AIには人を疲弊させる一面も
AIがホワイトカラーの仕事を奪う――。そう言われるようになって久しいが、AIは仕事を効率化する一方で、人を疲弊させる一面をも有する。ITコンサルタントとして働く高野晃さん(仮名・46歳)が話す。「ChatGPTがリリースされた当初は単に文章を生成するだけのものだったのに、3年足らずで自律的にタスクを実行するAIエージェントが登場するなど、AIは異常な速度で進化し続けている。Geminiが覇権を握ったと思ったらClaudeが大きな話題を呼び、直近では『次のChatGPT』としてAIエージェントのOpenClawがバズりまくっていることからわかるように、今日使っていたAIが明日には陳腐化するような世界。
なので、日々アップデートされる情報をキャッチアップしないとすぐに置いていかれてしまうんです。新たなAIツールが登場すればすぐに研修を受けるようにしていますが、それだけで何日も潰れる。情報収集や資料作成にシステム設計、コーディングなど効率化できた仕事は多岐にわたりますが、効率化できたらその分、新たな仕事をこなすだけ。AIのおかげでこなせる仕事量は大幅に増えました。しかし、勉強すべきことも増えて仕事時間は変わらないので、疲労度は増す一方なんです……」
AI先進国のアメリカでは疲労度がアップ
AI先進国のアメリカでは、その疲労度はさらに増す。米IT企業でプロダクト・マネジャーとして働く福原たまねぎ氏は次のように話す。「アメリカのテック業界は、もはやAIで生産性を上げて当たり前という世界。だから、従業員一人ひとりの“AI利用率”をトラック(監視)する企業が増えています。明確な評価基準として組み込まれているため、利用率が低ければ低評価がつけられ、最悪の場合、人員整理の対象となる。エンジニアのコーディングが最もわかりやすいのですが、以前は週に5本のコードを書いていたエンジニアが、あっという間に10本以上のコードを書くようになってきた。
その驚異的な生産性向上は、過剰な期待感に切り替わっており、多くの人が重圧の中で身も心もすり減らしている状況。その一方で、満足感や達成感が減っている。AIがある程度のコードをアウトプットしてくれるので、『“自分で書いた感”がない』というエンジニアが増えた。重圧にさらされながら大量の仕事をこなしているのに、達成感はなく疲労感は増す……という具合」
AI浸透で米国では新卒採用をストップ
「AIはまず、ジュニアレベルが担ってきた雑務を自動化したため、新卒・未経験者に任せる仕事がなくなった。多くの企業はその分、ごっそり人を減らしたいと思っているのですが、大きな反発が起こると想像できるので、まず新卒採用をストップしたのです。今ではインターン採用を控える企業も増えているようです。そのため、『Z世代の失業率が最大30%に達する可能性がある』と指摘する人もいます。
一方で、シニア層が頭を悩ませているのは、子供の進学です。
AIによって社内で“コンテンツ爆発”が発生
当然のことながら、AI疲労はエンジニアの世界に限ったことではない。AIツールを活用した営業支援事業を展開するamptalk社長の猪瀬竜馬氏が話す。「AIが調べ物や資料作成、セールスフォースなどの営業支援ソフトへの入力などをある程度自動化してくれて営業効率が高まる一方で、ビジョンもなく時流だからとAI活用を掲げる企業の営業部隊のなかには疲労感が増しているところもあります。社長の実績や考え方を詰め込んだ“AI社長”やAI本部長”をつくる企業が増えているのですが、以前だったら営業先への提案書を作成したら上司にレビューしてもらって仕上げるというフローだったのに、最近では『まず、AI社長と3回ぐらい壁打ちして煮詰めろ』と言われるので、余分なフローが生じている。
一方で、営業部長クラスだと、かつては一日1、2件、部下の営業に同行して、ほかの部下からの報告書をチェックするのが大まかな仕事だったのに、今は10人のチームなら10人全員がその日の打ち合わせ内容をAIで全部書き起こし、基の録音データも一緒に提出するので、それをチェックしてフィードバックするだけで多くの時間を要するようになりました。AIによって社内で“コンテンツ爆発”が起こって、管理する側の人間がそれを処理しきれなくなっている」
いつか、そんなAI疲れから解放されるのだろうか? 福原氏は「優しさがキーワードかもしれない」と話す。
「先日、マイクロソフトのエンジニアと会ったら『あえてAIに関係ない仕事に振り切るのも手だね』と話していました。AIが進化し続けても、必ず残る仕事や領域はあって、そのスキルを身につけるのもいいと。その例として挙げていたのが、“優しさ”なんです。とにかく部下を気遣いまくって、異常に優しくなった人がいるようで、『AI社会での戦略的な生き残り策は人に優しくなることかもしれない』と話していた(笑)」
AIに疲れたときこそ、人に優しくあれ!
AI疲れを訴える人たち
AIでレポートを書いてくる学生が増えたせいで、教授陣もAIに「この論文はAIで書いたものか調べて」と調査を依頼する意味不明の状態に……(某大学准教授・40代女性)
「ChatGPTは〇〇万円の損害賠償金がもらえるって言ってるから、先生、お願い」って、おれたちはAIの下請け業者か!?(弁護士・40代男性)
部下がAI任せで提案書をつくるので仕事の効率は上がったけど、コンサルの陳腐化が加速している(経営コンサルタント・40代男性)
「AIがその薬の定期的服用はよくないと言うのでやめた」と、医師よりもAIの助言を信じる患者が増えている……(精神科医・40代男性)
AIは働かせ放題の部下みたいなもの。遊ばせておくとむしろ不安になるので、就寝前にも大きなタスクを投げておくが、出力されるたびに起きて新たなタスクを……というAI依存症になっている(エンジニア・40代男性)
【米IT企業シニアPM 福原たまねぎ氏】
大学卒業後、ベンチャーを経て’16年に外資系ITへ。
大学卒業後、旭化成、米医療機器メーカーでの営業を経験して、’20年に起業。今夏に営業のAI活用について詳述した著書を出版予定
取材・文/週刊SPA!編集部
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