(台北中央社)台湾の頼清徳(らいせいとく)政権は、2024年から社会全体の強靭(きょうじん)性を強化し、国家が緊急事態や自然災害に直面した際、政府と社会が通常の働きを維持できるようにする取り組みを進めている。これについて11日、政治団体が台北市内で主催した関連の国際フォーラムに出席した武居智久・元海上幕僚長と岩田清文・元陸上幕僚長に話を聞いた。


▽武居智久・元海上幕僚長 台湾の取り組み「日本は学ぶところある」

武居氏は、台湾が進める全社会防衛強靱性強化について、中国の侵攻を想定した軍事演習「漢光演習」などに組み合わせて実施していることなどに触れ、「熱心にやっている。日本は学ぶところがたくさんある」と語った。

台湾ではエネルギー確保や災害救助、予備役の動員などを一体的に考えているとした上で、台湾有事が日本に波及した場合を想定すると、「(日本も)社会の強靭性(強化)は考えていかなければならない段階にある」と述べた。

▽「台湾は脅威の正確な判断が必要」

台湾では国産潜水艦の試作艦が建造され、海軍への引き渡しに向けた試験が行われているが、予定は大きく遅れている。38年までに7隻を建造する計画だが、武居氏は、脅威が迫った場合、大型で時間のかかる潜水艦建造を一時的にやめ、即応性の高い装備に投資するだろうとの見方を示す。その上で、脅威を正確に判断し、防衛に充てるリソースを再配分することが必要になってくると思うと語った。

また中国は台湾侵攻に向け、警戒監視や指揮統制の強化、航空機の製造や船舶の建造に努力しているとし、台湾もこれに対抗するため、国防予算案を立法院(国会)で早期に通過させる必要があるとの認識を示した。

▽岩田清文・元陸上幕僚長 国際連携強化の重要性強調

岩田氏は、台湾の社会防衛強靱性強化の取り組みについて、非常に重要で、ロシアによるウクライナ侵攻の実態についてもよく分析していると語る。現在の戦争は、戦場の兵士だけでなく、後方地域の都市部、工場、火力発電所、水源地など国家全体が攻撃を受け、「国家総力戦になっている」と指摘。「消耗戦の時代になっている時に、どうやって(戦争を)止めるかというと、社会全体の強靭性を増すこと」だとし、「非常に敬服する」と評価した。

また台湾が米国と15年に立ち上げた「グローバル協力訓練枠組み」(GCTF)に触れ、台湾は高度な専門知識を世界と共有するプラットフォームとして米国、日本、オーストラリア、カナダとサイバーや医療、災害といった分野で準同盟的なネットワークを構築していることは素晴らしいことだと述べた。

中東情勢の悪化に伴い、シーレーン確保の重要性がより高まったことについては、今後南シナ海が中国の影響で封鎖された場合の準備をすると同時に、マラッカ海峡など中国が必要とする航路を米国に要請するなどして封鎖する抑止の方法を考える必要があると指摘。
中国が主張する海上の防衛ライン「第1列島線」の国々のネットワークづくりの重要性も強調した。

▽「台湾の国土や地形に合わせた兵器体制が必要」

陸上自衛隊が熊本に25式地対艦誘導弾を配備したことについて岩田氏は、2022年に岸田政権が策定した国家安全保障戦略、国家防衛戦略などに基づくもので、独自に反撃力を持つことで日本の抑止力を高めることが目的だと説明。東アジアの抑止力向上にもつながるとの認識を示した。

ロシアによるウクライナ侵攻ではドローンの活躍が目覚ましい一方で、台湾は現在、M1A2T「エイブラムス」戦車を米国から調達し、配備を進めている。このことについては、地上戦では小銃を持った歩兵が立つ場所が国境線だとしてその存在の重要性を強調した上で、戦車は歩兵を支援するものだと説明。ドローンの性能や効果を認めつつも、「最終的に陣地を確保して取り返すには戦車が必要」だとした。

ただ、「一つの兵器さえあれば勝てるというものではない」とし「総合的に台湾の国土や地形に合わせた兵器体系が必要だ」と語った。

(齊藤啓介)
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