連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)に出演する高嶋政宏が、実在の陸軍人である大山巌役を威厳たっぷりダイナミックに演じている。

60歳の“変態紳士”、38年ぶり朝ドラでの威厳がすごい。初期...の画像はこちら >>
 本作は高嶋にとって、38年ぶりに出演する連続テレビ小説だが、彼の存在感と役柄が本当によく合っている。


 ヤクザ映画俳優としての初期から「変態道」を極める現在まで興味深いキャリアを築いてきた。そんな魅力を、“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。

38年の叡知を結集した存在感

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『連続テレビ小説 風、薫る Part2』(NHK出版)
 高嶋政宏の演技は、がっちりしたダイナミックな体つきに支えられ、いつ見ても雄大で、そこはかとない安心感がある。それでいてエキセントリックで、どこか繊細な印象も与えることもあり、見る者をまったく飽きさせない。

 見上愛と上坂樹里によるW主演作『風、薫る』は、高嶋にとって実に38年ぶりの連続テレビ小説出演ということになるが、そこには38年の叡知を結集した存在感がある。高嶋が演じるのは、明治政府を支えた実在の陸軍人・大山巌。

 名前からしてがっちりしている。西郷隆盛と血縁がある従兄弟だったと聞けば、なおさら威厳がある。陸軍卿、参謀総長、陸軍大臣を歴任し、元帥だった1904年には日露戦争の遼陽の会戦で満州軍を率いる司令官になった。

 その経歴、戦歴も威厳に溢れ、役柄と高嶋の存在感がピッタリ呼応している。

物語が動き始めた初登場場面

 38年ぶりの出演だからといって、気張るような素振りも全然ない。むしろユーモラスな雰囲気を醸し、歴史上の大人物像をゆったりしなやかに体現している。

 1882年から物語が始まる、本作初登場場面は、第1週第5回。陸軍卿時代である。


 研ナオコによるナレーションによって物語が展開することを示した後、主人公・一ノ瀬りんが歩く田舎道に馬車がやってくる。乗車しているのは巌とその妻・大山捨松(多部未華子)。捨松もまた実在の人物で、津田梅子らとともに岩倉使節団のメンバーとなった。巌とは年の差婚夫婦だった。

 自分のことを公然と「巌」と呼び捨てにする妻の話に耳を傾ける巌が、馬車にゆらゆら。上手に位置する巌役の高嶋が見切れるかどうかという画面上、口を開いた巌が「こげぇ~アメリカのような牧場ができちょる」と雄弁に語りはじめる瞬間には、確かに物語が動き始めたぞという躍動感が漲る。

ヤクザ映画俳優としてのキャリア初期から「変態道」を極めた現在

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『悲しい色やねん』(東映)
 高嶋が38年前に出演した連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』が放送された1988年、あるヤクザ映画が公開された。仲村トオルとのW主演、森田芳光監督作『悲しい色やねん』がそれだ。

 仲村演じる夕張組の息子・夕張トオルと高嶋演じる三池組幹部・桐山恵は同級生だが、覇権を争う一触即発の組同士という関係性を描く。

 夕張組の組長・夕張寿美雄を演じる高島忠夫は、高嶋政宏の父でもある。桐山が登場するのは序盤が過ぎたあたりで、夕張組のカジノに伝言を携えてやってくる。ドスが効いた黒目と白目の動きに鉄砲玉のような危うさが宿り、20代前半だった高嶋の野性的魅力がぎらぎらだった。


 さらに「極妻」シリーズ第5作『新極道の妻たち』(1991年)や東映任侠映画の大物プロデューサー・俊藤浩滋が手掛けた主演映画『残侠』(1999年)など、ヤクザ映画俳優としてキャリア初期を築いた。

 そこから現在は何といっても2018年に出版したエッセイ『変態紳士』によって、SMや美食などを求道する変態キャラをダイナミックに確立している。

 独自の「変態道」を極める高嶋政宏だからこそ、こちらも彼の演技を偏愛したくなるのだろうか?

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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