澤野弘之の軌跡がここに――。尊敬するASKAも登場した“澤野...の画像はこちら >>

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作曲家・澤野弘之によるナンバリングライブシリーズ“LIVE [nZk]”の最新公演、“澤野弘之 LIVE [nZk]008”が 6月2日、東京・NHKホールにて開催された。“LIVE [nZk]”シリーズとしては2022年に東京国際フォーラムにて開催された“LIVE [nZk]007”以来2年ぶり。

脇を固めるお馴染みのミュージシャン陣と、彼のルーツにあるASKAを含む、同じく彼の楽曲を彩ってきたボーカリスト陣を迎えたこの日。澤野曰く“この日だけのスペシャル”な音楽たちが会場を包み込むなか、彼の歴史そのものが透けて見えたかのような壮大なステージの模様をお届けしよう。

PHOTOGRAPHY BY 西槇太一
TEXT BY 澄川龍一

様々な表現を見せながら展開されていく大スケールのパフォーマンス

2年ぶりとなる“LIVE [nZk]”シリーズの会場となった東京・NHKホール。そのステージ上は、“LIVE [nZk]008”をイメージしたロゴのバックドロップを中央に配置して、足場のような格子が設置されているインダストリアルなイメージだ。また、この時点でドラムセットなどがステージの高いところに設置されているのがわかることから、バンドメンバーの立ち位置も前後左右だけではなく高さも加わった、より立体的なステージが予想される。そんな、開演前からどこかスケールの大きいライブとなる期待感が高まるなか、会場が暗転し、『青の祓魔師』シリーズより「Battle Scars」のイントロダクションが鳴り響くなか、バンドメンバーが入場。上段の下手から飯室 博(gt)、藤崎誠人(dr)、田辺トシノ(b)、椿本匡賜(gt)が立ち、下手側のステージより少し高いところに室屋光一郎(vn)、そしてバックドロップの下にあるピアノの前に、大歓声のなか澤野弘之がゆっくりと歩いてくる。時折客席に向かって拍手を煽る仕草をしながらピアノの前に座ると、この日最初のボーカリストであるLaco(EOW)が登場。そこにバンドサウンドが加わり、Lacoがラップを刻み出す。上下左右に配置されたバンドという光景も相まって、実にスケール感の大きいオープニングだ。オリジナルの「Battle Scars」ではDavid Whitakerがマイクを握っていたこの曲だが、Lacoの熱量の高い、そして艶っぽさも感じさせるフレーズも負けず劣らずかっこいい。のちのMCでLacoは「生まれて初めてのラップ」と語っていたが、初めてとは思えない、むしろこの先ほかの楽曲でも聴いてみたくなるほど板についていた。そんなラップパートのあとは彼女らしい伸びやかなフェイクを聴かせた、室屋のバイオリンの硬質なフレーズに導かれて「Trollz」へと続く。

バイオリンとギターのヒリヒリするような演奏に加えて藤崎の重くタイトなドラムのなか、これぞLacoといえるコシの強いボーカルで会場の熱量をグイグイと上げていく。次の「Never Stop」でも重くグルービーな歌唱を聴かせながら、ステージを動き回って盛り上げていく。ここ最近の澤野のライブではオープニングを任されることの多いLacoだが、トップバッターとして盤石のパフォーマンスを見せていった。

ここで最初のMCに入り、澤野が観客にご挨拶。「“LIVE [nZk]007”から2年ぶりの開催になるんですけど、今回だからこそ集まってこられたボーカリストたちと、今回ならではのプログラムを考えていますので、最初から最後まで皆さんと楽しんでいこうと思います」とライブの開幕を宣言したあとは、Lacoも「めちゃくちゃ楽しかったです!」と充実した表情を見せる。そしてリラックスしたMCのあとは、引き続きLacoを迎えて「FAKEit」を披露。ミステリアスなイントロのあとの歌い出し、ここでのLacoのボーカルの“掴み”はやはりさすが。ドスンとしたヘビネスのなかで躍動感溢れる歌唱を聴かせていった。

曲が終わってLacoがステージを去ると、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』より「TRACER」のイントロが演奏され、mpiとBenjaminの2人が登場。軽快なサウンドの中で2人の熱いハーモニーを聴かせたかと思えば、そのまま「BITE DOWN」へと繋がり、今度はミクスチャーテイストなロックサウンドに合わせてBenjaminのラップを聴かすなど、さすがの変幻自在なパフォーマンスを聴かせていく。続けてTVアニメ『群青のファンファーレ』の「RUSH」では疾走感溢れるサウンドに2人のボーカルが清涼感たっぷりに聴かれ、冒頭の重々しい展開から一転して、軽快なセットとなっていった。そんな2人と澤野によるMCを挟み、澤野が「せっかくこの2人がいるならこの曲を」と言って始まったのは、映画『プロメア』からの大アンセム「Inferno」だ。

冒頭の2人の歌い出しで大歓声と共に観客が一斉に手を挙げる光景は圧巻で、観客が大きく手を振るなかで最後まで熱く、そして爽やかなステージが展開されていった。

常連から初出場、久々の顔と“LIVE [nZk]”を彩る歌声たち

続いて、「DOA」のヘビーなイントロが鳴らされると、観客は待ってましたとばかりに歓声と拍手を送る。ここでもちろんボーカルを務めるのは、久々のライブ登場となるAimee Blackschlegerだ。アグレッシブなギターを中心にとした爆発的なサウンドのなか、Aimeeの力強く伸びやかなボーカルは健在で、重厚な世界観を展開していく。そして室屋がステージに復帰しての「Light your heart up」では、その室屋のバイオリンを含むアコースティカルなサウンドと共に、Aimeeの優しいボーカルが聴かれていく。改めて幅広く豊かな表現力にうっとりとしていると、MCではAimeeが「私のお気に入りの曲」と紹介して、これまた懐かしいTVアニメ『ギルティクラウン』からの「Release My Soul」へ。アコースティックギターのアルペジオと澄み切ったボーカルが会場を包む。やはり彼女は澤野弘之の音楽に欠かせない重要な声であることを示す、素晴らしいパフォーマンスとなった。

「Release My Soul」の澄んだ空気感の余韻のなかで、続いて披露されたのは「DARK ARIA 」。バイオリンと田辺によるコントラバスの重厚な弦のアンサンブルが流れるなか、ステージ上にはふわっとした衣装のXAIが登場。まるで妖精のような佇まいのXAIが美しくもハリのある歌唱を響かせる。続いては一転してダンサブルなテイストの「LEMONADE」へ。ここではグルービーな演奏に合わせてXAIもまたビートに的確なアプローチを見せながら、躍動感溢れる歌声を響かせていった。

MCではかねてからの澤野の音楽のファンでもあり、初めての“LIVE [nZk]”参戦ということで、「オタク大勝利」と喜びを見せるXAI。澤野ファンでもあり『ガンダム』好きでもあるという彼女が続いて披露したのは、実物大ユニコーンガンダム立像のテーマソングでもある「Cage」。バイオリンが活きるアコースティックな序盤のアレンジ、ドラマチックに展開していくにつれ高揚していくXAIの表現力――大きな感動を生むシーンとなった。

ステージもいよいよ終盤。続いてはmizuki(UNIDOTS)の登場だ。彼女が歌唱を担当する楽曲の中でもすっかりここ最近のお馴染みとなった「Avid」は、まさにmizukiらしい澄み切った歌声がもの悲しく響く、絶品のパフォーマンス。そうした独特の浮遊感のまま「EGO」へ。mizukiのボーカルもさることながら、室屋のバイオリンと椿本のギターが空間的に鳴る、素晴らしい演奏となっていた。改めてだが、この日のサウンドと澤野と共に支えた演奏陣のパフォーマンスは本当に素晴らしく、“LIVE [nZk]007”以来2年ぶりに参加となった室屋のストリングスも加わり、様々な楽曲のテイストに応じた演奏を全身で感じることができた。続くMCでは、今年でSawanoHiroyuki[nZk]の活動が10周年を迎えるに触れ、10年以上前の始まりの楽曲「A/Z」「aLIEz」を歌ったmizukiと活動を振り返り、2人らしい穏やかな会話が続く。そんな一場面を経て次に披露されたのは、およそ10年前リリースしたTVアニメ『アルドノア・ゼロ』から「Keep on keeping on」へ。時折ステージを動きながら、また全身を使ってアグレッシブな歌唱を聴かせていった。

澤野弘之に多大な影響を与えたASKAとの、運命の共演

続いて、澤野のピアノ演奏をバックに登場したのはSennaRin。ピアノの演奏のみで「IVORY TOWER」を披露する。ピアノのみというサウンドのなかで息遣いまで伝わる繊細な歌唱を聴かせたあとは、一気に現代的なビートを獲得した「NOD」へ。まさにSennaRinの真骨頂といったばかりに、躍動感溢れるボーカルを披露。そのまま、先日リリースされたばかりの1stフルアルバム『ADRENA』から「mЁЯR0r」が披露されると、その躍動的かつエモーショナルなボーカルに拍車がかかる。まさに自身の多彩な表現力が乗り切った、現在の充実ぶりを示すようなパフォーマンスだ。メンバー紹介を含むMCを挟んだあとは、再び『ADRENA』から「Reaper」へ。ドラマチックなサウンドと張り詰めた緊張感を保つようなスリリングな歌声が実にマッチしていた。そして「Reaper」を披露し、再度澤野のピアノ演奏と共に「Call of Silence」を1コーラス披露する。彼女の多彩さ、そして充実ぶりがよくわかる、澤野プロデュースによる彼女の今後のソロキャリアにも期待をしたくなるステージとなった。

SennaRinがステージを去り、澤野はそのままピアノ演奏を続行。やがて聴こえてきたのは、彼が劇伴を手がけたNHKの連続テレビ小説「まれ」のメインテーマだ。この日の会場がNHKと隣接するNHKホールだからか、あるいはドラマの舞台となった能登への想いを馳せているのか――。

そこから『機動戦士ガンダムUC』より「ON YOUR MARK」を含むエモーショナルなピアノ演奏が続き、終盤にあの印象的なピアノイントロが流れる。澤野の楽曲ではない、しかし誰もが知るそのイントロに歓声と拍手が響く。1991年にリリースされたCHAGE & ASKAの「SAY YES」だ。そしてその音に乗せて、下手からゆっくりとステージに歩いてくる人物。“LIVE [nZk]008”、この日最後のボーカリストであるASKAだ。ASKAがステージ中央に、少し奥の澤野と影を重ねるように立つ。澤野がこれまで幾度となく語ってきた、最も影響を受けたアーティストであるASKAと、しかも自身のステージで共演を果たすという歴史的瞬間がついに訪れたのだ。そのなかで披露する楽曲はもちろん、澤野とASKAが初めてコラボを果たした楽曲「地球という名の都」だ。雄大なサウンドのなか、それと同じくあるいはそれ以上のスケールでもって響き渡るASKAの歌声。いや、声以上の、何かオーラのようなものも含む存在感がステージを支配する。そのなかでASKAはステージを動き回りながら観客に語りかけるように歌う。繰り返しになるが、紛れもなく歴史的な瞬間だ。
そして最後のサビの前、暗転する会場の中でASKAと澤野にだけピンスポットが当たった光景は、世界でたった2人だけが音楽を奏でているかのような、まるで夢かのような美しさがあった。

そのまま続いたのは、驚きの「EVERCHiLD」。歌唱も躍動感をかね備えたASKAのバージョンもまたいい。日本のポップスシーンを彩ってきたボーカリストの系譜を見つつ、その間に澤野がいるというのも感慨深いものがある。そして注目のMC……というところだったのだが、ASKAは突然「EVERCHiLD」の終盤のフレーズが上手くいかなくて悔しかったのでやり直したいと澤野に申し出る。そこで急遽終盤のパートだけを演奏し直すというハプニング(?)も。ASKA自身も「自分のライブではよくやる」と語っていたが、澤野のファンには実に新鮮であり、かつリビングレジェンドの気さくな一面に触れた瞬間でもあった。「小学校の頃にASKAさんの音楽と出会って、音楽を目指すようになった」というとおり、澤野もステージ上でASKAとそんなやりとりができて実に嬉しそう。そして最後の曲は自身の楽曲ではなく、ASKAの曲をカバーすると告げる。これまでの音楽人生の中で多大な影響を受け、かつ自身の活動の指針にもなった、SawanoHiroyuki[nZk]の2ndアルバム『VV-ALK』のタイトルのモチーフとなった、CHAGE & ASKAの1989年リリースの大ヒット曲「WALK」である。この曲をあえて澤野のライブの最後に披露すること。また往年の名曲を澤野のアレンジで披露すること。ASKAもその実力を認めるSennaRinがコーラスで参加すること。そして何よりそれをASKA本人が歌うこと……と、様々なエモーションが重なったカバーとなったこの曲。オリジナルの印象的なフレーズを大事にしながら澤野らしく躍動感と愛に満ちたアレンジで、ASKAもお馴染みのマイクスタンドを前に体を動かしながら歌う姿は、聴き馴染みがある歌であるのに何かとてつもないものを観ている感もあった。“澤野弘之 LIVE [nZk]008”は、そんな温かくて優しい、それでいて圧倒的なスケールで迫る感動的なフィナーレとなった。

澤野弘之のディスコグラフィという点を人で繋いで、それが様々な時間軸の中で結んでいくとてつもなく広いパノラマ。“LIVE [nZk]008”はそんなスケールの大きさを感じさせるものだった。彼の音楽を彩る多くのミュージシャンたちのなかでも、お馴染みの顔から久々にステージを共にする人、自身が手がける未来ある才能、そして自分自身を形成した偉大な人。観客を含む多くの人々が、澤野弘之を中心に広大なパノラマを描いている。改めて、彼が作り上げる音楽にはこれだけ多くの人々が引き寄せられて生まれているのだと実感した。そして“LIVE [nZk]008”というパノラマはまた1つの大きな点となり、この先の彼の作品やライブへと繋がっていくのだ。

<セットリスト>
[Introduction] Battle Scars/Vo. Laco
01. Trollz/Vo. Laco
02. Never Stop/Vo. Laco
03. FAKEit/Vo. Laco
04. TRACER ~ BITE DOWN/Vo. Benjamin&mpi
05. RUSH/Vo. Benjamin&mpi
06. Inferno/Vo. Benjamin&mpi
07. DOA/Vo. Aimee Blackschleger
08. Light your heart up/Vo. Aimee Blackschleger
09. Release My Soul/Vo. Aimee Blackschleger
10. DARK ARIA /Vo. XAI
11. LEMONADE/Vo. XAI
12. Cage/Vo. XAI
13. Avid/Vo. mizuki
14. EGO/Vo. mizuki
15. Keep on keeping on/Vo. mizuki
16. IVORY TOWER ~ NOD Vo. SennaRin
17. mЁЯR0r/Vo. SennaRin
18. Reaper ~ Call of Silence/Vo. SennaRin
19. 地球という名の都/Vo. ASKA
20. EVERCHiLD/Vo. ASKA
21. WALK/Vo. ASKA

●リリース情報
SawanoHiroyuki[nZk] 12th Single
「LEveL」
発売中

購入リンクはこちら
https://nzk.lnk.to/LEveL_

【通常盤(CD)】
品番:VVCL-2409
価格:¥1,430(税込)

<CD>
01.LEveL by SawanoHiroyuki[nZk]:TOMORROW X TOGETHER
02.DARK ARIA  by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
03.LEveL (TV size)
04.LEveL -English ver.- (TV size)
05.LEveL (instrumental)

【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VVCL-2410~2411
価格:¥1,870(税込)
※TVアニメ『俺だけレベルアップな件』描きおろしイラストデジパック仕様

<CD>
01.LEveL by SawanoHiroyuki[nZk]:TOMORROW X TOGETHER
02.DARK ARIA  by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
03.LEveL (TV size)
04.LEveL -English ver.- (TV size)
05.LEveL (instrumental)

<Blu-ray>
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』ノンクレジットオープニングムービー

関連リンク

澤野弘之オフィシャルサイト
http://www.sawanohiroyuki.com/

SawanoHiroyuki[nZk] オフィシャルサイト
http://www.sh-nzk.net/

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