年末年始やゴールデンウイークなどの3大ピーク期、東海道・山陽新幹線の『のぞみ』は全席指定席となり、自由席が廃止されます。東北・北海道や北陸、秋田、山形新幹線でも「全車指定席」の列車が増えていますが、一方で『こだま』や『やまびこ』『とき』などの多くの列車には依然として自由席が設定されており、そこでは座席を巡る激しい攻防が繰り広げられています。

日本民営鉄道協会が発表している「駅と電車内のマナーに関する調査」を過去3年分(2023年~2025年)遡ると、興味深い事実が見えてきます。実は、「座席の座り方」は3年連続で迷惑行為のワースト2位以内にランクインし続けており、特に混雑時の座席占領は、多くの乗客にとって「最も許しがたい行為」として定着してしまっているのです。

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今回は、行楽客で賑わうある週末、始発駅からバッグで隣席を占領し続け、周囲の困惑を無視し続けた女性と、その状況を見かねて“強硬手段”に出た男性のエピソードをご紹介します。

記事の後半では、最新データと過去の調査を徹底比較。車内のマナーが「改善」されるどころか、なぜ逆に「悪化した」と感じる人が増えているのか――数字が物語るシビアな現実とともに、現代の車内マナーのあり方を考えます。

満席でも1人で2席分占領し続ける女性

新幹線の自由席を「1人で2席分占領する」女性…ガタイのよい男性がとった“強硬手段”とは。3年分の調査で判明した「座席マナー」への根深い怒りも
※画像はイメージです。以下同
 とある週末のこと。名古屋にある実家に行くため、妻と子供の3人で東京駅から新幹線のぞみ号に乗車した会社員の田島亮介さん(仮名・41歳)。始発からの乗車だったので自由席でも座席を確保することができたが、品川駅でも多く乗客が乗り込み、新横浜駅を出発する頃にはほぼ満席に。だが、一家3人が座る3列シートを挟んだ2列シートには窓側に20代前半くらいの若い女性が1人で座り、その隣にはバッグを置いて2席分占領していたそうだ。

「私も出張で新幹線を利用する際には同じことをやってしまうので偉そうなことは言えませんが、混んできたら自分の足元や膝の上に置き直す程度の常識は持ち合わせています。彼女が本当に気づいていなかったのかはこの時点ではわかりませんでしたが、内心空気読めよ、とは思っていました」

 女性も始発の東京駅から乗っており、座ってからはずっとスマホを操作。誰かとメッセージのやりとりをしている様子だったとか。

 車内では新たに乗り込んできた乗客が女性のほうを一瞬チラ見するが、彼女は一貫してこれをスルー。
慌てて座席の上のバッグを片付ける気配もまったくなかった。

「空いてますか?」と声をかけられても無視

 すると、それまで誰も女性に声をかける者はいなかったが、20代後半くらいの男性が足を止め、「すみません、隣の席空いてますか?」と尋ねたという。ところが、女性はこれを無視したのだ

「予想の斜め上すぎる態度を取ったことに驚きましたが、不謹慎ながらこの後どういう展開になるのか楽しみにしている自分がいました。この状況から女性が気づいていなかったわけではなく、おそらく確信犯的にやっていたと思ったからです」

「こちらの席ってどなたか座っていましたか?」

新幹線の自由席を「1人で2席分占領する」女性…ガタイのよい男性がとった“強硬手段”とは。3年分の調査で判明した「座席マナー」への根深い怒りも
バッグをどかして座る男性
 男性はもう一度同じように言葉をかけるも女性は無視。普通なら諦めて立ち去ってもおかしくない状況だが、男性はここで突然振り向いて田島さんに話しかけたのだ。

「『こちらの席ってどなたか座っていましたか?』と聞かれたため、それはないということをしっかり伝えさせていただきました。座席の上にあったバッグは女性モノであることは彼も把握していたと思いますが、持ち主がお手洗いに行っている可能性を疑ったのでしょう。私にお礼の言葉を述べると、いきなり強硬手段に出たんです」

キレる女性にドスの利いた声で一喝

 男性は女性のバッグを持ち上げるとそれを彼女の膝の上に置き、空いた席に自分が座ったのだ。これにはそれまで無視を決め込んでいた女性も「何すんだよ!」と声を荒げたが、これにもまったく動じることなく「自由席なのに席占領してんじゃねーよ。クソが」とドスの利いた声でひと睨み。これにビビッてしまったのか、田島さん一家が下車する名古屋まで女性が文句を言ってくることはなかったそうだ。

「私に話しかけた時の口調とはまったく違っていたので、私も少し怖かったです(笑)、それに胸板も厚そうでしたし、ガタイがよかったのが服の上からでもわかりました。そういうのもあって圧倒されちゃったのかもしれないですね」

空いていたら座席に荷物を置いていいのか

新幹線の自由席を「1人で2席分占領する」女性…ガタイのよい男性がとった“強硬手段”とは。3年分の調査で判明した「座席マナー」への根深い怒りも
新幹線のマナー
 ちなみに隣に座っていた子供はゲームに夢中、奥さんはウトウトしていたようで、そんなトラブルが起きていたことはまったく知らなかったようだ。

「子供の前で大人が大声で怒鳴りあうような事態にならなくてよかったです。第一、自由席であれだけ混んでいるのに荷物用に席を占領するのはマナー違反。
男性は褒められたやり方ではなかったかもしれませんが、声をかけられても無視して最後は逆ギレする女性の非常識さも問題です。ただ、個人的には男性に心の中で『よくやった!』と拍手を送っていましたけどね(笑)」

 大前提として座席は、荷物置き場ではなく乗客が座るもの。混雑状況に関係なく普段から荷物は座席の上に置かないように心がけるべきかもしれない。

■ 3割以上の人が憤る「座席を詰めない」という不作為

今回、田島さんが遭遇した「バッグによる座席占領」。男性が強硬手段に出た背景には、単なる個人の怒りだけでなく、鉄道を利用する多くの人々が長年抱き続けている“最大の不満”がありました。

日本民営鉄道協会による過去3年間の調査を比較すると、「座席の座り方」は常に迷惑行為のトップクラスに君臨し続けています。

【迷惑行為総合ランキング:座席の座り方】

2023年度:1位(37.1%)
2024年度:2位(31.9%)
2025年度:2位(31.9%)

(出典:日本民営鉄道協会「2025年度・2024年度・2023年度 駅と電車内のマナーに関する調査」)

感染症への警戒感が強かった時期を除けば、座席マナーへの不満は常にワースト級の順位で高止まりしています。さらにその内訳を詳しく見ると、今回のトラブルの核心が浮き彫りになります。

【座席を詰めない・荷物を置くへの不満推移】

2023年度:43.3%
2024年度:35.1%
2025年度:31.9%

「荷物を置く」などの行為を最も迷惑だと感じる人は、直近の2025年度こそ31.9%となっていますが、2023年度には43.3%と半数近くに達していました。数字上はわずかに減少傾向にあるものの、依然として3割以上の乗客が「最も許せない行為」として挙げている事実は重いものです。

また、同調査の「マナーの改善傾向」という項目では、「以前に比べて悪化した・やや悪化した」と答える人の合計が、2023年度の33.1%から2024年度には47.4%へと急増しています。

多くの人が新幹線を利用し、誰もが目的地まで座りたいと願う中で、周囲を無視してスペースを独占する行為への視線は、かつてないほど厳しくなっていると言えるでしょう。


男性が放った「自由席なのに席占領してんじゃねーよ」という一喝は、決して褒められた口調ではありません。しかし、声をかけられても無視を決め込み、公共のスペースを私物化する行為が、どれほど周囲のストレスを増幅させているか。その現実を、最新の数字は冷徹に物語っています。

「自分一人くらい」「空いているから」という無意識の甘えが、隣の誰かの平穏を奪ってしまうこともある。混雑する新幹線の車内だからこそ、ほんの少しの想像力が、自分も周囲も気持ちよく過ごすための鍵になるのかもしれません。

<TEXT/トシタカマサ 再構成/日刊SPA!編集部>

―[乗り物で腹が立った話]―

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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