免疫細胞は周りの仲間の様子を見てから外敵に攻撃を仕掛けるかどうかを決めていた(米研究)

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 何か大切な決断を下さなければならない時どうするか?信頼のおける身近な人に相談するという人も多いだろう。

 実は、体の中にある免疫細胞もこれと似たようなことを行っているようだ。
細菌などの外敵の脅威に対してどの程度の反応をするべきか決める際に、仲間の細胞に相談しているのだという。
【適切な免疫反応が大切な理由】

 菌に感染した際に生じる腫れや痛みは、免疫細胞が外敵を撃退するべく現場へ向かうことでも引き起こされている。

 こうした反応をいつ、そしてどの程度発動させるべきかきちんと把握することは、人体がきちんと機能するためにはきわめて重要なことだ。

 ちょっとした擦り傷で侵入した菌に対して、生命を脅かすほどの大怪我と同じくらいの免疫反応を発動させていたのでは、私たちは何もできなくなってしまう。過剰な防御反応は守るべき人体にかえって負担をかけることになる。

 例えばアレルギーは、無害であるはずの異物(アレルゲン)に対して免疫反応が起こってしまうやっかいなものだ。


【免疫細胞は周囲の仲間の様子を確認して対応レベルを決める】

 米ノースウェスタン大学の研究グループが『Nature Communications』(2月13日付)に掲載した研究によると、免疫細胞はこうした判断をたった1人で下したりはせず、周囲にいる仲間の警戒レベルをまずは確認するのだそうだ。

 「一様に活性化するわけではなく、どのくらい細胞を活性化させるか集団で決定し、危険なほどの過剰反応になってしまうリスクを回避しています」と、研究チームのジョシュア・レオナルド教授は声明で述べている。

 免疫系の中で最初に反応する「マクロファージ」は、細菌が作り出す「リポ多糖体(LPS)」という化学物質を外敵侵入のサインと認識している。これを検出したマクロファージは、一連のプロセスを経て、「腫瘍壊死因子(TNF)」などの分子を放出する。

 さまざまな化学的環境に遭遇したマクロファージの振る舞いを観察した今回の研究では、その行動がリポ多糖体だけではなく、周辺にいるマクロファージが作り出している腫瘍壊死因子によっても左右されていることを明らかにしている。

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NORTHWESTERN UNIVERSITY
【マクロファージは事前の状況を覚えている】

 このシステムの優れているところは、何らかの仕組みによってマクロファージが周囲にいる仲間の数を覚えていられる点だ。


 腫瘍壊死因子が中レベルで存在する場合、それは警戒レベルの高い仲間が少数いる状況と、多少の危険を感じた仲間がたくさんいる状況の、どちらも考えられるだろう。

 この2つの状況を区別するために、細菌が侵入したサインであるリポ多糖体が検出される前、周囲に仲間がどのくらい密集していたのかをマクロファージは記憶できるようなのだ。

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【細菌とマクロファージに共通点?】

 細菌は、他の細菌が放出した分子を検出し、生物膜の形成などの活動を行うために十分な仲間がいるかどうかを把握する「菌体密度感知機構」という仕組みを持っているが、マクロファージの一連のプロセスもこれに通じるところがあると、研究は述べている。

 なお、研究グループによると、直前の状況を覚えておくために、マクロファージは未知の媒介物を使っているに違いないそうだ。

 もしそれを見つけることができれば、自己免疫疾患(免疫が守るべき正常な細胞に攻撃を仕掛けてしまう病気)を治療する際のターゲットにできるかもしれないとのことだ。

References:eurekalert./ written by hiroching / edited by parumo

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