してからは全然ウケなかったんです。落ち込んでいた時に、『浅草リトルシアター』がエントリー代なしでも1日3、4回出演できると知って出始めました。その時に漫談以外やりたいことを全部捨てたんですね。
浅草の舞台以外に月20本ものライブをこなし、ストイックに芸を追求していた’14年ごろに転機が訪れる。
「月20本やってるライブに『Aマッソ』が面識のない状態で見に来て、僕も彼女たちの存在を知ってるから『なんでAマッソ来てんねん!』って驚いて……。それから’15年に入って少し経った頃、Aマッソの主催ライブ『バスク』に誘ってもらったんですよね。彼女たちは僕がどんな漫談をやるのかを見に来て、その上でライブに呼んでくれたんです。
200本中にあるファンタジー漫談のなかから、お客さんに『どれが面白かったですか?』と感想を聞いて統計を取っていたんです。その統計で一番評価が高かった且つ、自分がやりたいネタとして、『ホイップクリーム』っていう漫談を選びました。それを『バスク』で披露したら、人生で一番ウケたんですよ! 自分の芸風という意味では、この時が本当に転機ですね。『ファンタジー漫談でイケるぞ!』って自信がついて、『それしかやらん、それを追求する』って決意しました」
■ユニットを組んで「M-1」に挑戦も「やっぱり自分はピン芸人なんだな」
しかし、’08年から毎年エントリーし続けてきた「R-1」では苦戦が続いていた。
「毎月20本のライブをやっていた’14年は、2回戦落ちでした。
’21年の「R-1」の出場資格変更を受けて、同年には元「ジャリズム」で現在は本誌記者としても活動するインタビューマン山下氏(54)とユニットを組み、「M-1グランプリ」にも挑んだが、思うように爆発を起こせなかったという。しかし、この経験によって、ピンで活動することの意義に改めて気づくことになったようだ。
「やっぱり自分はピン芸人なんだなって思いましたね。1人で何もかも考えて、1人でしゃべって、スベるもウケるも全部1人がいいなって思いました。横に人がいないからコンビネーションを見せなくていい分、気を使わずにアドリブも言える。思いついちゃったら言える。それでスベるもウケるも自分、というのが楽しくてしゃあないですわ。僕は漫談が天職です。
■「深夜の4時半くらいに僕の番組ができたら、もう死んでもいい(笑)」
他の芸人と比較してもハイペースに独演会を行うなど、精力的に芸を磨いてきた街裏。当時、本人は手応えについてこう語っていた。
「色んな種類の漫談を作ることによって、どんどん成長していってると思うんです。自分でも驚いてますね、ファンタジーの1人しゃべりでここまで色んな種類のネタが作れたっていうのは驕りですけど。やり始めた時は、ここまでできるとは思ってなかったかもしれません。よくないところを削ぎ落とし続けてるから、進化してる。円を描きながらどんどん上にあがっていってるイメージです」
そんな街裏に「もっとも影響を受けた芸人は?」と尋ねると、「ダウンタウン」という答えが。
「『ガキの使い』のハガキトークというコーナーで、視聴者が投稿した無茶振りに対して松本さんが嘘で話を作っていく。それを浜田さんがツッコんでいくのが好きでした。録画したビデオを夜通し一人暮らしの家で見て、寝る時も流してましたね。2人のあの感じ、ネタの内容、全て含めて大好きで。
最後に、今後については「漫談でやってきたい。絶対いけると思ってるんで深夜の4時半くらいに僕の番組ができたら、もう死んでもいい(笑)」と語っていた街裏。この時の予感を見事、現実のものとした街裏の時代はすぐそこまで来ている――。