恐竜が絶滅する前から地球は不安定な状態だった。貝殻の分析で海の異変が明らかに(米研究)


 恐竜は、現生鳥類につながる種を除いて約6550万年前に突如絶滅したと言われている。これは、5回目に起きた大量絶滅によるものだ。
その原因は、小惑星の衝突したとする隕石説が最も有力で、これにより、種のレベルで最大約75%の生物が絶滅したと言われている。

 だが仮にこの隕石説が正しかったとしても、その前から地球はすでに不安定だったという。

 南極の貝殻から得られた新たなる科学的知見によれば、大量絶滅が起きるよりも前に、海では二酸化炭素が急激に増加しており、その影響で貝殻の化学組成が大きく変化したことが明らかになったそうだ。
【恐竜が絶滅する前に海で二酸化炭素が急増】

 アメリカ・ノースウェスタン大学の研究グループは、K-Pg境界(6550万年前の中生代と新生代の境目。恐竜などの大量絶滅が起きた)から得られた貝の化石を調べ、そこに含まれるカルシウム同位体の組成を測定した。

 すると、5回目の大量絶滅が起きるよりも前に、海では二酸化炭素が急激に増加していたことが明らかとなった。
その影響で貝殻の化学組成が大きく変化していたのだ。

【デカン・トラップの噴火が原因である可能性】

 海にこのような炭素の流入があった原因は、デカン・トラップ(インド、デカン高原にある地球上でもっとも広範な火山活動の跡)で長く続いた噴火である可能性が濃厚だとのこと。

 隕石が衝突する前より、デカン・トラップからは膨大な量の二酸化炭素が大気に放出されていた。そして、二酸化炭素の濃度が高まったことで海が酸性化し、そこで暮らしていた生き物に直接的な影響を与えたようだ。

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Planet Labs, Inc / wikimedia commons
【貝の化石に着目した海洋分析】

 これまでにもデカン・トラップの噴火が大量絶滅にどの程度の影響を及ぼしたのかを調べた研究はあったが、それらは主に堆積物を調査対象としたものだった。

 しかし今回の研究では、貝の化石に着目し、さらに最新の分析技術を採用することで、より詳細な海の化学組成が調べられた。


 南極シーモア島西部にあるロペス・デ・ベルトダノ層(保存状態のいい化石が豊富なことで知られる)で採取された貝に含まれるカルシウム同位体の分析からは、それに急激な変化が起きていたことが判明したという。

 その一方で、絶滅が起きた時代の地層であってもそれを超えるような変化は起きていなかった。

 「貝は海水の化学組成に応じてあっという間に成長・変化します。貝の寿命は短いので、貝殻ひとつひとつが海洋の化学組成を記録したスナップ写真のようなものです」とベンジャミン・リンツマイヤー氏は話す。

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northwestern
 貝はほとんどが炭酸カルシウムで構成されているが、これは水に含まれる二酸化炭素によって溶けてしまう。

 貝が形成される段階なら、それを溶かすまでもなく、二酸化炭素は貝殻の組成に影響を与えたことだろう。


【温故知新で読み解く地球温暖化の未来】

 今、私たちは地球温暖化の時代を生きているが、過去に地球が極端な温暖化と二酸化炭素の増加にどのように反応したのか理解すれば、未来の姿を予測するヒントになるだろうという。

 地球システムは二酸化炭素の大量かつ急激な増加に敏感に反応する。少なくとも今地球は、何らかのシグナルを発しているのかもしれない。

 既に5度の大量絶滅があった。これは地球が、地球内生命体に課した淘汰と言ってしまえばそれまでだが、6度目は大量絶滅は、既にはじまっていると試算する研究者もいる。

 長い年月をかけながらじわじわと全種の約4分の3以上が絶滅していくのか、あるいは5度目の時のように何らかのアクシデントで突如絶滅していくのか、それはまだわからない。


 この研究は『Geology』(10月28日付)に掲載された。

References:Earth was stressed before dinosaur extinction - Northwestern Now/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:恐竜が絶滅する前から地球は不安定な状態だった。貝殻の分析で海の異変が明らかに(米研究) http://karapaia.com/archives/52285675.html