スクール水着、ブルマー、黒タイツ、さらには股下デルタに絶対領域、パイスラッシュ......。フェチの細分化が進んで、新たな萌えが次々生まれているが、今、SNSで密かに話題になっている新種のフェチがある。

それは、水着とニーハイソックスの組み合わせ。

 きっかけは、映像作家である古賀学があるミュージックビデオを撮る際、水中撮影のスキルトレーニングのためにモデルに白い競泳水着と白いニーハイソックスを穿かせて撮影した写真からだった。仕事とは関係なく趣味で撮影したものらしいが、これはかわいいということになり、撮った写真をTwitterでアップ。ネットでは「誰得!?」という声もあったが「なぜかわからないけどかわいい」と瞬く間に話題になった。そこから発売された『水中ニーソ』(ポット出版)という写真集も好評で、今度は水着とニーソにさらに1アイテム加えた『水中ニーソプラス』まで発売された。

 フェチ系写真集は数多く出版されているが、水中ニーソなんていうニッチなものがここまで人気を得た理由は何なのだろう?

 まず、水着とニーソにはある共通点がある。それは、どちらも身体を締め付け、その形をよりくっきりと浮かび上がらせること。さらに、水に濡れたことによってよりピッタリと体に張り付き、水圧によってさらに締め付けられ、身体のラインはこれでもかというほど強調される。

 つまり、胸の丸みが強調されるところやお尻に食い込むところがたまらないという水着フェチや、締め付けられた脚とチラリと見える太ももがいいというニーソフェチにとって、一挙両得というか、楽しみ倍増というわけだ。

 しかも、水中ニーソは濡れフェチの対象にもなる。濡れフェチとは制服やスーツなど、洋服が濡れて肌に張り付いているさまが好きという人のこと。『びしょびじょ』(サトウテツオ/マイウェイ出版)などの写真集も発売されて、大人気を博しているが、そういう趣味の人たちから見ると、水着では濡れていても非日常感や背徳感を得ることはできない。
しかし、ニーソという本来なら濡れるはずのないファッションアイテムを1つ加えることによって、感性がくすぐられというわけだ。

 また、水中ならではのポーズの多彩さもこの写真集の魅力だろう。雅に水中を漂う姿や宙返りしているもの、プールの底にある酸素ボンベを両手で掴み、身体が浮かんでいくのに逆らっている様子などは、浮力のある水中だからできるもの。ブレイクダンスの技の1つで、片手で逆立ちするマックスのようなポーズも、水中なら軽々とできてしまう。まるで人魚にでもなったかのようなこの自由な動きや身体のしなやかさ、優雅さは、女性をより美しく見せてくれる。

 収録されている写真では、モデルの女の子たちが酸素ボンベをつけているものもあるが、基本的には何もつけない。となると、水中で息を止めていられるのは、限られた時間だけ。そのなかで切り取られた一瞬の表情には、儚さや美しさがある。写真集には口をすぼめたり、真一文字に結んだりして、息を止めているとわかるものもあるが、口を開けて自然に微笑んだり、あるいは、照れてはにかんだり、とろんとした瞳で色っぽく見つめてくる女の子たちの表情も収録されている。そこが水中であることなんて感じさせないほど自然な表情の彼女たちは、どこか異質な存在で、見る者を惹きつける。

 異質といえば、第2弾となる今回、ただのニーソだけでなく、水中専用のメカニーソまで登場。これは、現在放送中のアニメ『ガンダムビルドファイターズトライ』(テレビ東京系)でメカデザインを担当しているNAOKIがデザインしたものなのだが、実は、収録された写真はミニチュアを作ってモデルの女の子と合成したものなのだそう。
その写真の女の子の姿は、真っ白い競泳用水着と相まって、プラグスーツやパワードスーツのようにも見えるため、かわいさの中に強さやカッコよさまで感じさせる。2次元好きのなかには、このメカと女の子の組み合わせも大好物という人が大勢いるのだ。

 さらに、反射する光、揺らぐ水、浮かんでいる気泡など、水中で撮影された写真には、それだけで幻想的な雰囲気が漂っている。そんな水中で、モデルたちはレインコートを着てビニール傘をさしたり、浮き輪を使ったり、ビキニ姿でマフラーを巻いているのだ。どれもその存在意義を揺るがすような組み合わせだが、その矛盾も含めて、余計に3次元とは別のものに昇華されているような感じがする。

 この幻想的な雰囲気やアニメっぽさは、2次元と3次元の狭間にあたる2.5次元的なものといえるのではないか。最近は、声優や中の人、ボカロ、コスプレだけでなく、マンガなどを原作にした2.5次元ミュージカルなど、2.5次元と呼ばれるジャンルが人気を博しているが、その新たなジャンルとして加えてもおかしくない。水中ニーソは、ニッチなジャンルに見えて、うまく時代のニーズに合致したため、ここまで多くの人に受け入れられたのだろう。次はどんなジャンルが登場するのか楽しみだ。
(島原らん)

編集部おすすめ