初のソロアルバム『bouquet』の発売を控えるGARNiDELiAのコンポーザー・tokuが、同作のリリースを記念し6月6日にBillboard Live YOKOHAMAにてスペシャルライブ“toku×鈴木このみ×やなぎなぎ Special Live「bouquet」”を開催した。アルバムに参加した10名のゲストボーカリストのうち、鈴木このみ、やなぎなぎを迎え、昼夜2公演が行われた本ライブより、夜公演のレポートをお届けする。


会場での有観客公演とオンライン配信のハイブリッド形式で行われた今回のライブ。会場のBillboard Live YOKOHAMAは、食事をしながら音楽を楽しむことのできるライブレストランで、そのラグジュアリーな雰囲気は、10人の女性ボーカリストを花に見立てて制作された楽曲を束ねたアルバム『bouquet』の世界観にもピッタリと言えるだろう。会場の照明が暗転し、tokuサウンドには欠かせない星が流れるようなシンセ音をあしらったSEが流れ出すと、toku(key)をはじめとしたバンドメンバーがステージに登壇。梶原健生(g)、セキタヒロシ(b)、早川誠一郎(ds)という、GARNiDELiAのライブでもお馴染みの面々だ。

そしてバンドが1曲目のイントロを奏で始めると、この日の一人目の歌い手、鈴木このみが凛とした足取りで登場。黒を基調としたドレス衣装、両サイドに花を飾ったようなお洒落なヘアアレンジで、いつも以上に大人っぽく見える。彼女が1曲目に選んだのは、自身がリン役の声優として主演したTVアニメ『LOST SONG』のOPテーマ「歌えばそこに君がいるから」。鈴木が畑 亜貴との共作で作詞した楽曲で、彼女自身の歌う意味を形にしたような歌詞、エモーショナルな曲調が胸を熱くさせるライブの定番曲だ。いつもとは違ってtokuらの演奏をバックに歌ったこの日の「歌えばそこに君がいるから」は、メリハリの効いたバンドのアレンジも込みでドラマチックさが引き立っていたし、鈴木がtokuとのコラボを楽しむように笑顔を多めに浮かべていたのが印象的だった。

その後のMCで、tokuが「基本的に僕のライブは(MCパートが)ゆるいです」と語っていた通り、この日は配信もありということで鈴木が「うちの母親が楽しみにしてました」「おかん観てる~!」とカメラに向かってアピールすると、tokuも「僕の母も観てます(笑)」と明かすなど、ライブはリラックスした雰囲気で進行していく。その後、鈴木の音頭で会場の観客と乾杯を行うと、続いては「Humming Flight!」を披露。鈴木がアイルランド旅行の経験を活かして作曲したこの楽曲は、アイリッシュミュージック調の陽気なノリが特徴で、乾杯の直後には最適な選曲と言えるだろう。
梶原はマンドリンを演奏したほか、間奏でバンドメンバーが鈴木の呼びかけに応じてソロ回しを行うパートでは、tokuがハーモニカを披露するレアな一幕もあった。

鈴木は「Humming Flight!」で太陽にように明るい笑顔と歌声を振りまいたかと思えば、続く「Bursty Greedy Spider」ではパワフルかつアグレッシブな一面を見せつける。TVアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の後期OPテーマとして現在オンエア中のこの楽曲は、草野華余子が作詞・作曲を担当。鈴木は披露する前のMCで「リハーサルでやったときに、tokuさん節が加わって、新曲だけど新鮮な風が吹いた感動がありました」と語っていたが、まさにtokuによる鮮烈なシンセサウンドが加わった今回のアレンジは、鈴木の空気を震わすような絶唱にマッチしていたように思う。

その熱狂的なパフォーマンスに続いては、鈴木の2ndアルバム『18 -Colorful Gift-』収録のナンバー「フラジャイルな君」をしっとりと歌唱。鈴木いわく「会いたい人になかなか会えない状況が続いていますが、そんな今にピッタリの曲だと思って選ばせていただきました」とのことで、傷ついたり弱っている“きみ”に優しく寄り添う歌声、tokuのキーボードが紡ぐ柔らかな音色が心に浸透していく。演奏後、tokuが「いや~、かっこいいなあ」としみじみ感想を漏らしたのも納得の名演だった。

そしてtokuのアルバム『bouquet』に収録される鈴木が参加した楽曲「青い薔薇」が披露されることに。tokuは、いつも難易度の高いナンバーを歌いこなしている鈴木に楽曲を書き下ろすにあたって、あえて捻くれたメロディにアレンジしたとのことで(tokuは「ある意味、挑戦状」と表現していた)、鈴木も楽曲を受け取ったときに、tokuの音楽に対する情熱を改めて感じたと言う。ステージでは、青いライトに照らされて、ときに自身の体を抱き締めながら情熱的に歌う鈴木の姿が印象深く、例え“変わり果てた世界”でも未来を信じて前に進む意志、青いバラの花言葉になぞらえた「不可能を可能にする」という強固な想いを、大河のようなスケール感なれど激動的に展開していく楽曲とともに届けてくれた。

そんな鈴木のバトンを受け取って、次にステージに登場したのは、やなぎなぎ。黄金色に近い黄色のドレス衣装が、落ち着いた色味が多い会場に品良く映える。
彼女が最初に歌ったのはTVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』のOPテーマ「ユキトキ」。歌詞の“同じ目線は無く”の箇所で会場をぐるっと見まわしたり、“ゆっくりと手をつないでいくの”の部分ではフロアに向けて手を差し伸べるなど、歌詞に合わせた振り付きで観客を魅了する。北川勝利(ROUND TABLE)が作編曲したCD音源(ストリングスアレンジは長谷泰宏)の優雅な雰囲気を損なうことなく、ライブならではの躍動感が加わったアレンジも良好だ。

やなぎが「こんなにお洒落な場所ですが、楽曲は結構ポップめなので、皆さん楽しんでいただければと思います」との挨拶に続いては、「Sweet Track」を披露。やなぎのひと声で会場の空気を一変させてしまうような存在感ある歌声はもちろん、弾むようなグルーヴ感を持ったバンドの演奏も力強く、お互いが影響し合いながら、曲が進行するにつれてさらに熱を帯びていく。サビの“誰かが歩き続ければ やがてそこは道になってゆく”といったフレーズを含め、聴き手の背中をダイレクトに押してくれるような歌詞もより心に響く。

続くMCでtokuは、やなぎの作るエレクトロニカ曲が大好きで、尊敬の意味も込めて『bouquet』への参加をオファーしたと説明。やなぎは「めちゃくちゃ褒めてもらえて、表彰式みたい(笑)」と恐縮する。今回のライブは、そういったアルバムに参加してもらった経緯や意図が伝わる内容にしたかったとのことで、次に歌った『凪のあすから』の後期EDテーマ「三つ葉の結びめ」も、“花”や“植物”をモチーフにした『bouquet』にちなんで選んだという(ちなみに「ユキトキ」の歌詞にもアザレアが登場する)。A・Bメロの深海の底に沈んでいくような音世界、そこから一気に浮上するサビで左手を左右に振るやなぎ、それに応えて手を振る観客の姿もまた幻想的な光景だった。


そこからtokuの演奏に導かれて静かに始まったのが、今やGARNiDELiAのレパートリーとして人気の高い、とくP(toku)の代表曲「SPiCa」。やなぎは過去にもtoku主催のライブイベント“Tasty Time at Music Crossing Vol.1”などでこの楽曲をカバーしているが、この日はなんとレゲエ風のアレンジに。ディレイのかかったギターや心地良く響くベースライン、ゆったりとしたバックビートが、星空をモチーフにした楽曲の世界観に思いのほかハマっており、ラスサビでの星が巡り行くようなライト演出も相まって、非常にロマンチックな「SPiCa」を聴くことができた。

そしてライブパートの最後の楽曲となったのが、やなぎが歌と作詞で参加した『bouquet』に収録の楽曲「Coreopsis」。tokuもお気に入りの楽曲らしく、やなぎは「初めて聴いたときからしっくりくる曲でした」と感想を語る。やなぎをイメージして作ったエレクトロニカ調の楽曲ということで、CDに収録されている音源はtokuの打ち込みとやなぎの声のみで構成されているが、今回はバンドアレンジによる特別バージョンで披露されることに。tokuが弾くキーボードのミニマルなフレーズ、細かに刻まれたドラムのリズムが不思議なムードを醸成し、やなぎもつぶやくような歌唱で繊細に表現する。そこからサビで一気に転換して景色が色づく構成、どこか耽美さも感じさせるロマンチックな世界観が、tokuとやなぎのどちらにとっても新しい扉を開くコラボのように感じた。

ライブは以上で終了したが、その後、『bouquet』に参加したゲストボーカリスト(神田沙也加、石原夏織、中島 愛、atsuko、井口裕香竹達彩奈、三森すずこ、一青 窈)からの音声メッセージが紹介され、さらにtokuが鈴木とやなぎを再びステージに迎え入れてトークを実施。それぞれの視点を通したtokuのクリエイティブや人柄に触れることができ、色とりどりの花が束ねられた『bouquet』への期待が高まるプレミアムな公演だったように思う。

PHOTOGRAPHY BY アンザイミキ
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

toku×鈴木このみ×やなぎなぎSpecial Live「bouquet」
日時:2021 年6月6 日(日)
会場:Billboard Live YOKOHAMA

●Set List
<Live act・鈴木このみ>
1.歌えばそこに君がいるから
2.Humming Flight!
3.Bursty Greedy Spider
4.フラジャイルな君
5.青い薔薇

<Live act・やなぎなぎ>
6.ユキトキ
7.Sweet Track
8.三つ葉の結びめ
9.SPiCa [GARNiDELiA カバー]
10.Coreopsis

<Talk Session>

●リリース情報
toku ソロアルバム
『bouquet』
6月16日(水)発売


音楽配信一覧(もしくは、ダウンロード&サブスクリプション)はこちら

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:PCCA-06042
価格:¥4,400(税込)

【通常盤(CD Only)】
品番:PCCA-06043
価格:¥3,300(税込)

<収録曲>※曲順未定
「ずるいよ、桜」feat. 神田沙也加
作詞:神田沙也加/作曲・編曲:toku

「或るヒマワリ」feat. 石原夏織
作詞:渡辺翔/作曲・編曲:toku

「Acacia」feat. 中島愛
作詞:LINDEN/作曲・編曲:toku

「青い薔薇」feat. 鈴木このみ
作詞:LINDEN/作曲・編曲:toku

「Radiata」feat. atsuko from angela
作詞:atsuko/作曲・編曲:toku

「Lilium」feat. 井口裕香
作詞:渡辺翔/作曲・編曲:toku

「Antheia」feat. 竹達彩奈
作詞:LINDEN/作曲・編曲:toku

「Coreopsis」feat. やなぎなぎ
作詞:やなぎなぎ/作曲・編曲:toku

「君影草」feat. 三森すずこ
作詞:LINDEN/作曲・編曲:toku

「萌芽」feat. 一青窈
作詞:スガシカオ/作曲・編曲:toku


関連リンク
toku 特設サイト
https://www.garnidelia.com/special/toku/

toku 公式Twitter
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GARNiDELiAオフィシャルサイト
https://www.garnidelia.com/
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