近年の夏は「暑い」で片づけられるレベルではなく、2025年5~9月における熱中症の救急搬送人員は、全国で10万510人と統計開始以来で過去最多を記録した。
子どもの高さで測定すると「大人+7度」にも
特に心配なのが、子どものいる家庭だろう。子どもは背が低いため、同じ気温でも、大人より地面からの照り返しをより強く受ける。サントリーなどがウェザーマップと行った検証では、子どもの高さで測定すると、大人より気温が約7度高くなる調査結果も報告された。同社はこの子ども特有の暑熱環境を「こども気温」と称し熱中症対策についての啓蒙活動を行っている。
2025年5~9月の東京の気象データを参照すると、「小学生にとっての酷暑日」(こども気温で酷暑日相当となる33度以上の日)は50日以上を数えたという。「今日は最高気温が30度だからまだ大丈夫かな」といった保護者の感覚も、子どもの熱中症リスクを高める落とし穴になりかねないのだ。
教育の現場でも、長く続く猛暑により、学校生活について見直しが迫られている。
「今は暑すぎて、夏休み中のプールも開催できないんです。運動会を5月に開催しても、児童や保護者から『暑すぎる』という声が届く。行事もカリキュラムも、いろいろ見直しが必要だと感じています」
そう打ち明けるのは、江戸川区立篠崎第四小学校の金井乃理子先生だ。同校では、夏場は冷房の効いた教室で過ごす時間が増え、子どもたちも外遊びを控えるのが常識となりつつあるそうだ。
それでも避けられないのが、登下校や夏休み期間の外出だろう。
子ども用の日傘が、熱中症予防の一策に
これから夏本番を迎える中、子どもたちへの注意喚起のため、江戸川区立篠崎第四小学校では、熱中症対策を学ぶ課外授業が行われた。サントリー「GREEN DA・KA・RA」主催「こども気温 教室」と題して、小学2年生を対象に、熱中症対策に関する啓発活動が開かれた。
「こども気温 教室」ではまず、児童ら80人近くに「こまめに水分を取る」「暑さから逃げる」「体を冷やす」といった対策が伝えられるとともに、「GREEN DA・KA・RA」や「ビオレ 子どもも使える冷タオル」の対策グッズが配られた。
その後、児童たちは屋外に移動し、日傘のさし方を学んだ。「周りをよく見てから開く」「透明窓を進行方向に向ける」「友達と少し離れて使う」といったルールを教わりながら、傘を広げた子どもたちからは「涼しい!」「まぶしくない!」という声が聞こえてきた。
日傘といえば「女性が美容のために使うもの」というイメージが強いはずだ。
ところが近年は、イオンやハンズといった実店舗や、AmazonなどのECサイトで、「子ども用の日傘」が販売されるようになっているのだ。環境省の発表によれば、直射日光を避けることで体感温度は約3~7度下がると言われており、より暑い環境に置かれる子どもこそ、日傘という選択肢が注目されつつある。
「子ども用の日傘」の先駆けとして知られ、今回の「こども気温 教室」で日傘の使い方をレクチャーしたのが、傘・レイングッズメーカーの小川だ。同社が展開する子ども日傘ブランド「kukka hippo(クッカヒッポ)」は、累計販売本数10万本を超え、熱中症対策の一つとして徐々に浸透してきた。
子どもに日傘を持たせている家庭は2割弱
小川の営業部である小川太志さんは、子どもの安全面を担保しているのもポイントだと話す。
「日傘を深くさしても前が見えるよう、一部を透明窓にし、進行方向の視界を確保。傘の骨にはグラスファイバー(ガラス繊維を樹脂で固めた弾力性のある素材)を採用しており、鉄製の骨より軽く、曲がっても折れにくい構造になっています」
前述の通り、子ども用の日傘は徐々に店頭に並び始めてはいるものの、まだ世間一般的に普及しているとは言いづらいのが現状だ。サントリーの調査では、約8割の保護者が「日傘は子どもの熱中症対策に有効」と答えた一方で、実際に子どもへ持たせている家庭は2割弱にとどまる結果も出ている。
世間的にも、まだ子どもに持たせる発想がなかったり、視界が遮られることなどから安全面での不安を抱えていたり、どこで子ども用の日傘を購入できるかわからなかったりするのが実情だろう。
保護者のリアルな声も
「幼稚園から小学校に上がって環境が変わったなか、いろいろと暑さ対策をしないといけないと考えていた。これまでは暑くなったら室内で過ごすよう伝えるか、こまめに飲み物を与えるぐらいしかできていなかったが、どうしても外に出ないといけない機会もある。
その一方で懸念していたのが、日傘を使うことで荷物がかさばることや、置き忘れてしまうといったポイントだ。
「傘といえば雨の日に使うもの」という常識が根付いているからこそ、夏場に日傘をさす習慣をどう定着させるかは、これからの課題とも言えそうだ。
猛暑が当たり前になった今、暑さから身を守る方法は、一つでも多いほうが安心だ。
水分補給を行う、日なたを避ける、帽子をかぶる、日傘をさす……。これまで当たり前ではなかった「日傘」という選択肢も含め、子どもが安全に夏を過ごすために、選択肢を一つでも増やしておくことは大事だろう。
<取材・文/佐藤隼秀>
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