アイドルマスター ミリオンライブ!」のライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-3 R@ISE THE DREAM!!!」が2023年11月4日、福岡県・西日本総合展示場 新館にて開催された。

本公演には春日未来役の山崎はるか最上静香役の田所あずさ、伊吹翼役のMachico、北上麗花役の平山笑美、桜守歌織役の香里有佐、佐竹美奈子役の大関英里、ジュリア役の愛美、白石紬役の南早紀、周防桃子役の渡部恵子、高山紗代子役の駒形友梨、天空橋朋花役の小岩井ことり、中谷育役の原嶋あかり、二階堂千鶴役の野村香菜子、野々原茜役の小笠原早紀、馬場このみ役の髙橋ミナミ、福田のり子役の浜崎奈々、真壁瑞希役の阿部里果、宮尾美也役の桐谷蝶々、百瀬莉緒役の山口立花子、矢吹可奈役の木戸衣吹横山奈緒役の渡部優衣、ロコ役の中村温姫が出演した。


TEXT BY 中里キリ

今回のライブは「ミリオンライブ!」の10thLIVE TOURとして行なわれたもので、開演前にはプロデューサー役の中村源太が生身で前説のために登場。熱の入った前説と開演宣言で会場を盛り上げた。

「アイドルマスター ミリオンライブ!」では、現在毎週日曜朝にTVアニメ「アイドルマスター ミリオンライブ!」を放送中。全国の劇場ではそれに先立って先行上映が行なわれている。黄金の蝶が舞うオープニングムービーでは、出演アイドル(とキャスト)紹介の画像がTVアニメ準拠になっており、本公演がアニメをモチーフにした公演であることを伝えている。

なお、本稿は一部ではあるが、ライブの演出と結びつく先行上映の内容にも言及するので、確認の上読み進めて頂きたい。


出演アイドルの紹介が終わり、黄金の蝶がきざはしの頂きの扉を開くと、ステージにはポーズを取ったアイドルたちが登場。TVアニメオープニング主題歌「Rat A Tat!!!」でライブは幕を開けた。衣装は揃いの「スターティング・ブルーム」。上下の段にズラリと並んだアイドルたちが一緒に歌い踊る姿は、TVアニメの未来と静香のオーディションでみんなが幻視した光景のようだ。アイドルたちが弾けそうなテンションで「Rat A Tat!!! 叩こう 夢のとびらを 今」のフレーズを歌うと、山崎が「一緒にー!」と観衆を呼び込んで気持ちをひとつにしていった。

開幕のMCでは山崎から、今回の公演は「アニメをコンセプトにしたライブで、第3幕まで含めて全部お届けしていきます」だと明かされていた。


TVアニメ「アイドルマスター ミリオンライブ!」をモチーフにした演出として、開幕から強いインパクトがあったのが山崎はるかと田所あずさの2人による「ToP!!!!!!!!!!!!!」だった。「ToP!!!!!!!!!!!!!」はTVアニメの第1話に登場した765プロの楽曲であり、春日未来がアイドルに憧れたきっかけでもある。スクリーンには未来と静香がアイドルへの憧れと夢を語りあった公園のブランコが映し出されていて、「I CAN DO IT NOW」のフレーズを(アニメの未来と同じように)「WE CAN DO IT NOW」!と少し舌ったらずに歌い替えているのが芸が細かい。2人の歌唱表現は“アイドルを夢見ていた頃”のフレッシュさが前面に出されていて、これから夢に駆け出そうとする2人を表現するミュージカルを見ているようだ。山崎が「行こうよ静香ちゃん! アイドルになる夢、一緒に叶えよう!」と手を差し出すと、輝かしい笑顔で「うん!」と答えた田所を輝くステージへと引っ張り上げた。

「We Have A Dream」は、TVアニメ第5話の原っぱライブで歌唱された楽曲。
元は「THE IDOLM@STER LIVE in SLOT!」テーマソングとして生まれた楽曲で、チームとしてのアイドルたちの自己紹介的楽曲だ。歌詞に“私たちのこと見てて欲しい 人数多いけど それぞれがとても個性的で退屈しないよ”というフレーズがあるのだが、そのままアニメのミリオンスターズの紹介としてもぴったりくるのが面白い。煽り台詞でステージをリードしたのは原っぱライブでも大活躍だった茜ちゃんこと小笠原早紀で、満面の笑顔が眩しい。原っぱライブとは歌唱メンバーが変わっており、アニメでは客席から見つめていた歌織と紬(香里有佐と南早紀)が一緒に参加しているのがポイントだ。

TVアニメの中盤以降はTeam1st~Team8thが順番にデビューしていく姿が描かれるが、今回のライブでもユニット曲が披露された。先頭を切ったのはもちろんTeam1stの「Star Impression」で、オリジナルメンバーの大関英里と小岩井ことりが歌唱を担当。
スタイリッシュで疾走感のある歌唱は切り込み隊長にふさわしい。歌唱中のフォーメーションやキメポーズを見ていると、チーム全員が揃った完全版を早く見てみたくなった。

いよいよセットリストが読めなくなったのが、小笠原早紀、原嶋あかり、木戸衣吹、髙橋ミナミ、桐谷蝶々、浜崎奈々、平山笑美、愛美による「CHANGE!!!!」だ。今回のライブはアニメがモチーフとされていたが、2011年のTVアニメ「アイドルマスター」も広義のアニメとして本ライブのモチーフに含まれるという宣言の楽曲。イントロが流れると驚愕の声が上がっていたが、すぐにコールに対応してくるのが流石百戦錬磨のプロデューサーたちだ。世界がたしかにつながっていて、ミリオンスターズと765ASの52人が揃って「ミリオンライブ!」だと再確認させてくれるステージだった。


Team2ndは阿部里果、浜崎奈々、山口立花子が「海風とカスタネット」を披露。スクリーンにはシャボン玉が舞う南国の光景が流れ、アップテンポな楽曲の中で感情を弾けさせる瑞希(阿部)の姿が新鮮だ。カスタネットを弾く振付も軽快に、南の海のアイドルたちの姿を鮮やかにステージに描いていった。

Team4thは中村温姫、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子が「catch my feeling」を歌唱した。スクリーンにはどこかレトロ感のある都市の夜景が投影され、ステージを90年代のテイストに変えていく。大人のムードの楽曲でありながら、歌詞に描かれる世界が第8話のアイドルたちに通じるものがあるのが印象的だった。


Machico、大関英里、小岩井ことり、木戸衣吹、愛美は「迷走Mind」をカバー。765プロで菊地真が持ち歌にしている楽曲で、TVアニメ後半の函館ライブで縁のあったアイドルたちの楽曲をカバーする趣向だろうか。ミリオンスターズのステージに真のコーラスが響くのがとても不思議だ。木戸の抑制のきいたエモーショナルな歌い出しや小岩井のクールな低音が新鮮。歌唱メンバーはキメキメなメンバーを選抜したとのことで、アウトロのダンサブルな振付には一際気合が入っている様子だった。

田所あずさ、浜崎奈々、阿部里果、山口立花子、平山笑美は、如月千早の「arcadia」をカバー。蒼系楽曲を歌うにはあまりにも強すぎるメンバーであり、開幕の歌い継ぎのトリで平山が雰囲気たっぷりに登場するとそこまでやるか! となったほど。アニメで千早とつながりの生まれた静香(田所)をセンターに置きつつ、五者五様の表現で最強の楽曲に挑戦していく姿が印象的だった。

「チョー↑元気Show☆アイドルch@ng!」は小笠原早紀、中村温姫、駒形友梨、原嶋あかり、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、桐谷蝶々、渡部恵子が披露。TVアニメのシアターこけら落としライブで松田亜利沙が披露したソロ曲を、Team4thとTeam5thのメンバーが全員でつないでみせた。それぞれのスタイルで上限まで弾けたテンション感を表現していて、桐谷のふんわりした弾け方が微笑ましい。9人の全力のパフォーマンスと掛け合いを見ていると、普段これを一人でやっている村川梨衣の非凡さが改めて際立って感じられた。

後半戦は香里有佐の「ハミングバード」からスタート。劇場の新しい光景を象徴する楽曲だ。イントロの両手を大きく広げるような振付とともに、背後のスクリーンには純白の蝶の羽根が広がる。確かめるような歌声はのびやかで余分な力が抜けているのに、しっかりと伝わってくるものがある。ラストに向かう流れの中ではっきりとギアを上げると、鮮やかな笑顔と共に高らかに歌いきった。

Team5thより小笠原早紀、駒形友梨、原嶋あかり、桐谷蝶々は「バトンタッチ」を披露。星空のような背景がサビで蝶の電飾で華やかに輝く演出はアニメのこけら落としライブを再現したものだ。間奏で階段下に降りると、バトンリレーのような振付で想いを受け渡していく。落ちサビではセンターの駒形が圧巻の歌い上げを響かせると、桐谷、原嶋へとリレー。背中を向けた振付から振り返ってのキメで締めくくった。

渡部優衣、阿部里果、山口立花子は「Sentimental Venus」を披露。アニメの劇場こけら落とし公演で同曲を披露した渡部優衣と、CDオリジナルメンバーの阿部&山口という合わせ技の組み合わせ。阿部は10年越しのライブ初披露で、落ちサビでは想いのこもった安定感抜群の歌声を響かせた。アニメでもエピソードとして取り入れられたアクシデントの記憶の色が濃い楽曲だが、今回は万全のパフォーマンスで迎えていた。

ちょっと面白い組み合わせだったのが山崎はるか、田所あずさ、Machicoによる「SMOKY THRILL」。こちらもアニメ「アイドルマスター」でもおなじみの楽曲だが、函館ライブ出演の水瀬伊織の色を重視した選曲だろうか。素晴らしかったのが、原曲のセクシーな一面に関してはあくまでも中学生らしい表現に徹していたこと。中学生の3人が背伸びして憧れの先輩の楽曲を歌うような、演じながら歌うパフォーマンスだった。

駒形友梨、渡部優衣、桐谷蝶々、阿部里果、南早紀は「ALRIGHT*」をカバー。函館ライブ出演者の萩原雪歩の楽曲で、今回の歌唱アイドルは雪歩と同じ17歳で統一されている。スポットライトに照らし出されて登場した南は、全身のパワーと勇気を振り絞るように「イェーイ!」の声を響かせた。これはTVアニメ「アイドルマスター」第3話「すべては一歩の勇気から」での雪歩の名場面を再現したもの。紬がバックダンサーとして不安だった時に、励まして支えてくれた雪歩の曲を彼女がセンターで歌う粋な趣向だ。会場のサイリウムが雪歩の白に染まるのがいい。5人の優しくあたたかな歌唱が印象的で、「大丈夫」からの南の喉を開いた高らかな歌唱が新しい引き出しであるように感じられた。

山崎はるか、大関英里、中村温姫、駒形友梨、小岩井ことり、野村香菜子、山口立花子、渡部恵子は「READY!!」を披露。アニメではバックダンサーとして参加していた楽曲を、ミリオンスターズがフロントメンバーとして歌うのが感慨深い。ブロック間MCから残っていた中村プロデューサーが「未来、あとは頼んだぞ!」と託すと、あまりにもなじみ深い楽曲へ。色とりどりの矢印の映像演出が懐かしく、会場を圧するようなコールの揃いぶりはひとつの時代を築いた楽曲のすごみを感じるものだった。

Machico、平山笑美、愛美は「マリオネットの心」をカバー。圧倒的な歌唱力を揃えたメンバーは原曲歌唱の星井美希という才気に対するリスペクトを感じると同時に、ユニット曲「Marionetteは眠らない」を美希と一緒に歌ったメンバーでもあるのが心にくい。転調部の愛美のハスキーな歌唱から、平山、Machicoとギアを上げながらつないでいき、ひとつになる圧巻の歌声。落ちサビのMachicoの独唱からは、翼から美希への強い憧れと想いが伝わってきた。

南早紀は「瑠璃色金魚と花菖蒲」を披露。劇場の新時代を象徴するもうひとつの楽曲をクライマックスに持ってきた。水で形作った無数の金魚が飛び交う中、圧巻の歌唱を見せる南。「見つけて」の独白での目力があまりにも強い。「プロデューサーの声、もっと聴かせてください!」と毅然と叫ぶと、光の明滅の中の鮮烈なダンスソロで魅せる。美しさの中にパワフルさと気迫を秘めた力強い瑠璃色。ステージからは奔流のようなエネルギーが立ち昇って見えた。

田所あずさ、大関英里、小岩井ことり、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子、香里有佐は「my song」を披露。15年前、あの頃の765プロを代表する楽曲のひとつだ。髙橋と小岩井は階段に腰かけて、優しく語り掛けるような歌唱が胸に染み入ってくるようだった。

Team7thより木戸衣吹、平山笑美、愛美は「トワラー」を披露。愛美が生でギターを奏でながら、力強く想いのこもった歌声を届けた。3人の柔らかな笑顔が印象的だ。木戸と平山がゆったりと手を振ると、会場の光も一緒に大きく手を振る。ラストは同じ階段に腰かけた3人が、視線を合わせて身を揺らしながら、幸せな空気感の中ステージを締めくくった。

本編ラストを締めくくるのは、もちろんTeam8thより山崎はるか、田所あずさ、Machico、南早紀、香里有佐による「REFRAIN REL@TION」だ。抑制のきいた歌唱から、5人の想いと未来への希望が伝わってくると、「100万回」のフレーズでステージに眩い光があふれる。山崎が「ありがとう、私たちのはじめてを見に来てくれて!」から始まる長口上を響かせると、ステージにミリオンスターズの仲間たちが次々に登場。それは未来たちのオーディションでみんながみた幻視を再現するような光輝く光景だった。

アンコール前には、スクリーンに登場したプロデューサーより今後の業務連絡が行なわれた。徳川まつりソロの「シャル・ウィー・ダンス?」ロングMVに歓声が上がったほか、湖池屋と「ミリオンライブ!」のコラボ商品「ポチットップス サワークリームミリオン味」、クランドと「ミリオンライブ!」のコラボ酒ガチャ!などが紹介された。

また、「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 9thLIVE ChoruSp@rkle!!」LIVE Blu-rayが2024年2月14日に発売されることが発表された。

告知終わりのプロデューサーが「みんな、楽しんで行って来い!」と送り出して、アンコールナンバーは全員揃っての「Thank You!」。フリームーブなしで、しっかりとフルで振付を見せていく。間奏ではサイドステージまで使って一列に広がると、渡部優衣が観客を煽る声が突き抜けるように響いていた。

アンコールMCでは、時に笑いを交えながら感謝と明日への期待が語られていた。ライブを締めくくるラストナンバーは「M@STERPIECE」。こちらはわちゃわちゃとしたフリームーブを交えた時間となった。ミリオンスターズの後輩たちが10年目に歌う「M@STERPIECE」に、劇場版上映当時はまだアイドルではなかった南と香里が加わっているのは、特別な光景だった。特効の金テープが舞う中、大団円と呼ぶにふさわしい空気の中、DAY1は幕となった。

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-3 R@ISE THE DREAM!!! DAY1
2023.11.4 福岡県・西日本総合展示場 新館
<セットリスト>
M01:Rat A Tat!!!(ミリオンスターズ)
M02:ToP!!!!!!!!!!!!!(山崎はるか、田所あずさ)
M03:We Have A Dream(Long Intro Ver.)(小笠原早紀、中村温姫、原嶋あかり、木戸衣吹、浜崎奈々、南早紀、香里有佐)
M04:Star Impression(Long Intro Ver.)(大関英里、小岩井ことり)
M05:CHANGE!!!!(小笠原早紀、原嶋あかり、木戸衣吹、髙橋ミナミ、桐谷蝶々、浜崎奈々、平山笑美、愛美)
M06:海風とカスタネット(Long Intro Ver.)(浜崎奈々、阿部里果、山口立花子)
M07:catch my feeling(Long Intro Ver.)(中村温姫、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子)
M08:迷走Mind(Machico、大関英里、小岩井ことり、木戸衣吹、愛美)
M09:arcadia(田所あずさ、浜崎奈々、阿部里果、山口立花子、平山笑美)
M10:チョー↑元気Show☆アイドルch@ng!(小笠原早紀、中村温姫、駒形友梨、原嶋あかり、渡部優衣、野村香菜子、髙橋ミナミ、桐谷蝶々、渡部恵子)
M11:ハミングバード(香里有佐)
M12:バトンタッチ(小笠原早紀、駒形友梨、原嶋あかり、桐谷蝶々)
M13:Sentimental Venus(渡部優衣、阿部里果、山口立花子)
M14:SMOKY THRILL(山崎はるか、田所あずさ、Machico)
M15:ALRIGHT*(駒形友梨、渡部優衣、桐谷蝶々、阿部里果、南早紀)
M16:READY!!(山崎はるか、大関英里、中村温姫、駒形友梨、小岩井ことり、野村香菜子、山口立花子、渡部恵子)
M17:マリオネットの心(Machico、平山笑美、愛美)
M18:瑠璃色金魚と花菖蒲(南早紀)
M19:my song(田所あずさ、大関英里、小岩井ことり、野村香菜子、髙橋ミナミ、渡部恵子、香里有佐)
M20:トワラー(木戸衣吹、平山笑美、愛美)
M21:REFRAIN REL@TION(山崎はるか、田所あずさ、Machico、南早紀、香里有佐&ミリオンスターズ)
-ENCORE-
M22:Thank You!(Long Intro Ver.)(ミリオンスターズ)
M23:M@STERPIECE(ミリオンスターズ)

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関連リンク
「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR」公式サイト
https://idolmaster-official.jp/live_event/million10th/

「アイドルマスター」シリーズ 公式サイト
https://idolmaster-official.jp/