それ何製?バクテリア製。細菌で作ったかっこいいサングラスが開発される
image credit:Cinzia Ferrari

 分解が困難なプラスチック製品削減など、世界が持続可能な開発目標SDGsに向かう近年、イタリアのバイオデザイン研究者がプロジェクトの一環で開発した「バクテリア製サングラス」が脚光を浴びている。

 斬新な形状、味があるこの緑のサングラスはなんと細菌に属する藻類「シアノバクテリア(藍藻)」が作った素材でできているのだ。


 フレームの型にバクテリアが作った材料を入れると、各々に成長していきフレームが完成していくため、この世に一つとして同じ形のものはないという。

 貝殻や真珠や歯など、生物がミネラル(無機物)を形成する作用「バイオミネラリゼーション」技術に着目した次世代プロジェクト「CyanoFabbrica(シアノファブリカ)」にせまってみよう。

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CyanoFabbrica from cinzia ferrari on Vimeo.

シアノバクテリアを使った新プロジェクトCyanoFabbrica(シアノファブリカ) イタリア出身の研究者シンツィア・フェラーリさんのプロジェクトCyanoFabbrica(シアノファブリカ)の目的は、シアノバクテリアのバイオミネラリゼーションを用いて新たな「バイオファブリケーション」戦略を打ち立てることだ。

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 バイオファブリケーションとは、生体や生物学的を意味する「バイオ」と、製造や組み立てを意味する「ファブリケーション」を合わせた造語で、生物学的な材料で生物学的な生産物を作る技術を指す。

 彼女のプロジェクトは、そのバイオファブリケーションの工程に環境負荷を相殺する配慮が組み込まれており、できあがった製品は使い捨てでなく、古くなれば材料となり再び製品として生まれ変わるようになっている。古代の地球に酸素をもたらし生き延びた細菌シアノバクテリア シアノバクテリア(藍藻)はこの星に古くから存在する細菌の一種で、およそ20億~30億年前の地球に初めて現れた酸素発生型光合成生物と考えられている。


 光合成を行い酸素を発生させる新システムにより、地球に酸素をもたらしながら過去5回にわたる大量絶滅を生き延びたシアノバクテリアは現在、ほぼすべての生息地に存在する。シアノバクテリアの痕跡は世界最古の化石ストロマトライト 従来にない能力で過酷な環境を乗り越えてきたシアノバクテリアの痕跡は、世界最古の化石といわれる「ストロマトライト」からもうかがえる。

 貝殻や真珠や歯など、生物がミネラル(無機物)を形成する作用をバイオミネラリゼーションと呼ぶが、藍藻類と堆積物から形成されたストロマトライトは、バイオミネラリゼーションの象徴になっている。シアノバクテリアのバイオミネラリゼーションでサングラスを 2021年6月に米マサチューセッツ州でこのプロジェクトを発表したフェラーリさんによると、このプロジェクトのヒントは米コロラド大学ボルダー校の研究だった。

 その研究では、シアノバクテリアのバイオミネラリゼーションで頑丈なレンガができることを実証していた。

 そこからシアノバクテリア製の原料を使うサングラス作りを思いついたのだ。


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 なおフレームにみられる波打つような形状は、原料の作り手であるバクテリアの成長パターンを表している。

 フェラーリさん自身が生きたバクテリアを顕微鏡で観察し、独自の構造を形成する過程でみられる特徴をデザインの一部に取り入れているのだ。

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本システムはシアノバクテリアとその生態が基本的な役割を果たします。

シアノバクテリアが基質に結合する過程を利用するため、フレームデザインの一部はシアノバクテリア任せ。つまり仕上がりに2つと同じものはなく、世界で一つだけの製品になります。


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 なおシアノバクテリアが使われてるのはテンプルやフレームだけでなく、レンズの着色にシアノバクテリアの青い色素フィコシアニンを使っている。


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細菌が作る原料がファッション業界 細菌が作る素材でできた唯一無二のサングラス。独特な質感もユニークで爽やかで涼し気な色もおしゃれだ。

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 近ごろ環境への負担の軽減が最重要課題といわれるファッション業界でも、こうした原料の登場でより時代に沿った製品が叶うかも。今後どんなものが生まれるのか楽しみだな。

References:cinziaferrariなど /written by D/ edited by parumo

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