「ふとしたときにというよりも、いつも、いつも思い出していますよ。これだってね、父が使っていた鏡台を、僕が譲り受けたものなんだから。
東京・歌舞伎座の楽屋でのこと。歌舞伎俳優・中村七之助(33)は、しみじみとした口調でこう言うと、鏡台の縁をそっとなでた。中村勘九郎(35)、中村七之助兄弟の父で、人気俳優だった十八代目中村勘三郎さん(享年57)。勘三郎さんが多くのファンに惜しまれつつ、帰らぬ人となったのは、’12年12月5日のことだった。
「あの日からちょうど4年ですよね。でも4年たったいまでも、毎日、舞台に立つ前には『お父さん、お願いします』と、欠かさず心の中で言っています。生前の父はいつも『気持ちだよ、気持ちで演じるんだよ、芝居はうまい下手じゃない、気持ちがいちばん大事なんだと』って言っていました。その言葉は、いまも僕の心に焼き付いています。気持ちで演じる−−。父が残してくれた言葉は、僕たち兄弟はもちろんですが、きっとあの子たちにも受け継がれていくはずです」
来年2月、歌舞伎座公演『猿若祭二月大歌舞伎』の『門出二人桃太郎』で、勘九郎の2人の息子・波野七緒八くん(5)、波野哲之くん(3)が、それぞれ「三代目中村勘太郎」「二代目中村長三郎」を名乗り、そろって初舞台を踏む。2月の舞台に向け、七緒八くんと哲之くんも、徐々に稽古を始めている。
「兄と僕も30年前に、2人と同じ年齢、同じ演目で初舞台を踏んでるんです。
’17年の抱負を尋ねると「詳しくは言えないんですけど、いろんな新しいことにチャレンジできそうで。楽しみな一年になると思う」と、語った七之助。その「新しいこと」には、ひょっとして結婚も含まれるのだろうか?
「う~ん、それはないかな。『来年、身を固めます』って言ったら、きっと『女性自身』さん的にはいい記事になるんでしょうけど、申し訳ありません(苦笑)。生前の父が『ブラジル人と結婚しろ!』って言ってたことがあります。なんでかって?きっと目が大きなかわいい孫が生まれるとか、その程度のことだと思いますが(笑)。でもね、ちょっと真面目な顔で、こんなふうにも言ってたんです。